母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

海の慟哭

2015年03月13日 | 
淋しい海は北の海で
巨大な黒い冷たい嵐を呼んだ

冷たい嵐は海の底で
体をくねらせ大きく跳ね上がり
絶え間なく猛リ狂い波を起こした

その波の巨きさを
海自身さえも知らなかったが
愛しい海人らのいのちは波に呑まれ波に消え
海の底また遠い陸地天の国にまで流され運ばれて消えた

やさしい海は淋しさに負け
哀しみの連鎖を産みさらに身悶えした
ゆえ知らぬこの防ぎようのない力の前に
生きものは総て小さな塵芥にすぎなかった
海の哀しみは人の哀しみ
偉大な神も姿を隠し
戦場より悲惨な時間が過ぎていったのだった

海人らは誰も海の心を計りかね
降り注ぐ火の粉と尚舞落ちる雪に
哀しみの底さえ見えず海を見て慟哭した


平らかに広がる海
何事もなかったように
さざ波打つ海
大いなる幸せを人に与え
手に余る恵みをくれた偉大な海
痛み悲しみ 流された多くの涙を
呑みこんでいく 青い海
悪魔の黒い波を底に抱き
また
生きる力をいきものらに与える美しすぎる海
その胸に慟哭を押し込み
人より長く生き続ける
紺碧の空の下を異国にまで広がリ続ける 
海よ
海よ
日本の広い海よ


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房総の海

2014年11月13日 | 
房総の海よ秋は深い
房総の海よ空気の軽さ
エメラルド色に波は打ち寄せ
プルシャンブルーに海は息づく
白いしぶきを巻きあげ 
絶えることないこの
大きなうねりは

いのちの源をいまも産み続け
やむことなく蠢き
地球の丸みを
かなたに印し広がる
大海原よ 空との境に
誰も知らない秘密の国がある

房総の海 
遠ざかる太陽その下に
おおらかに寄せて引く
わたくしたちの
いのちの海
大いなる海よ


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海はいつも

2012年07月31日 | 
青くまろく広がり 
見えぬ海図を持ち
たおやかにも源に数え切れぬ命を抱いて

山なりのする部屋の
夜更けの白い窓辺にまで押し寄せる潮の匂いで
幾夜となく眠れぬ夜をすごし揺れた心
大いなる海の哀しみに戸惑いながら


陽を昇らせては沈める海の向こう
水平線
極まらず光る海
衣ずれてざわめく海

海は語るか
過去から未来への
数えきれぬ命の連ね
海の深さいのちの永遠

短い命を与えられた我らに
いつの日かは
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