母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

ミラノの白い霧

2015年01月27日 | 
冬のミラノの朝の街を包む霧
冷たい石畳の通りを人影は黙って歩み
コ―トのシルエットが動く墨絵のようだ
石の建物の間を静かに過ぎるひとりの紳士の
靴音が早朝の静寂をしばし破る

何処から立ち現われるかこの深い霧は
中世の尖塔聳える石の町をすっぽりと包み
濃いミルク色に
すべての景色を描き変えるのだ

遠来の旅人をもやる街中に
非情に置き去りにする霧
西洋の未知の幻をはからずも引き寄せる霧
立ち込めた霧の中では
右も左も白く沈み 何も見えない

夢幻に囲まれた異国の都市
その通りの向こうにかすかに見える
木立の間からいきなり黒いマントを翻し
白い髭老人ダビンチが
歩み寄って来る気がする

昼は雪の山を彼方に臨む
神秘の青い彩色都市ミラノの朝を包む
白い美しい 冬霧



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はなびら餅

2015年01月06日 | 季節
いにしへを語る みやびの菓子は

誰が名付けしはなびら餅

透き通る薄紅は

めでたくも訪れる新しい朝の

あけぼのに染まる茜の空の色

それは初々しい少女の頬に

湯気立つ如き温いいのちの色

年の初めを祝おうと

朱塗りの皿に置かれた菓子は

大地の力の種を宿し

射し込む朝日の光に包まれる

刻まれた時を無言で語り

羽二重の柔和さで存在する

美しい日本の新年のことほぎ

はなびらの餅よ
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