「地方の銀行多すぎる」 菅氏の真意
自民党総裁選 金融機関 政治
2020/9/3 11:45 (2020/9/3 14:42更新)日本経済新聞 電子版
菅氏は「地方の銀行について、将来的には数が多すぎるのではないか」と述べた
自民党総裁選への立候補を表明した菅義偉官房長官が地域金融機関の統合・合併構想に言及した。
異次元金融緩和を継続する一方で、利ざやの縮小を背景とした地域金融機関の体力がそがれ構造的な問題となってきた。
地銀の競争力を伸ばし、自身が掲げる地方再生の核とする。
菅氏は2日、異次元緩和の副作用への対応について聞かれ「地方の銀行について、将来的には数が多すぎるのではないか」と述べた。
翌3日の記者会見でさらに踏み込み「再編も一つの選択肢になる」と語った。地銀の競争力強化は菅氏の持論でもある。
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菅氏 地域金融機関「再編も選択肢」
秋田県出身の菅氏は「活力ある地方」も政権構想に掲げた。少子高齢化で地方の人口が減少し、事業承継に苦しむ地方の実情を踏まえて「地方銀行は変わらなければいけない」と周囲に漏らしてきた。
大規模金融緩和であふれたマネーを有効に融資へと活用する事業が地方には乏しい。外国人訪日客、農産物の海外輸出を増やす政策を手掛けてきたのは、地方の稼ぎ頭をつくる意図があった。
地銀の体力低下は異次元の金融緩和のボトルネックでもあった。経営体力の弱い中小の地銀にとって再編は収益力回復に向けた選択肢となる。
官房長官としても、地銀再生に布石を打ってきた。
そのひとつが地銀の経営統合や合併について、独占禁止法の適用除外とする特例法だ。これまで困難だった同一県内の地銀合併を促し、経営基盤の強化を促す内容だ。今年5月に成立した特例法は、年内に施行される。
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同一県内での合併は寡占状況を黙認することにもつながる。独占禁止法を所管する公正取引委員会と金融庁の見解が分かれ、菅氏が調整にあたった。
当時は長崎県の親和銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループと同県の十八銀行との統合計画が、公正取引委員会の承認を得られずに実現まで難航するといった問題も起きていた。
菅氏は7月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で経営環境の悪化に苦しむ中小企業を対象とした人材支援の明記にもこだわった。フィンテックなどで人材を持て余す大手銀行の専門人材をリスト化する試みだ。地方に人材を供給する仕掛けと考える。
金融危機への対応が最大の争点となった1998年の総裁選で菅氏は、ハードランディング(強行着陸)路線を提唱した梶山静六元官房長官を担ぎ出した経緯もある。
地銀の統合・合併について菅氏は2日の記者会見で「将来的に」と付け加えた。地銀再生への言及からは「菅カラー」が垣間見える。
(政治部 重田俊介)
自民党総裁選 金融機関 政治
2020/9/3 11:45 (2020/9/3 14:42更新)日本経済新聞 電子版
菅氏は「地方の銀行について、将来的には数が多すぎるのではないか」と述べた
自民党総裁選への立候補を表明した菅義偉官房長官が地域金融機関の統合・合併構想に言及した。
異次元金融緩和を継続する一方で、利ざやの縮小を背景とした地域金融機関の体力がそがれ構造的な問題となってきた。
地銀の競争力を伸ばし、自身が掲げる地方再生の核とする。
菅氏は2日、異次元緩和の副作用への対応について聞かれ「地方の銀行について、将来的には数が多すぎるのではないか」と述べた。
翌3日の記者会見でさらに踏み込み「再編も一つの選択肢になる」と語った。地銀の競争力強化は菅氏の持論でもある。
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秋田県出身の菅氏は「活力ある地方」も政権構想に掲げた。少子高齢化で地方の人口が減少し、事業承継に苦しむ地方の実情を踏まえて「地方銀行は変わらなければいけない」と周囲に漏らしてきた。
大規模金融緩和であふれたマネーを有効に融資へと活用する事業が地方には乏しい。外国人訪日客、農産物の海外輸出を増やす政策を手掛けてきたのは、地方の稼ぎ頭をつくる意図があった。
地銀の体力低下は異次元の金融緩和のボトルネックでもあった。経営体力の弱い中小の地銀にとって再編は収益力回復に向けた選択肢となる。
官房長官としても、地銀再生に布石を打ってきた。
そのひとつが地銀の経営統合や合併について、独占禁止法の適用除外とする特例法だ。これまで困難だった同一県内の地銀合併を促し、経営基盤の強化を促す内容だ。今年5月に成立した特例法は、年内に施行される。
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同一県内での合併は寡占状況を黙認することにもつながる。独占禁止法を所管する公正取引委員会と金融庁の見解が分かれ、菅氏が調整にあたった。
当時は長崎県の親和銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループと同県の十八銀行との統合計画が、公正取引委員会の承認を得られずに実現まで難航するといった問題も起きていた。
菅氏は7月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で経営環境の悪化に苦しむ中小企業を対象とした人材支援の明記にもこだわった。フィンテックなどで人材を持て余す大手銀行の専門人材をリスト化する試みだ。地方に人材を供給する仕掛けと考える。
金融危機への対応が最大の争点となった1998年の総裁選で菅氏は、ハードランディング(強行着陸)路線を提唱した梶山静六元官房長官を担ぎ出した経緯もある。
地銀の統合・合併について菅氏は2日の記者会見で「将来的に」と付け加えた。地銀再生への言及からは「菅カラー」が垣間見える。
(政治部 重田俊介)