文政権のレームダック化 顕著に
国防部も白善燁将軍侮辱に反発
日付: 2020年09月02日 00時00分
親文在寅派(以下、親文派)の与党議員らが、6・25(韓国戦争)で共産勢力の南侵を防いだ故・白善燁将軍を侮辱した。これに対し、国防部が白将軍を「危機に直面した国を救った方」と反発する事態が発生した。4年目を迎える文在寅政権の支持率は、最近になって下落傾向が続いている。文政権のレームダック加速化について取材した。
(ソウル=李民晧)
2カ月で1000万人が支持を撤回
政党を問わず、これまでレームダック(任期終盤にみられる求心力の低下現象)を避けられたケースはない。
大統領の任期が5年単任制である韓国で、レームダックが本格化する時期は4年目だ。朴槿惠(崔順実ゲート)、李明博(側近の不正)、廬武鉉(不正賭博疑惑)も「魔の4年目」を避けることはできなかった。
そして2017年5月に大統領に就任した文在寅政権も、4年目に入っている。
最近、文政権におけるレームダックの兆候が至る所でみられるようになった。実際、支持率の低下は明らかになっている。
国民が背を向けているという事実は、世論調査でも如実に表れている。韓国ギャラップが8月18~20日に実施した大統領職務遂行評価で、回答者の47%は「よくやっている」、45%は「できていない」と回答した。保留(無回答)は8%だった。
4・15総選挙直後の5月に行われた世論調査に比べ、肯定的な評価を示す割合がかなり下落している。
当時「よくやっている」と回答した割合は71%だったことを踏まえると、わずか2カ月ほどで大統領支持率が25%も下落した格好だ。
特に、「できていない」と回答した人の割合が25%から45%へと急増した。これを国民総人口に換算して数値化すると約1000万人、つまり国民の5分の1が「支持」から「不支持」に翻ったということになる。
属性別では、最も大きく変化したのが30代男性だった。昨年まで平均55%台の支持を保っていたこの層が、最近では45%程度に低下した。不支持は35%台から45%台へと急増している。
30代男性が文在寅支持から不支持へと翻った背景には、現政権における不動産価格急騰の影響がある。最も多く不動産の購入を検討しているのがこの世代だ。
「いま家を買わなければ永遠に買えない」「後々、不動産価格がさらに上昇したら買えなくなる」という焦燥感があるからだ。「パニックバイイング(panic buying)」、つまり焦燥感から家を買う年齢層が30代というわけだ。
親文派が抱えるレームダックのトラウマ
親文派は、否定的評価が高まる世論の動きには関心が薄い様子だ。むしろ、文政権こそがレームダックに陥ることのない初の政権になると豪語している。
彼らは検察改革という大義名分下で検察の無力化を進めているが、その思惑を案じる声も多い。
検察は権力を監視し、捜査を行う専門機関だ。政権が末期に近づくと、検察は大統領の姻戚、側近の不正などの大型事件を洗い出し、レームダックを促進させてきた。
現政権が検察の権限縮小に躍起になるのは、「公捜処」を親文派で固め、自派の求心力低下を抑える意図があるものとみられている。
親文派陣営は、レームダックのトラウマを抱えている。廬武鉉政権の終盤間際、大統領の親戚・姻戚による不正が発覚したことを受け、「廃族(刑を受け、子孫の代でも復権できなかった一族)」と自嘲していた。
与党の中には、同じことは起きないと楽観視する見方がある。
不動産価格の問題さえクリアすれば支持率は上昇する、与党176議席という一大勢力によって廬武鉉政権当時のようなレームダックは繰り返さない、という期待感がある。
しかし、大統領支持率に関するこれまでの世論調査で「デスクロス(否定が肯定を上回ること)」現象が起きて以来、それを覆したケースは一度もない。
国防部が反旗
政権末期にみられる現象のうち一つが、政府筋と政権間の対立だ。政治家出身の公務員(青瓦台などの親文派公務員)と正統派公務員集団間における軋轢が好例といえる。
国防部をはじめ、最近ではそうしたケースが散見され始めた。
光復会長・金元雄氏が、故・白善燁将軍の功績を貶める発言をしたことに対し、国防部が「故人は危機に直面した国を救った方」と真っ向から反論した。時を同じくして、報勲団体を総括する国家報勲処も金元雄氏に対して口頭注意を行った。
国防部は、未来統合党の金度邑議員に提出した書面答弁で「故・白善燁将軍は6・25当時、(釜山の)多富洞の戦いなど多くの戦闘を勝利に導き、危機に直面した国を救った。
国軍初となる四つ星将軍である上、陸軍参謀総長を2回歴任し、軍と韓米同盟の発展に貢献したことは事実だ」と述べた。
国防部のスタンスは、金元雄氏に代表される親文派の歴史観とは相反するものだ。
金氏は先月17日、某ラジオ番組に出演し、「6・25が起こると陸軍第1師団に現れず、それだけをもってしても死刑たるべきだ」と非難した。
また、劣勢の状況で北韓軍を封じた多富洞の戦いについても「(北朝鮮軍の)核心的な戦力は米軍が全部砲で撃ち殺し、(白将軍は)ただ進軍しただけ」と蔑んだ。
白将軍が親日派であると主張してきた金氏は、今年の8・15記念式における祝辞でも問題提起を行った。これに対し、民主党指導部からは「胸に深く刻むべき言葉」と擁護する発言まで飛び出した。
しかし、1950年8月の多富洞の戦いで、白将軍が兵士たちに「私が後退したら私を撃て」と告げ、先頭に立って指揮を執ったことは周知の事実だ。
8000人ほどだった我軍の兵力で、白将軍は1カ月もの間、北韓軍2万人の攻撃に対抗した。
この1カ月間がなければ韓国の共産化を防ぐ術はなかった。
多富洞の戦いの直後、国連軍が韓国に上陸し、マッカーサーの仁川上陸作戦が展開された。
国防部はまた、金氏と民主党議員らによる「白善燁を国立顕忠院から破墓せよ」という主張についても反論した。
「白将軍は武功勲章を授与されている。国立墓地の設置と運営に関する法に則り、国立墓地への埋葬対象に該当するため大田顕忠院に埋葬されている。
破墓できる法的根拠は存在せず、故人の功績と現行の法令を考慮した結果、顕忠院への埋葬は妥当」と一蹴した。
親文派勢力に対する国防部のこうしたスタンスが、他部処に飛び火する火元となり得るか―。政治の中心地・汝矣島一帯では、その動きを関心をもって注視している。
国防部も白善燁将軍侮辱に反発
日付: 2020年09月02日 00時00分
親文在寅派(以下、親文派)の与党議員らが、6・25(韓国戦争)で共産勢力の南侵を防いだ故・白善燁将軍を侮辱した。これに対し、国防部が白将軍を「危機に直面した国を救った方」と反発する事態が発生した。4年目を迎える文在寅政権の支持率は、最近になって下落傾向が続いている。文政権のレームダック加速化について取材した。
(ソウル=李民晧)
2カ月で1000万人が支持を撤回
政党を問わず、これまでレームダック(任期終盤にみられる求心力の低下現象)を避けられたケースはない。
大統領の任期が5年単任制である韓国で、レームダックが本格化する時期は4年目だ。朴槿惠(崔順実ゲート)、李明博(側近の不正)、廬武鉉(不正賭博疑惑)も「魔の4年目」を避けることはできなかった。
そして2017年5月に大統領に就任した文在寅政権も、4年目に入っている。
最近、文政権におけるレームダックの兆候が至る所でみられるようになった。実際、支持率の低下は明らかになっている。
国民が背を向けているという事実は、世論調査でも如実に表れている。韓国ギャラップが8月18~20日に実施した大統領職務遂行評価で、回答者の47%は「よくやっている」、45%は「できていない」と回答した。保留(無回答)は8%だった。
4・15総選挙直後の5月に行われた世論調査に比べ、肯定的な評価を示す割合がかなり下落している。
当時「よくやっている」と回答した割合は71%だったことを踏まえると、わずか2カ月ほどで大統領支持率が25%も下落した格好だ。
特に、「できていない」と回答した人の割合が25%から45%へと急増した。これを国民総人口に換算して数値化すると約1000万人、つまり国民の5分の1が「支持」から「不支持」に翻ったということになる。
属性別では、最も大きく変化したのが30代男性だった。昨年まで平均55%台の支持を保っていたこの層が、最近では45%程度に低下した。不支持は35%台から45%台へと急増している。
30代男性が文在寅支持から不支持へと翻った背景には、現政権における不動産価格急騰の影響がある。最も多く不動産の購入を検討しているのがこの世代だ。
「いま家を買わなければ永遠に買えない」「後々、不動産価格がさらに上昇したら買えなくなる」という焦燥感があるからだ。「パニックバイイング(panic buying)」、つまり焦燥感から家を買う年齢層が30代というわけだ。
親文派が抱えるレームダックのトラウマ
親文派は、否定的評価が高まる世論の動きには関心が薄い様子だ。むしろ、文政権こそがレームダックに陥ることのない初の政権になると豪語している。
彼らは検察改革という大義名分下で検察の無力化を進めているが、その思惑を案じる声も多い。
検察は権力を監視し、捜査を行う専門機関だ。政権が末期に近づくと、検察は大統領の姻戚、側近の不正などの大型事件を洗い出し、レームダックを促進させてきた。
現政権が検察の権限縮小に躍起になるのは、「公捜処」を親文派で固め、自派の求心力低下を抑える意図があるものとみられている。
親文派陣営は、レームダックのトラウマを抱えている。廬武鉉政権の終盤間際、大統領の親戚・姻戚による不正が発覚したことを受け、「廃族(刑を受け、子孫の代でも復権できなかった一族)」と自嘲していた。
与党の中には、同じことは起きないと楽観視する見方がある。
不動産価格の問題さえクリアすれば支持率は上昇する、与党176議席という一大勢力によって廬武鉉政権当時のようなレームダックは繰り返さない、という期待感がある。
しかし、大統領支持率に関するこれまでの世論調査で「デスクロス(否定が肯定を上回ること)」現象が起きて以来、それを覆したケースは一度もない。
国防部が反旗
政権末期にみられる現象のうち一つが、政府筋と政権間の対立だ。政治家出身の公務員(青瓦台などの親文派公務員)と正統派公務員集団間における軋轢が好例といえる。
国防部をはじめ、最近ではそうしたケースが散見され始めた。
光復会長・金元雄氏が、故・白善燁将軍の功績を貶める発言をしたことに対し、国防部が「故人は危機に直面した国を救った方」と真っ向から反論した。時を同じくして、報勲団体を総括する国家報勲処も金元雄氏に対して口頭注意を行った。
国防部は、未来統合党の金度邑議員に提出した書面答弁で「故・白善燁将軍は6・25当時、(釜山の)多富洞の戦いなど多くの戦闘を勝利に導き、危機に直面した国を救った。
国軍初となる四つ星将軍である上、陸軍参謀総長を2回歴任し、軍と韓米同盟の発展に貢献したことは事実だ」と述べた。
国防部のスタンスは、金元雄氏に代表される親文派の歴史観とは相反するものだ。
金氏は先月17日、某ラジオ番組に出演し、「6・25が起こると陸軍第1師団に現れず、それだけをもってしても死刑たるべきだ」と非難した。
また、劣勢の状況で北韓軍を封じた多富洞の戦いについても「(北朝鮮軍の)核心的な戦力は米軍が全部砲で撃ち殺し、(白将軍は)ただ進軍しただけ」と蔑んだ。
白将軍が親日派であると主張してきた金氏は、今年の8・15記念式における祝辞でも問題提起を行った。これに対し、民主党指導部からは「胸に深く刻むべき言葉」と擁護する発言まで飛び出した。
しかし、1950年8月の多富洞の戦いで、白将軍が兵士たちに「私が後退したら私を撃て」と告げ、先頭に立って指揮を執ったことは周知の事実だ。
8000人ほどだった我軍の兵力で、白将軍は1カ月もの間、北韓軍2万人の攻撃に対抗した。
この1カ月間がなければ韓国の共産化を防ぐ術はなかった。
多富洞の戦いの直後、国連軍が韓国に上陸し、マッカーサーの仁川上陸作戦が展開された。
国防部はまた、金氏と民主党議員らによる「白善燁を国立顕忠院から破墓せよ」という主張についても反論した。
「白将軍は武功勲章を授与されている。国立墓地の設置と運営に関する法に則り、国立墓地への埋葬対象に該当するため大田顕忠院に埋葬されている。
破墓できる法的根拠は存在せず、故人の功績と現行の法令を考慮した結果、顕忠院への埋葬は妥当」と一蹴した。
親文派勢力に対する国防部のこうしたスタンスが、他部処に飛び火する火元となり得るか―。政治の中心地・汝矣島一帯では、その動きを関心をもって注視している。