母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

晩秋のいろ

2013年11月20日 | 季節
熟した柿の実がいつか見た絵のように枝に残り

秋いろの葉がひらひらと舞い落ち

幾枚もの葉たちは風に踊り

地の上の鮮やかな絨毯となる

青空は遠く高く 丈高い菊たちは倒れて天を仰ぎ 

山は透明に染まり美しく静かな 季節は深まるばかりに


思い出はすべて 柿いろ

柿いろの木の葉 柿の実の甘さ

霜を抱く地菜もさらに甘く

母の手を赤く染め

子供のほほ赤く染め

里山のいきものらはいそいそと 冬支度を始める

四方の山並みの稜 きりきりと

北風下ろして吹く冬に向かうそのころ 

滲み通る柿いろの季節



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猫の瞳には

2013年11月10日 | 
猫の瞳には何が映る
水晶玉のような美しい目に
映っているのは 空と花と窓ガラス
遠い雲と空気そして 何かの気配
とおく空飛ぶ鳥の陰を追う 猫のきれいな瞳

猫の瞳にはまことがあるだけ
過去や未来に思いを馳せず
今日この時を生きる猫は
神々の瞳をもっている
人は笑えど動物たちこそ空から降りた
無垢の天使
短い生を愉しみ自由にはつらつと 
地上を走り駈け抜ける
走って楽しんでやがてまた去ってゆく

猫の瞳には何が映る
疲れた人間の疲れた皮膚が
植物や土壌やと同じに映るだけ

生きることを何よりの自然として
もしも明日の朝
息絶えるとしてもすべて素直に受け止め
美しい今日の景色をみつめているだけ
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