母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

秋の句

2014年11月16日 | 季節
☆ ひとひらの雲なき空にも語りあり

☆ 鳩遊ぶ石の舞台や紅葉寺

☆ つわの花日暮れて光る小闇かな

☆ ころ柿も軒に落ち着き岳白し

☆ つわ蕗の黄色花浮き暮れ早む

☆ 秋ナスも姿ちいさく枯れにけり

☆ おそ秋を藤袴のみ背を立てる

☆ 霜の庭青菜りんりん空を突く

☆ 春菊と柿のサラダにレモン汁を

☆ きりきりと凍みる大気よ登り坂
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房総の海

2014年11月13日 | 
房総の海よ秋は深い
房総の海よ空気の軽さ
エメラルド色に波は打ち寄せ
プルシャンブルーに海は息づく
白いしぶきを巻きあげ 
絶えることないこの
大きなうねりは

いのちの源をいまも産み続け
やむことなく蠢き
地球の丸みを
かなたに印し広がる
大海原よ 空との境に
誰も知らない秘密の国がある

房総の海 
遠ざかる太陽その下に
おおらかに寄せて引く
わたくしたちの
いのちの海
大いなる海よ


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樅の木は倒れて

2014年11月04日 | ふるさと
樅の木は倒れて
地上から姿を消した

樅の木は長い歳月
家を庇護し野鳥を育くみ 
脚元の屋敷神とともに
北風を遮り空に向かって
真の主の姿でどっしりと構え
長い間立っていたが
時は替わり樅の木は必要とされなくなった
彼は黙って涼しく何処かに
堂々と去っていった

賑やかに
多くの人人が集まり生まれ育っていった佳き時代 
滔々と流れた慈愛の歳月を
樅の木はその体にから発し続けたが
慈しみの時が去ると
すべてが雲・霧のように無情に流れて変化したが
恨みの一言もなく消え去った

巨きな樅の木は小さな声を
それでも密かに発したが
天上の人ひとのほかには誰も
その声を聞き取れるものはいなかった

はるかに遠くからも眺められた高い梢
巨きな樅の木を
大地は永遠に忘れることはない

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