母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

レンギョウの花

2015年03月26日 | 花(春)
春の彼岸には
墓を囲んで咲いた黄色いレンギョウの花だった

北風寒く吹く高原の
村の彼岸は
先祖さまに会う日だった

真昼の陽を浴びた黄色いレンギョウはいつも
春の訪れを告げる
金いろのまぶしい花だった

雪を抱く高山に囲まれ
豊かな湧水に恵まれ
黒土の肥沃な田畑の村は
平和に横たわり欠伸し
冬の眠りから目覚める季節だった


それから長い長い時が過ぎ去り
いつかレンギョウの木も
人も村も老いに疲れ果て
家も道も小川も
レンギョウの木と共に姿を変え
幾つも並ぶ墓石らは
悠久の流れの中の命の喜びと儚さと
再生を願い
静かに立っているのだった

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海の慟哭

2015年03月13日 | 
淋しい海は北の海で
巨大な黒い冷たい嵐を呼んだ

冷たい嵐は海の底で
体をくねらせ大きく跳ね上がり
絶え間なく猛リ狂い波を起こした

その波の巨きさを
海自身さえも知らなかったが
愛しい海人らのいのちは波に呑まれ波に消え
海の底また遠い陸地天の国にまで流され運ばれて消えた

やさしい海は淋しさに負け
哀しみの連鎖を産みさらに身悶えした
ゆえ知らぬこの防ぎようのない力の前に
生きものは総て小さな塵芥にすぎなかった
海の哀しみは人の哀しみ
偉大な神も姿を隠し
戦場より悲惨な時間が過ぎていったのだった

海人らは誰も海の心を計りかね
降り注ぐ火の粉と尚舞落ちる雪に
哀しみの底さえ見えず海を見て慟哭した


平らかに広がる海
何事もなかったように
さざ波打つ海
大いなる幸せを人に与え
手に余る恵みをくれた偉大な海
痛み悲しみ 流された多くの涙を
呑みこんでいく 青い海
悪魔の黒い波を底に抱き
また
生きる力をいきものらに与える美しすぎる海
その胸に慟哭を押し込み
人より長く生き続ける
紺碧の空の下を異国にまで広がリ続ける 
海よ
海よ
日本の広い海よ


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