母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

冬陽爪切り

2025年01月30日 | 

陽は差し込み
風もないまひるです

爪切る音がきこえるだけの
温かく幸せな時間

猫の寝息がそっと聞こえ
爪切りも終わります

猫はふっくらいい匂い
太陽はさんさん暖かく

こんな日は太陽の微笑みに
時は短く流れて行く
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ねこの日石ねこ

2023年02月23日 | 
ねこの日石ねこ
石ねこのねこの日

顔寄せひそひそ語りあう
座蒲団に載った石ねこ

陽の当たる縁側で石ねことすごせば
浅い春の陽が傾く

猫はいつも何処からきて何故遠くに行くの
猫は単独を好み騒音を嫌い
老いた人の優しさと静けさを好み
幼子らをやさしさで慈しみ
暖かい体で寂しい人間をなぐさめる

ねこの日を石ねこと過ごすと
旅に出た
猫たちの寝息すうすう聞こえる如月二月

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の陽に猫は人とまどろむ

2023年01月28日 | 
冬の陽にまどろむねこ
ねこも怒り
ねこも喜び
ねこも驚き
ねこも悲しみ
ねこも怖がり
哺乳類のからだを持つ

じっと眼をみつめ
はなし声を判定し
次にそなえて賢く生きる
綺麗な肢体のなかま

生・老・病・死の運命に乗り
やがてはひともねこも
全てを受容れいつかは去りゆく
脚が二本でも四本でも
息づかいを楽しみ生きてきた愛しい時間を
想う冬の陽だまり

ことばが通じたなら一つだけ
聞いてみたいねこも
未来や理想を想ったりするだろか
ねこよ

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の猫唄

2022年02月19日 | 
☆ 今はもう使うことなき診察券
        猫の体温なつかしむ冬

☆ 遥かはるか高みで舞います黒猫よ
       思い出してね雪のふる日は

☆ 歳月はかくのごとくにながれても
        窓枠に爪痕白く残りて

☆ 南天の赤き実に来る野の鳥の
       何か慕わしうぶ毛のあたり

☆ 黒い帽子座ぶとんに置き回り来ては
       黒猫のひる寝かとおりに戸惑う

☆ ぴかぴかと光る金色黒猫の目は
         エドガ・アラン・ポーのものの語り部

☆ ドアを開け漆黒の闇に消えるわが猫は
        今宵の集会に呼び出されてく

☆ ねこはまたねこ同志の義理あると
        母は真面目な顔で説いたり

☆ 黒い色は深い緑に輝いて
        獣毛妬まし人肌のかろさ

☆ いのち輝き姿は天使か猫族の
        歩きしなやかリズム楽しや


コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

深まる秋へ

2021年10月21日 | 

季節は廻りあさがおの
葉っぱがちぎれる秋の暮れ
風は
足音を連れてきます

ねこの足音はただ静かで
そばだてた耳にだけ聞こえてくる
ぱたぱた ぽん

ねこがしなりと通り過ぎるところ
小さな風が立ち騒ぎ
ぱたぱた ぽん
撫でるように空気が動く
聴きたい耳に聞こえてくる
ちいさな
ねこの足音

やってくる秋小さな秋
小さな音小さな思い出が
心の小道にきこえます
振り返る
ねこの瞳が光ります
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

九月-秋の黒猫

2021年09月14日 | 
真っ赤な鶏頭 青い空
どこから漂うか金木犀の甘い香
虫たちが吾が世と合唱する九月半ばは
ぴかぴか光る黒い猫の季節です
ひだまる庭石の
上に寝そべるとアキアカネがそばに来る
蝶やトンボを追いかけた
電光石火の子猫の時代は過ぎ去って
ライオンキングのレオのように
立派な男の子になりました

九月の涼風が高原の家にまた秋を運び
ぬくぬく猫はほんに秋冬もの
暖かさ身に染む体温
ふっくら重い丸い体
金色の大きなまるい瞳は
神さまからの贈り物
黒猫は
秋へ向かう季節の
人間たちの宝もの

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

十五夜の猫

2020年09月30日 | 
十五夜の月は涼し
十五夜の月は愛し
秋の風ほほをなで
青く深い夜の空に
金いろの月

ごきげんよう
十五夜の月
ごきげんよう
去りし猫たち可愛い
とんがり耳よ 

巡り来る十五夜
まんまるい今宵の月
想い出は
しなやかな姿
青い月の夜の猫のしのび足

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒猫びより

2019年11月30日 | 
秋の温もり黒猫びより

胸がときめく猫びより

いきなり走り回るのはなんのため

飽きずに探検するはなんのため

小さな王様は自らパトロール

何を見ても眼が広がり

何を言っても寄ってきて

ヒトの足に纏いつき爪立てる

歯がかゆいと歯を立てる

黒い嵐が襲い来て秋はとっても忙しい

痛くても王様には逆らえない

王様のトイレは家のなか

王様の食卓は居間の中央

王様は偉そうにひげをひくひくお食事する

足りないと召使いのごはんまでも欲しいという

木枯らしの夜は布団に乗り

ちいさな牢名主のように威張っている

北風がそのうち菊もサザンカも散らして冬になり

黒猫はまんまるに肥え脚も伸び

春に外にでかけてゆくのでしょう

暖かい午後の日差しに黒猫は 

天使の顔でねむります

晩秋 陽の耀き黒猫日和







コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

去りし猫へのバラード

2019年10月26日 | 
きみと過ごした四年間は
つかの間の幸せの日々

きみは人の子よりよくなついて
ほとんど悪さもしない子だった

去る年の文化の日やって来たきみ
よちよち歩きの幼猫だったきみ
全身真っ黒で金色の
ひとみがやけに大きかったきみ

行く末短くなった老人たちの
茶の間に舞い降りた聖ミカエルのように
笑い声を呼び戻してくれた翼の無いエンジェル

成人したきみはとても静かで
優雅にさえ見えるその立ち居振る舞いに
人間たちは時に息を呑むほどだった

四つ目の秋 四度目の誕生日の直前に
きみは帰ってこなくなった
老人たちの目を涙であふれさせ
巷に 黒猫の姿を尋ねさせること数十日
きみは冷たい骸となって木犀香るいつもの庭に帰ってきた
高原の秋風は無情に冷たく
七キログラムの体は再びは
遊び回った花の庭を風のように走ることはなくなった

悲しみは語り尽くせず思い出は数えきれず
ひとつのいのちは天に昇り
体温の記憶は秋を深くさせるばかり

約束した温泉にゆくこともなく
じじばばを残し前ぶれもなく
旅立っていったきみは
不思議な存在の黒い姿を
そこ此処に焼き付け梅畑の古木の下に眠る

愛されすぎた痛みか
描かれすぎた疲れか
神秘の黒猫は土に還り
残された老人たちはことしも長らえ
やってくる季節を また生きる



(「去りし猫へのバラード」清水みどり『詩と思想』土曜美術社1998年秋)






コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月の夜 猫の宴

2017年12月04日 | 
その夜は大きな満月だった
眠るには惜しい夜なのだった
カーテンを透かして差し込む月の光に
何かの気配を感じ
風の無い晩秋の夜更けバルコニーと呼ぶ外に出ると
落ちてきそうな大きな満月が
霞むオリオンを従え大空にあった
月は黄金色に輝いて
私をとらえるような目をしていた
雲も無く 群青に広がる夜の空
ここには何か不思議ないのちがいるようだった
見つめる月の丸さは
猫の目のように少し動いた
ウサギが住む カニが住む と
世界の国で人間は月の表を読み想像するが
ここに居るのははやり
別れていった猫たちなのだと思った

“おかあさん、ここよここだよ”
猫たちは私をおかあさんと呼び
今もどこかに生きているのは知っていたが
私の行けない処なのだと諦めていた
けれど彼らはもしやあの遠い月の地下で
いのちの再生のための宴を開いている
とその夜は信じても良いのだと思えた

生まれては消えて行くあらゆる数えきれぬ命は循環を繰返し
そのターミナルは
遠く離れた月の裏側の地下の王国に
命の宴を繋ぐためひそかに存在する
猫たちは満月の夜は一足飛びで地球に戻って空に躍り出て
猫キックに猫パンチ、猫プロレス
と 空を狭しと駆け回り
いつもの愛すべき運動会を続けているのです
尻尾を雲のようになびかせて











コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒猫温泉

2016年07月16日 | 
いつかきっときみを
温泉に連れてゆこうまだ若い
きみは溌剌として疲れも知らず
温泉のありがたさも判るまいから
ここしばらくは陽のあたる
風通しのいいテラスの窓辺で気持ちよく
万歳スタイルで眠るがいいさ

きっときみを
連れていくよ 温泉へ
ぎりぎり老いた父母の
晩年を支えてくれたのは
子でもなく孫でもなく
庭に咲く季節の花々と
黒猫きみなのだった と
みんなが気付く日は来るから
そしてきみのあのフットワーク
敏捷でほれぼれとした
足腰だって弱まって
高い机に飛び乗ることもままならず
静かに老いを迎える時も来るだろうから
その時はやっと同輩になって
見晴らしのいい屋上の
露天風呂を借り切って
富士を眺めていっぱいやるのも悪くない
またたび酒は台所の
シンクの下にたっぷりともう造ってあるし
そしてたぶん
その時にはいなくなっているだろう
じじ ばばの
思い出話をはなそうね
岩魚の塩焼きをしゃぶりながら

黒猫きみを連れていくよいつかきっと
私たちの温泉へ
車に乗せて
フードもトイレも一緒にね

(清水みどり詩集『黒猫』 1997年 東京文芸館 より)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紅鮭を食す時

2016年06月30日 | 
この赤い一枚の切り身の鮭は
遠い北の海で生まれた
姿美しく楽しく泳いで北の海の網にまかれ
南に運ばれてきた
広い市場でセリにかけられ
貨車で運ばれトラックに揺られ店頭に並んだ
小さな切り身になって流れるような姿を消し
塩でまぶされ火で炙られ焼かれた

鮭よ九谷焼のお皿に乗って
レモンの輪切りを一枚添えられ
たべものに変化した鮭

猫が眼を輝かせはふはふ食した日
わたしは猫と鮭の出会いにすこし涙した

猫も鮭も
なんでこの遠い住みにくい亜熱帯の国でであったの

やあこんにちはお元気で?

やがて食べて食べられたふたりは愛を交わし
北国の冷たい大気を求め手を取り合い
空に昇っていったのでしょうか

人間は懲りずにまた
紅い鮭を求めて街を歩き
忘れられぬ灰色の北の猫を想い 
流れにまかせ生きているのです
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒猫の庭

2016年05月18日 | 
空は群青 深い青
りらの花が今年も香る
花の庭に真黒な猫が一匹
初めて過ごす春を紅い牡丹の花の足元で
あたりを眺め
また眺めては身づくろい
金色の瞳の黒い動物のいる
あれは絵のような景色だった

うす紫色のりらの花房空に広がり揺れると
木の下に漂った春の甘い香り
高い甍を超えみどりの風がわたるとき
揺れ揺れ浮かぶ薄緑色の家族の肖像花の庭

陽炎もまだ見えぬ春の午前
花とみどり 金色の瞳の黒猫の庭



コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ねこ草

2016年01月19日 | 
雪の降った日の翌日
秋に蒔いた冬菜の中に混じり伸びていたねこ草
広菜の中に籠るひとむらの
細い草の葉の集まりは
この厳しい冬の朝の暖かな陽を浴び
冷気を一生懸命に吸い取り
草を緑に光らせるのだ

おいしいおいしいとはあちゃんが
いつもいきなり山羊になり無心に食べたねこ草
生命力強くへこたれない草は
医者いらずの長生きはあちゃんそのままに
食べるひとの居なくなった今年の冬も
なんとも元気に伸び生き続ける

はあちゃんは今年も
白い雪の景色に見とれ
真っ赤に色づいたまま落ちもしない可愛い南天の葉たちを眺め
子どものころのいたずらな目をして
冬の日だまりで楽しんでいる
透明猫になったグレーのはあちゃんを
私はいつも眺めているよ
はあちゃんー


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

元旦のゆめ -ナターシャのワルツ-

2016年01月02日 | 
元旦の朝早聴いた雅楽の音を忘れ
バッハのカンタータを流した
逢えなくなった猫の思い出の旋律を
懐かしんだことし

映画音楽の中の「ナターシャのワルツ」
猫の両手を取り一緒に踊ったワルツを
ことしは一人で踊った
チャーミングなオードリーと可愛いはなこ・ナターシャが
くるくると回り舞ったような気がした

彼女が好んだミルクとチーズの匂う
白菜とホタテのクリーム煮の鍋をそっとかきまぜ
ソーセージも茹で
元旦の日のつましい食事とした

仔猫時代に聴いていたバッハと映画音楽 そして
いつも好きだった食べ物らを思い出に供え
手のひらに残る灰色の毛の感触を想うとき
元旦の空は無情に青く透きとおり
不思議な新しい音を奏でて応えてくる

甕に蝋梅と水仙と千両
赤黄桃色の三色の金魚草を活けると
漂う春の匂いがあったが
慣れ過ぎた美しい動物の姿はない

部屋深く冬陽は差し込み
猫柳になった猫の脚は光と消え去り
新しい年の空は何事もなく
物語のなかでのんきに明るく広がっていた






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする