日韓GSOMIA、破棄手続きで割れる解釈 24日に通告期限
日韓対立 朝鮮半島
2020/8/22 2:00 日本経済新聞 電子版
日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が24日に破棄を通告する期限を迎える。
韓国は2019年に破棄を通告したものの、失効直前の11月に通告の効力を停止して協定を保った。
韓国は通告期限に縛られず、いつでも破棄できると主張しており、日韓で手続きを巡る解釈が割れる。
協定は1年ごと、11月23日に自動的に更新する仕組みだ。終了したい場合は更新期限の90日前までに一方の国が相手国に書面で通告するよう定める。今月24日はその期限にあたる。
それにもかかわらず、韓国は破棄するかどうかは期限に縛られないとの主張を続ける。期限後も韓国が一方的に終了を宣言する可能性が残る。
韓国外務省の副報道官は20日に「韓国政府はいつでも終了できる権利を持つ」と述べた。韓国政府は「協定を1年ごとに延長する概念は現在、適用されていない」との認識を示す。
韓国の言い分はこうだ。
破棄通告は効力を停止したものの撤回しておらず、いつでも停止を解けば協定を終了できるという。日本に新たに通告しなくても韓国の決断次第でいつでも破棄できるという解釈になる。
仮に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が24日の通告期限後に、一方的に協定終了を宣言すれば混乱は避けられない。
協定維持を求める米国との関係が悪化する恐れもある。
もとより協定は破棄通告を取り消すという手続きを想定していない。韓国の説明通りにことが進むのかすら分からない状態が続く。
日本はいつでも破棄可能という韓国の説明を認めてはいない。
同時に日韓外交当局者は「韓国の主張に我々からは何も言わないということで折り合っている」と話す。
あえて韓国の言い分を肯定も否定もせず、協定失効を避けるのを優先する姿勢で臨む。
韓国が19年8月に協定破棄を決めたのは、日本が韓国向けの輸出管理を厳格化したことへの反発からだった。
この決定に米国は日米韓の安全保障協力に綻びが生じると懸念し、協定延長を強く迫った。
韓国は日本の措置を撤回させるカードとして打ち出したものの、日韓当局間の輸出管理を巡る協議が実現したのを理由に、土壇場の19年11月に協定維持に転じた。それでも日本の厳格化措置は事実上なお続く。
韓国には実際に協定を維持しても、日本の対応なしに韓国の方から引き下がるわけにいかないとの考えがありそうだ。破棄を通告しないものの、いつでも破棄できる権利を主張するという、曖昧さを残した態度は当面続くとみられる。
そもそも一度日本に伝えた破棄通告の効力停止を韓国が一方的に取り消せるのだろうか。
条約法に関するウィーン条約は条約終了に関し54条で(1)条約に基づく場合(2)すべての当事国の同意がある場合――と定める。
日韓両国は19年11月の破棄通告の停止を「口上書」を交わして確認した。
口上書は公式な外交文書ではあるが宣言などと比べて法的拘束力は弱い。
これを理由に、韓国は日本の同意がなくても取りやめられると判断している可能性がある。
萬歳寛之早大教授は「韓国の主張は法的安定性の観点から認められないだろう」とみる。
経過期間なしに破棄できるなら協定に基づく関係は不安定になる。「すぐ消滅するリスクが続く限り、軍事を巡る情報共有は期待できない」と指摘する。
日韓関係を巡っては韓国の元徴用工訴訟を巡り日本企業が韓国に持つ資産売却に向けた手続きが進む。
安全保障分野の協定が想定外の不安定な状態になっている現状は、改善の糸口がみえない今の日韓関係を象徴する。
日韓対立 朝鮮半島
2020/8/22 2:00 日本経済新聞 電子版
日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が24日に破棄を通告する期限を迎える。
韓国は2019年に破棄を通告したものの、失効直前の11月に通告の効力を停止して協定を保った。
韓国は通告期限に縛られず、いつでも破棄できると主張しており、日韓で手続きを巡る解釈が割れる。
協定は1年ごと、11月23日に自動的に更新する仕組みだ。終了したい場合は更新期限の90日前までに一方の国が相手国に書面で通告するよう定める。今月24日はその期限にあたる。
それにもかかわらず、韓国は破棄するかどうかは期限に縛られないとの主張を続ける。期限後も韓国が一方的に終了を宣言する可能性が残る。
韓国外務省の副報道官は20日に「韓国政府はいつでも終了できる権利を持つ」と述べた。韓国政府は「協定を1年ごとに延長する概念は現在、適用されていない」との認識を示す。
韓国の言い分はこうだ。
破棄通告は効力を停止したものの撤回しておらず、いつでも停止を解けば協定を終了できるという。日本に新たに通告しなくても韓国の決断次第でいつでも破棄できるという解釈になる。
仮に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が24日の通告期限後に、一方的に協定終了を宣言すれば混乱は避けられない。
協定維持を求める米国との関係が悪化する恐れもある。
もとより協定は破棄通告を取り消すという手続きを想定していない。韓国の説明通りにことが進むのかすら分からない状態が続く。
日本はいつでも破棄可能という韓国の説明を認めてはいない。
同時に日韓外交当局者は「韓国の主張に我々からは何も言わないということで折り合っている」と話す。
あえて韓国の言い分を肯定も否定もせず、協定失効を避けるのを優先する姿勢で臨む。
韓国が19年8月に協定破棄を決めたのは、日本が韓国向けの輸出管理を厳格化したことへの反発からだった。
この決定に米国は日米韓の安全保障協力に綻びが生じると懸念し、協定延長を強く迫った。
韓国は日本の措置を撤回させるカードとして打ち出したものの、日韓当局間の輸出管理を巡る協議が実現したのを理由に、土壇場の19年11月に協定維持に転じた。それでも日本の厳格化措置は事実上なお続く。
韓国には実際に協定を維持しても、日本の対応なしに韓国の方から引き下がるわけにいかないとの考えがありそうだ。破棄を通告しないものの、いつでも破棄できる権利を主張するという、曖昧さを残した態度は当面続くとみられる。
そもそも一度日本に伝えた破棄通告の効力停止を韓国が一方的に取り消せるのだろうか。
条約法に関するウィーン条約は条約終了に関し54条で(1)条約に基づく場合(2)すべての当事国の同意がある場合――と定める。
日韓両国は19年11月の破棄通告の停止を「口上書」を交わして確認した。
口上書は公式な外交文書ではあるが宣言などと比べて法的拘束力は弱い。
これを理由に、韓国は日本の同意がなくても取りやめられると判断している可能性がある。
萬歳寛之早大教授は「韓国の主張は法的安定性の観点から認められないだろう」とみる。
経過期間なしに破棄できるなら協定に基づく関係は不安定になる。「すぐ消滅するリスクが続く限り、軍事を巡る情報共有は期待できない」と指摘する。
日韓関係を巡っては韓国の元徴用工訴訟を巡り日本企業が韓国に持つ資産売却に向けた手続きが進む。
安全保障分野の協定が想定外の不安定な状態になっている現状は、改善の糸口がみえない今の日韓関係を象徴する。