母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

春のおぼろの

2013年04月27日 | 季節
灯りを消すと
薄明かりさす窓外には煌々の月あかり
見やる夜更けの西の空には
まことまん丸のお月さま
今は週末の麗しい夜なのだった

満月の照らす街は眼下に広がり
静かな眠りに落ちてはいるが
何やらさざめく声が聞こえる
見えない夜の生き物の
吐息がひそかにしている
月明かりにそれは姿も見せないが
あなたは一体どなたですか―
蒼く静まる木々や梢に隠れて
たしかになにかの気配がするのです

もしや愛しい人が月明かりに誘われ
たしかに たしかに そっと訪れ 
優しい瞳で見つめているような
いのちの饗宴の青葉茂る季節の前触れ
または過ぎてきた歳月の
ほんの一幕の物語

春のおぼろの夜の空に
幕を密かに開けるのは
ただ独りの客のためにだけ ですか
いえきっと月を観る人みんなの月明かりの窓辺では
同じ気配同じ吐息がするのでしょう
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千年一日

2013年04月11日 | 歴史
四月の終うさくらの山
谷戸城跡にはなびら降る
はなびら降る茶臼の丘に
静かな春が過ぎてゆく
海遥か山麓の村
平安の夢もはるかに
訪なう者も村人のほか絶えてなければ
平成のさくらの祭りの
ぼんぼりの列のみ揺れて

眺めやる 四方の山々
富士川に集める河は ほの白み南へと流れ 霊峰はかなたに座し
勾配の里 陽炎揺れてのどかにはらはら はなびら散るのみ
歳月は いかなるものぞ
いまははや いにしへ遠く
山里に新しき みやこ人来て異なる家たてしという

変わらぬは広がる大空 高き山々 茶臼の丘 
渡り来る松風の音 春草のこみち
古き館にいま黒駒駆る若武者なく
総ては土に埋もれ伝説も語らるること稀なれど
連山はもの言わずさくら散る丘を眺める
千年も一日の如き
碧き山の稜線をうねらせて

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