母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

秋のあさがお

2021年10月07日 | 花(秋)
あさがおはいとしや
ちぎれた葉疲れた枝に支えられ
力を絞り十月の朝咲く

あさがおはかなしや
小さなつぼみ冷える夜耐えて
朝の陽もとめ天を仰ぐ

あさがおは空より青く
忘れられぬ灼熱を語り
名月にひそかに歌う

まだ残る大きな花びら
色褪めた小さな花の背
つどう庭 季節の宴

あさがおのいのち尊し 
まだ咲きたいとうごめく
つぼみたちに 射しくる朝の陽
 
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紅い落葉

2017年11月15日 | 花(秋)
紅い落葉
舞い散る桜の 赤い葉

林檎色の可愛い
虫食いのある小さき落葉
葉脈の幾筋も浮かぶ落ち葉
秋深まる晴れた午後の通り

花終われば葉桜青く伸び繁り
今年の春夏を過ごして満たされて
いまは地上に落ち消えようと

今年のいのちを楽しみ
絵の具より優れた色彩で
染まるちいさなかたちの桜の葉

去年でなく
来年でなく
この年の
季節 時間をともに過ごし路上に落ち
消えようとする愛しい
仲間 秋のさくら葉の美しき
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猫コスモス

2016年11月15日 | 花(秋)
冷たい風の吹き始めた日
コスモスはちいさく咲いていた
コスモスの花は野菊より小さくなり
高山の小さな花たちのようになり
それでもしっかり背を伸ばし気高く咲く

涼しい秋空は遠くなり北風が吹き始めると
咲こうと待ち構えているもっと小さなつぼみたちは
びっくりしたような顔で
いきなりやってきた冷気に首をすくめるが
やがて降りる霜は無情にも
彼女らを季節の中に凍らせてしまう

コスモスは恨みもない素知らぬ顔で
木枯らし吹く頃咲き終わってゆくさだめでも
小さなピンク色たちが風に揺れると
無心に遊ぶ仔猫のようで いと愛し

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秋の色種

2013年09月18日 | 花(秋)
ひとの賑わいを無くした高原の原っぱに
桔梗、刈萱、女郎花、
撫子またフジバカマらは群れ咲き
マツムシ草もミヤマリンドウも空を抱いて合唱する(うたう)とき

うろこ雲、 さば雲、 いわし雲、
もつれ雲、 あわ雲、 まだら雲

雲たちは時のまにまに 姿を変え 姿を無くし
空の青に溶けて彷徨い
風は見えない音譜を記し
油照りでむせかえった 夏草の香を惜しみながら太陽を
賛美して見送るのです。

虫どもは そこまで来た季節に歌い踊ろうと自慢の羽根など磨きだし
喉や弦やのもろもろの調子を真面目顔で確かめたりして
夏の熱をおさめた地に今年かぎりの
宴の準備に忙しく

太陽が遠のいた高原は
清涼の気を隅々にまで拡げ
生きものらは 自然に安らぎ身をゆだね
過去と未来の真ん中で
気の遠くなるような時間の存在のなかで幾度も
小さな命の営みにいそしむのです

秋草の花を風が撫ぜ 
かるかやの 穂のゆれる音がちいさく聞こえ
山の原っぱはただ静かに 
夕べを迎え
また朝に目覚め
星たちは静かに 繰り返しめぐりまわり
雲たちはいずこからともなく
湧き来てまた 流れて消えてゆくのです
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駅のダリア

2012年10月29日 | 花(秋)
ホームに立つ少女の胸に抱えられたダリアは十月の駅の
赤い宝石
まあるい花は赤と白のぼんぼり
古代の呪文のくちびる
はなびらが語りだす
日本人形
電車を待ちながら見とれた夏のおわりの物語のスケッチ
冷気を好む花
高原によく似合うダリアたちよ
駅に集まって散っていく
幾つもの物語を語る小さないのち
ダリアの花

ダリアはおしゃべりな少女に変身し
ホームを吹き流す秋の涼風 
すっかりおとなしくなった陽の光は季節の移ろいを知らせる
おしゃべり少女に木綿のシャポーはいりません
夏はどこか遠くに 
さっき旅立って行きました

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