母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

佐藤春夫の詩 『海の若者』 

2022年08月20日 | Weblog

    海の若者    佐藤春夫

若者は海で生まれた。

風を孕んだ帆の乳房で育つた。

すばらしく巨きくなつた。

或る日 海へ出て

彼は もう 帰らない。

もしかするとあのどつしりした足どりで

海へ大股に歩み込んだのだ。

とり残された者どもは

泣いて小さな墓をたてた。



コメント (4)
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