母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

紅鮭を食す時

2016年06月30日 | 
この赤い一枚の切り身の鮭は
遠い北の海で生まれた
姿美しく楽しく泳いで北の海の網にまかれ
南に運ばれてきた
広い市場でセリにかけられ
貨車で運ばれトラックに揺られ店頭に並んだ
小さな切り身になって流れるような姿を消し
塩でまぶされ火で炙られ焼かれた

鮭よ九谷焼のお皿に乗って
レモンの輪切りを一枚添えられ
たべものに変化した鮭

猫が眼を輝かせはふはふ食した日
わたしは猫と鮭の出会いにすこし涙した

猫も鮭も
なんでこの遠い住みにくい亜熱帯の国でであったの

やあこんにちはお元気で?

やがて食べて食べられたふたりは愛を交わし
北国の冷たい大気を求め手を取り合い
空に昇っていったのでしょうか

人間は懲りずにまた
紅い鮭を求めて街を歩き
忘れられぬ灰色の北の猫を想い 
流れにまかせ生きているのです
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芍薬に降る雨に

2016年06月08日 | 花(春)
芍薬に雨
手のひらと開く青い葉に雨
霧雨やわやわと纏わりつき
木々の緑いよよ深み
肌色の あかりのごとき花弁
恥ずかしげに
玉のような蕾佇む婦人に雨

しゃくやく 芍薬の花 
やがて終わる 花のはかなさ
はらりおちる花びらを
愛しめば
雨の庭にもの言わぬ花たちの
精一杯のいのちの宴
霧雨小雨につつましや
この季節を愛する人のために咲く花の
雨の姿の
麗しき

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