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映画「パラサイト」が語る格差社会の底流に沈潜する不気味なマグマ

2020-09-07 14:37:05 | 日記
映画「パラサイト」が語る格差社会の底流に沈潜する不気味なマグマ

関下 稔

(立命館大学 名誉教授)

2020.03.09

韓国映画「パラサイト」がカンヌ映画祭のパルムドールに続いてアメリカのアカデミー作品賞を獲得して,全世界の注目を集めている。

ストーリーは,半地下に住む失業中の父親や進学できないでいる息子と娘,そして一人働いて一家を支えている母親の,貧困な一家4人がIT産業によって成功を収めた邸宅に住む富裕な家庭に次々と入り込んでいく物語で,それだけを見ると,一種の小気味よいサクセスストーリーであるかのように見える。

だが,ネタバレによる興味半減―それもミステリーによくある犯人探しの類いではなく,物語の本質に関わる部分での―を恐れて口外を封印されている後半における驚天動地ともいえる大逆転の展開にこそ,その本領はある。観客は前半と後半の落差に驚き,その映画作りの巧妙さに感心すると同時に,問題の深刻さに思いを巡らさざるえないことになる。

それは決して物語を面白くさせるための手練手管に終わらない。

見終わると,韓国社会の目に見える格差ぶりや東西冷戦の暗い影を今も引きずっている現状への共感は無論のこと,後半で描いている目に見えない深い闇の世界の存在に思いを至さざるを得ない。

それは脳裏に焼き付き,ずっしりと腹の奥底に沈殿していく。そしてタイトルの「パラサイト」の意味合いを考えてしまう。

一体誰が誰に対して「寄生」しているのか。これこそこの映画の本当の主題なのではないか。

かつて,ヴェブレンは「有閑階級」という概念を生み出して,20世紀初頭の金ぴか時代におけるアメリカの新興富裕階級の台頭とその成金趣味の発散を批判的に描いた。

そして不労所得に寄生するこれら有閑階級家族の見せかけの顕示的消費や代行消費が蔓延するその生活ぶりと対比させて,モノづくりを基本とする健全な製作者魂(workmanship)を鼓吹した。

もちろんそれは知的創造活動を駆使して作り上げた営為からの成果である無形の「グッドウィル」の存在とその価値を否定するものではない。

両者はその比較秤量が難しいとはいえ,そして両者の比重如何は社会関係の変化につれて変動するとはいえ,十分に両立可能なものである。

まるで現在の消費過多と知財重視の時代を先取りするかのような鋭敏な直感力と創造性豊かな先見性と立論の確かさに瞠目したものである。

映画「パラサイト」はそれを彷彿とさせるほどのインパクトを与えた。

グローバル世界の至るところに蔓延する富と貧困の格差を端的に可視化してみせたばかりでなく,その底に沈殿して目に見えないでいるさらに深い闇の世界の存在をも表出させ,そこにも思いを至らしめることに成功した。恐るべき手腕である。

ところで,これが新興国の代表的存在の一つである韓国を舞台にしていることについて考えてみたい。

グローバリゼーションの進展は先進国のIT化・情報化・知財化を基軸に据えたサービス経済化と,途上国ならびに旧社会主義国の合流を含めた新興国の工業化と急速な経済成長をもたらし,世界的規模での資本と富の蓄積とその対極に貧困の蓄積を生み出した。

だが時代の推移は先進国と新興国・途上国の間の急速な格差縮小から両者の平準化をもたらし,加えて主導国アメリカのヘゲモニーの後退は米中間の熾烈な主導権争いを招来させ,グローバリゼーションの進行に急ブレーキをかけている。

皮肉なことにそれは,これまでの急成長の担い手であった新興国により大きなしわ寄せが集まり,にわか仕立てのその蓄積基盤の弱さを直撃しているかに見える。

外資とその技術に依拠した生産システムとグローバル市場での販売を目論むその戦略が狙い撃ちされている。

模倣化による技術習得はキャッチアップには向いていても,そこから自前の技術を確立しようとすると,多くの困難が待ち受けている。

韓国の場合,ITなどの先端部門において,欧米巨大メーカーの庇護下で,ニッチな特殊な部品部門を磨き上げて,そのサプライヤーになることで成長していくというという戦略は今や難しくなっている。

より精緻な素材類を先進国側,とりわけ日本などが経済制裁を理由に出さなくなってきたからである。

デカップリング(切断)されると,中小の部品・中間財部門の裾野を広範に持たないその浅さがネックになり,しかもグローバル市場を当て込んでいるため,たちまち生産過剰に見舞われることになる。

加えて,アメリカの同盟国として,その核の傘の下で軍事負担を免れる時代が終わり,アメリカ財政赤字からの軍事的負担増の要請は日ごとに強まり,今やその負担の重さに絶えられないほどにまできている。

これらの何重もの重荷が韓国経済を直撃している。

このことが韓国社会の背後にあることを考えると,映画「パラサイト」の訴えているものは,今日のグローバリゼーションのマイナス面を集中的に集めているように思えてならない。

菅義偉氏「日韓関係こじれた全責任は韓国にある」

2020-09-07 13:50:36 | 日記
配信日時:2020/09/05 05:00

新宿会計士の政治・経済評論

菅義偉氏「日韓関係こじれた全責任は韓国にある」

少し気が早いのかもしれませんが、ここのところ当ウェブサイトでは連日のように、「菅義偉総理」について議論しています。

当ウェブサイトとしては、この「新総理」に100%の期待を寄せているわけではありませんが、それでも従来の安倍政権の良い姿勢を継続し、悪い政策を改めてほしいとは考えています。

ただ、安倍政権の政策のなかで、当ウェブサイトとしては「結論的には支持できる」という分野のひとつが、日韓関係です。


目次

1 菅氏の日韓関係に対する認識
2 菅氏の発言、結論的には正しい
3 岸田、石破の両氏を首相にしてはならない
4 ゼロ対100理論に落とし前が付けられない理由
5 韓国側の甘ったれた認識はいつもどおり

菅氏の日韓関係に対する認識

当ウェブサイトでは、さまざまなメディアの報道などから総合的に判断し、辞任する安倍晋三総理大臣の後任として、9月16日の臨時国会で菅義偉・内閣官房長官が次期総理大臣に就任することはほぼ確実と見ています。

そして、「菅義偉総理」が直面するであろう課題や、個人的に期待することについては、『菅義偉氏の出馬宣言と、「菅義偉政権」に期待すること』などで詳しく触れたとおりですので、本稿では繰り返しません(※ただし、付随論点がいくつかあるので、それらについては別稿で触れたいと思います)。

こうしたなか、あらためて菅氏の過去の発言、言動などを読み返していて気付いたのが、日韓関係に対する菅氏の姿勢が非常にわかりやすい、という点です。

ここでは、時事通信に今からちょうど1年前に掲載された、次の記事などを読んでみましょう。

関係悪化「韓国に全責任」=菅官房長官
―――2019年09月08日10時41分付 時事通信より

時事通信によると、菅氏は出演したテレビ番組で、日韓関係について次のように述べたのだそうです。

(日韓)関係がこんなにこじれてきたのは、すべて韓国に責任がある

裁判所を含め全ての国家機関は順守しないといけないのが基本だが、そこを踏み外してきている

菅氏の発言、結論的には正しい
なかなか歯切れの良い発言です。

当ウェブサイトとしては、菅氏の推進してきた政策、菅氏の発言のすべてに無条件に賛同するつもりはありませんが、日韓関係がこじれていることと、それをこじれさせたすべての責任が韓国にある、という点については、ほぼ同意します。

「ほぼ同意」、と申し上げる理由は、日韓関係がこじれた責任が100%、完全に韓国側のみにあるとは言い切れないからであり、とくに安倍政権下の2015年12月の日韓慰安婦合意で韓国側に下手に「エサ」を与えたことが、韓国を増長させた可能性があるからです。

(※「韓国にエサを与えなかった結果、どうなったか」については、『相次ぐ韓国の自爆、日本が「エサ」与えなくなったから』あたりで議論していますので、どうかご参照ください。)

ただ、その点を差し引いたとしても、2017年5月に発足した文在寅(ぶん・ざいいん)政権下の韓国が、日本に対し、本当にさまざまな不法行為を仕掛けて来ていることは確かであり、これらについては本来、韓国側の責任において落とし前をつけなければならないからです。

その筆頭格が自称元徴用工判決問題ですが、それだけではありません。

2018年12月に日本の排他的経済水域内で発生した自衛隊機への火器管制レーダー照射事件、国会議長による2019年2月の天皇陛下(現在の上皇陛下)に対する侮辱発言問題、
2019年7月までに韓国が慰安婦財団を勝手に解散してしまったことなど、さまざまな課題が積み上がっています。

しかも、それに飽き足らず、韓国は日本政府が2019年7月に発表した対韓輸出管理適正化措置を「輸出『規制』だ」と騙り、日韓GSOMIAを破棄しようとしたり、日本を世界貿易機関(WTO)に提訴したりしています。

これらの不法行為のすべてを全面撤回し、韓国が日本に対して与えた被害をすべて回復するのでなければ、日韓間の未来は非常に暗いと言えます。

菅氏が昨年、「すべて韓国に責任がある」と述べたのが、いかなる意味合いなのかはよくわかりませんが、少なくとも日韓関係がこじれているさまざまな要因のうち、文在寅政権発足以降に発生したものは、いずれもすべて韓国側に責任があることは間違いありません。

その意味では、菅氏の認識は結論的には正しいと言って差支えないでしょう。

岸田、石破の両氏を首相にしてはならない

ちなみに、自民党総裁選に出馬しているほかの2人の候補は、日韓関係について非常に心もとないと思います。

このうち2015年12月の日韓慰安婦合意に関与した当時の外相で自民党政調会長でもある岸田文雄氏は、出馬会見で、現在の日韓関係を「大変残念な状況」と述べたうえで、「韓国は国際法と約束を守るべき」などとしつつも、

「両国関係において、両国の国民のこの感情というものをしっかりと冷静にコントロールすることを行い、その上で冷静な外交の対話を行っていく」

と述べています(※次の産経ニュースの記事参照)。

【岸田氏出馬会見】(7完)「韓国は国際法と約束守るべき」
―――2020.9.1 19:39付 産経ニュースより

正直、これは日本の首相になろうとする者の認識としては非常に不十分であり、私たち日本国民としても不安に思わざるを得ません。日韓関係を壊したくないならば、韓国が国際法と約束を守ることは当たり前であり、この点において対話ないし交渉の余地はないからです。

「さすが慰安婦合意で日本の名誉と尊厳を韓国に売り渡した男だ」、などと言うつもりはありませんが、岸田氏の認識は残念というほかありません。

ただ、この岸田氏は「約束を守れ」と述べている点についてはまだマシであり、石破茂氏に至っては、2017年5月、韓国メディア『東亜日報』とのインタビューで、「日本は韓国が納得するまで慰安婦問題で謝罪すべき」などと述べているようだからです(※下記記事参照、ただし韓国語)。

石破茂「日本、韓国が納得するまで慰安婦について謝罪すべき」【韓国語】

「安倍1強」体制下の日本の自民党で、ほぼ唯一、「反安倍」の声を上げる人がいる。「ポスト安倍」にも名前が挙がる石破茂・前地方創生相だ。

今月3日の憲法記念日に安倍晋三首相が明らかにした改憲構想にも政界で一番最初に反対意見を出した。
―――2017-05-23 03:54付 東亜日報より

正直、お話になりません。

日韓関係ひとつまともに論じられないような岸田文雄、石破茂の両氏については、間違っても首相にしてはならない、というのが、当ウェブサイトなりの主観的な結論なのです。

ゼロ対100理論に落とし前が付けられない理由

この点、当ウェブサイトとしては、安倍政権の対韓外交が「100%の成功だった」とは思いませんし、2015年12月の日韓慰安婦合意のように、成果といえるのかが非常に微妙な事績もあったと考えていますが、それでも対韓外交については、今までの日本の政権と比べると随分良くなったと思います。

ここで注意しなければならないのは、韓国が歴史問題などの捏造を仕掛けてくるときには、たいていの場合、「ゼロ対100」で自分たちの方が悪い問題であっても、「50対50」、あわよくば「100対ゼロ」に持ち込もうとする、という点です。これを当ウェブサイトでは、「ゼロ対100の理論」と呼んでいます。

ゼロ対100理論

韓国は自分たちに100%の過失があると自覚している場合に、「相手も悪い」と騙り、「50対50」、あわよくば「100対ゼロ」に持ち込もうとする、という傾向があること。

安倍政権下でも韓国がいつもの調子で「ゼロ対100」の問題を「50対50」、「100対ゼロ」に持ち込もうとしましたが、日本としては一歩も譲歩せず、「ゼロ対100」のままに留め置いた、というのは、非常に画期的なことではないでしょうか。

結果的に事態は日韓間で完全に膠着しているものの、この調子で日本がまったく譲歩しない展開が続けば、少なくとも日韓関係は将来に向けて変質していくはずです。しかも、当ウェブサイトとしては「良い方向に」変質する、と見ています。

むろん、本来ならば、「ゼロ対100戦争」を韓国が仕掛けてきたときには、韓国に100を遥かに超える打撃を与えるべきなのですが、安倍政権は結局、韓国に対しては100を超える反撃をしなかった、という点については、どうしても物足りなさが残ります。

ただし、当ウェブサイトの理解に基づけば、日本は現在、米国や豪州、インド、台湾などの友好国と連携し、台頭する中国と対峙しなければならず、また、北朝鮮の非核化を進めなければならない、という、非常に厳しい状況に置かれています。

したがって、日本政府は貴重な外交リソースの100%を対韓外交に割くべきではありませんし、現状では、日韓関係については「積極的放置」も致し方がないと思います(それがいつまでも続いて良いとも思いませんが…)。

その意味では、安倍政権の現在の対韓外交姿勢が続くことについては、当ウェブサイトとしてはとりあえず歓迎したいと思っている次第です。

韓国側の甘ったれた認識はいつもどおり
さて、これに対して韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、なかなか興味深い記事がありました。

韓国大統領府「日本首相の交代政局が安定し次第に韓日交渉に努力」
―――2020.09.04 10:19付 中央日報日本語版より

これは、韓国大統領府の徐薫(じょ・くん)国家安保室長が3日、

「日本の首相交代時期を迎えて政局が安定し次第に膠着状態にある韓日間懸案交渉が進展できるように努力していくことにした」

などと述べた、とする話題です。

まるで安倍総理が日韓関係の改善の障害であるかのような言い草であり、日韓関係がこじれるに至った事情や事実関係を冷静に整理した者としては、大変不快な発言です。

ただ、それと同時に、韓国側で出てくる「韓日関係改善」という発言は、掛け声ばかりであり、具体性がまったくないという特徴もあります。

くどいようですが、1965年の国交正常化以来育まれてきた日韓関係は、日韓基本条約と日韓請求権協定を土台としているものであり、韓国自身が日韓請求権協定を壊す行動を取り続けていれば、日本が原理原則を捻じ曲げて譲歩するでもしない限り、いずれ日韓関係は破壊されます。

徐薫氏の発言からは、自分たちの国が日韓関係を壊そうとしているという責任感もいっさい感じられませんし、具体的にどう行動するのかも見えて来ません。

ただ、個人的な主観で恐縮ですが、結局のところ韓国という国は、「自分たちで作りだした問題を自分たちで片づけることができず、常に誰かの助けを借りなければ難局を乗り切ることができない」という特徴があるのだと思います。

そのように考えたら、徐薫氏の発言は典型的な韓国人のそれであり、何も不自然なところはないのかもしれませんね。

「外交は継続が大事だ」…菅氏、慰安婦合意破棄した文大統領を遠回しに批判

2020-09-07 13:34:39 | 日記
外交は継続が大事だ」…菅氏、慰安婦合意破棄した文大統領を遠回しに批判

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

16日に退く日本の安倍晋三首相の後任として有力視されている菅義偉官房長官が徴用賠償問題に関連して、1965年に締結された韓日請求権協定を守るべきだという見解を明らかにした。

菅氏は6日、産経新聞とのインタビューで、悪化した韓日関係に関連して請求権協定を取り上げ、「日韓請求権協定が日韓関係の基本だ。

そこは、きちんとこだわっていくのが当然だ」と答えた。

菅氏はこれまでの定例記者会見で、2018年の韓国大法院による徴用賠償判決は間違っていると反論してきた。

徴用問題は「最終的かつ不可逆的に解決された」とも話している。

菅氏は4日の毎日新聞とのインタビューでは、「外交は継続がものすごく大事であり、約束したことをきちっと果たし、そこから信頼関係が生まれる」と述べた。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領に直接言及してはいないが、2015年に韓日間で結んだ慰安婦合意を文在寅政権が事実上破棄したのに続き、徴用賠償問題を取りざたしていることについて不満の意を表したものと解釈される。


同氏は14日の総裁選を前に発表した政策集でも、

「機能する日米同盟を基軸とした外交・安全保障政策を展開する」「中国など近隣国との安定的な関係を構築する」としたが、韓国には言及しなかった。

菅氏は安倍氏の外交政策をそのまま踏襲し、文在寅政権が行き詰まっている両国関係を解消するための解決策を打ち出すべきだという見解を固守するものと見られる。

一方、菅氏は「外交経験がない」と批判されていることについて、「安倍首相とトランプ米大統領の日米両首脳の電話会談は37回のうち、同席していないのは1回だけだ。

ロシア、中国、韓国に関しても重要事項を決定するときは全部報告を受けている」と反論した。

菅氏は中国の習近平国家主席の訪日については線引きをしている。

同氏は「コロナ対策が最優先なので日程調整のプロセスに入ることは慎重にと思っている」と、年内の習氏の訪日については、否定的な見解を明らかにした。


朝鮮日報/朝鮮日報日本語版