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日英、「準同盟国」自衛隊・英軍、円滑化協定で共同演習、次期戦闘機も「共同開発」

2023-02-26 17:39:13 | 日記
日英、「準同盟国」自衛隊・英軍、円滑化協定で共同演習、次期戦闘機も「共同開発」


2023年01月13日

  • 日本経済ニュース時評英国経済ニュース時評

   
日英間で、「円滑化協定(RAA)」が結ばれた。自衛隊と英軍が、それぞれの相手国で演習できる内容だ。日英同盟の調印は120年前。再び、両国が大西洋と太平洋の安全保障で手を携えることになった。次期戦闘機も共同開発も決まった。日英のほかにイタリアも加わる。

次期戦闘機は、日本が開発主体となるが、他国への輸出も視野にある。これによって、日英伊は、次期戦闘機輸出を通して他国への外交強化できるというメリットが期待される。戦闘機を輸出すると、30年間程度は機体整備や部品供給面で密接な関係が維持できるという外交関係が生まれる。日英伊が、米国と連携しながら友好国づくりを行なえば、安全保障面でも大きく輪が広がるはずだ。

『日本経済新聞 電子版』(1月12日付)は、「『日本、インド太平洋のハブに』日英安保 識者に聞く」と題する記事を掲載した。

日本と英国は11日、自衛隊と英軍の往来をしやすくする「円滑化協定(RAA)」に署名した。昨年12月にはイタリアとともに次期戦闘機の共同開発を進めることでも合意した。進展する日英間の安全保障協力が両国関係やインド太平洋地域の安全保障環境にどのような効果をもたらすか、米欧の専門家に聞いた。

英国際戦略研究所ジャパン・チェア、ロバート・ウォード氏

日英伊の次期戦闘機の共同開発は、西側の安全保障の連合体づくりの一部分と捉えるべきだ。中国の軍拡による挑戦の規模は巨大で、米国もインド太平洋地域の安全保障の維持には複数の国が参加する必要があると認識している。

(1)「欧州各国の関心や軍事的な資源は、進行中のウクライナ危機に集中し、他地域への余力が制約される懸念もある。日本はこの共同開発により、英国やイタリアのインド太平洋地域への関与や関心が高まることを期待していると思う。ロシアや中国の動きを踏まえれば、日米同盟にとどまらない重層的な安全保障のネットワークは不可欠だ。そうした意味で、日本がオーストラリアに続き英国と円滑化協定を結ぶのは、この広大なインド太平洋地域で志を同じくする国が機動性を持って共同活動するための促進剤となる。日本にとって英国がこの地域で存在感を発揮しようとしている状況は好ましい。関係国で交渉中の環太平洋経済連携協定(TPP)に英国が加盟することも、英国にインド太平洋への関与を続けてもらう一つの要因になる」

日本が、安全保障面で欧州との関係を強化したことは画期的なことだ。日英伊は、海洋国家であり価値観が同一であることが関係性を安定化させるであろう。英国はTPPにも加盟する。23年中には結論が出る見込みだ。こうなると、日英関係は「隣組」という関係になる。これによって、中国へ安保面での抑止効果が期待できる。英国は、中国のTPP参加を「絶対阻止」と強い姿勢だ。

(2)「日本にとっては、フランスも円滑化協定の交渉相手となり得る友好国だと思う。英仏はともにインド太平洋地域に関心を持つ軍事大国だ。日本もこの地域の安全保障の安定に貢献できる国をできるだけ多く引き込みたいと思っているだろう。中国に台湾への軍事侵攻を思いとどまらせる抑止力を高めるためにも、こうした日本を軸とした安保協力の広がりが重要だ」

日本は、フランスとも円滑化協定を結ぶことを提案している。1月9日の日仏首脳会談で、2023年前半に外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2を開催する方針で一致した。これを契機に日仏間も安保面で緊密化するはずだ。

英王立防衛安全保障研究所プロフェッソリアル・リサーチ・フェロー、トレバー・テイラー氏 

日英伊の3カ国が、次期戦闘機開発に共同で取り組むという決定は驚くべきことだ。特に今まで日本は英国から装備を購入したことはあっても、このような性質の共同開発は米国以外のどの国とも行ってこなかった。

(3)「この計画は、日英伊の(防衛関連の)ビジネスのつながりを生み出す。一般的にこうしたプロジェクトの寿命は30年以上と長く、長期間にわたり官民の双方で人的に密接な関係と交流の増加をもたらす。これは3カ国の防衛政策にとって非常に重要な効果だ。米国がこの計画に参加しないことは大きな困難ではないし、米政府は3カ国の共同開発を興味深く見守るだろう。2035年までのスケジュールで新しい戦闘機をつくり上げることは、技術的にも経済的にも大きな挑戦となる。失敗に終わる可能性は非常に低いと思うが、計画の遅延やコストの超過の可能性は現実的に見込んでおかなければならない」

米国は、日本が広く欧州と安保面で協力関係強化を期待している。日英伊も次期戦闘機は2035年頃を目標にしている。下線部は、戦闘機輸出での副次的な外交メリットを指摘している。日英伊三ヶ国だけでなく、輸出先との関係強化という効果が期待される。

(4)「ウクライナ危機の状況や英国の軍備・財政の現状を考えると、英国が東アジアに展開する莫大な軍事資源を持っているとは思えない。しかし、ある国の軍隊が他国に駐留するための後方支援や法的な枠組みを規定する円滑化協定の締結は、日英双方の共同行動を容易にする重要なものだ。現行の安全保障秩序に友好的ではない国に対し、日米協力だけでなく、他の先進国もインド太平洋地域の安保のために協力しようとしている印象を与える点でも意義があるだろう」

下線部は、主として中国を指している。英軍が、日本領で演習しているとなれば、抑止効果になろう。

中国、「大慌て」親中国派が相次いで離反、米国の支援で鞍替えも「戦狼外交の破綻」

2023-02-26 15:45:04 | 日記
中国、「大慌て」親中国派が相次いで離反、米国の支援で鞍替えも「戦狼外交の破綻」

2023年02月26日

  • 中国経済ニュース時評アジア経済ニュース時評

   
中国はこれまで、自国の勢力圏拡大目的で欧米の影響が及びにくい国々を引き込んできた。だが、米国が経済支援体制を強めてきた結果、中国へなびいてきた国が距離を置くようになっている。中国の一帯一路事業が、「債務漬け」を招いたことも、中国警戒要因になっているのだろう。

『朝鮮日報』(2月26日付)は、「親中国家にも背を向けられる中国外交」と題するコラムを掲載した。筆者は、崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長である。

今年に入って中国外交は四面楚歌状態になっています。ウクライナ戦争で中国は中立でありながらロシア寄りの姿勢を維持しているため、セルビア、カンボジア、パキスタンなど親中として知られる国々も中国に背を向け、ウクライナ支持を宣言しました。南太平洋の島国では10年以上かけて親中ネットワーク構築を目指してきましたが、これもおかしな状況になっています。

(1)「南太平洋の島国は昨年1年間、米国と中国による外交戦争の戦場でした。ソロモン諸島を中心とする親中諸国が中国との安全保障協力強化を進めると、米国とオーストラリアはこれをけん制し熾烈(しれつ)な外交戦が繰り広げられました。フィジーはソロモン諸島と同じく中国に友好的な南太平洋の島国ですが、2011年に中国と結んだ警察協力協定の停止を宣言しました。昨年12月の総選挙で新たに就任したランブカ首相は1月26日、『フィジー・タイムズ』の取材に「中国の警察関係者は今後フィジー警察で働く必要はない」と述べました」

米国が、南太平洋諸国への外交的関心を薄れさせている虚を突き、中国は自国の勢力圏拡大へ動いた。米国は、南太平洋がハワイへ近いこともあり、ここへ中国艦船が出入りするような事態になれば一大事だ。そこで、日米豪の三ヶ国が集中的に南太平洋諸国への経済支援体制を組んだ。この成果が出て来たのだろう。

(2)「フィジーは、これまでこの協定に従い毎年警察官を中国に派遣して訓練を受けさせ、中国も警察の担当者をフィジーに派遣してきました。昨年9月にはフィジーに中国公安連絡事務所を設置することで合意しました。ランブカ首相は「フィジーの民主主義と司法システムは(中国とは)違うので、同じようなシステムを持つ国に戻る」「類似のシステムを持つオーストラリアやニュージーランドの警察がフィジーに滞在するだろう」と明らかにしました。フィジーは、昨年5月にも米国中心のインド太平洋経済フレームワーク(IPEF)への参加を決めましたが、これも中国外交に大きな打撃となりました」

米国は現在、南太平洋諸国へ外交機関も復活させている。常時、当該国の相談に乗って解決案を提示するなど、従来の無関心ぶりを100%撤回し「御用聞き」姿勢を取っている。豪州などが、具体的に支援する形だ。
(3)「中国にとってさらに打撃となったのは、セルビアなど親中諸国の態度が変わったことです。東欧の代表的な親中の国でロシアとも近いセルビアは1月中旬、ロシアの民間軍事会社ワグネルによる雇い兵募集を禁止しました。セルビアのブチッチ大統領はブルームバーグとのインタビューで「セルビアはロシアと昔から良い関係だったが、それはクレムリンの全ての決定を支持するという意味ではない」「(ロシアが併合した)クリミア半島とドンバスはウクライナの領土だ」と述べました」

中国は、東欧のセルビアへ接近していた。一帯一路事業をエサにしたものだが、肝心の経済支援がほとんどないことから、中国離れが起こっていた。約束したことを履行しないからだ。

(4)「セルビアは東欧で中国の一帯一路に協力する国の一つで、コロナの感染が広がった際には欧州で最初に中国製ワクチンを購入するなど、中国とも関係が深い国でした。ロシアによるウクライナ侵攻は非難しましたが、国際社会による対ロシア制裁には参加せず、中国と歩調を合わせてきました。そのセルビアが中国に背を向けたのです。セルビアは貿易額全体に欧州連合(EU)が占める割合が30%に達しているため、EU加盟を強く希望しています。つまりEU加盟に向け親欧米路線に転換したのです。ブチッチ大統領は「EU加盟がセルビアの道であり、他に道はない」との考えを示しました。中国は親中諸国の態度が変わったことについて「米国など欧米諸国が政治的に操っている」と主張していますが、内心は焦っているようです」

セルビアは、EU加盟を希望している。中国へ接近しても経済的なメリットがないことから、隣接のEUへ加盟できれば、経済的利益は飛躍的に増えるのだ。中国の経済力が落ちれば、自然発生的に中国と距離を置く国が増えるであろう。


韓国、「深刻」低出産問題、産業界は15年後の労働力不足懸念「連鎖倒産が現実化」

2023-02-26 14:12:44 | 日記
韓国、「深刻」低出産問題、産業界は15年後の労働力不足懸念「連鎖倒産が現実化」


2023年02月26日


  • 韓国経済ニュース時評アジア経済ニュース時評


   
韓国は、22年の合計特殊出生率が0.78まで低下して、企業も深刻に受け止めている。生産年齢に数えられる15年後の労働力不足が、現実にイメージできるようになったからだ。何と言っても、文政権5年の間に低出産対策を何ら取らなかったことが、事態を深刻にさせている。もはや対策としては、「ツー・レート」(遅すぎる)である。

『wowkorea』(2月25日付)は、「韓国経営界、高齢化が深刻『15年後の連鎖倒産』を懸念」と題する記事を掲載した。

韓国の産業現場では、「低出産」による若い労働者減少のため「高齢化」が急速に進んでいる。「今よりも働く人がいなくなる場合、企業の連鎖倒産が現実化するおそれもある」という懸念の声が出ている。
(1)「韓国貿易協会のチョン・マンギ副会長は最近、韓国の新聞社『ヘラルド経済』とのインタビューで「『低出産問題に大韓民国の存亡がかかっている』という状況まで迫っている」とし「問題を問題として認識するレベルではなく、ただちに解決法を見出さなければならない状況だ」と診断した。つづけて、「社会的に出産できる雰囲気と環境が築かれなければ、これからは働く人がいなくなるしかない」とし「若い世代の出産忌避(きひ)現象を回復させるため、企業は共に立ち上がらなければならない」として、変化を求めた」

韓国は、今になって大騒ぎしているが10年遅かった。合計特殊出生率が、ここまで低下すると打つ手がないのだ。最大の問題は、年功序列・終身雇用を労組が頑として譲らずに来たことだ。労働市場の流動化が進んでいれば、雇用も改善されていたはず。労組のエゴが、韓国を破滅に導いているといっても過言でない。
(2)「企業による「出産率引き上げ」のための対策も、次々と打ち出されている。「ESG(環境・社会・支配構造)経営」の重要性が台頭する中、大企業を中心に「持続可能」という脈絡で社員の福祉制度を支援しようとする試みが注目されている。韓国最大の鉄鋼メーカー「ポスコ」は最近、職場内の保育園のうち2か所を自社ではなく協力企業の職員のこどものために開放した。授業料から食費までの全額支援は基本である。現在51か所の協力企業の職員が、ポスコグループの保育園を利用している」

企業が、保育所を無料にしている。美談であるが、労組の主張する年功序列・終身雇用を破棄しなければならない。ユン政権は、年功序列・終身雇用を打破した企業にインセンティブをつける方針である。20代で結婚できる賃金を得られるようにするには、年功序列賃金を破棄して、賃金を押上げなければならないのだ。

(3)「現代自動車グループは昨年8月、現代自動車グループ本社の保育園を増築した。2つの建物を連結し、これまでの収容人数であった62人から約1.7倍の計107人まで園児数を増やした。さらには柔軟勤務制と育児休職の使用も、積極的に奨励している。これらは「“仕事と家庭”両立」のための努力である」

下線のような小手先のことでは、出生率は改善しない。雇用制度自体を変えて、20代で結婚・出産できる経済的な環境を整えなければ、出生率は改善しまい。

(4)「雇用労働部(省)が発表した「雇用形態別労働実態調査」によると、韓国の全労働者の平均年齢は2021年43.4歳まで上昇した。2009年の38.5歳から2019年には42.6歳と、毎年上昇している。統計庁が集計した2023年度1月(末日基準)の求職可能年齢(満27歳)の人口数は、70万5763人であった。これは、1999年に満27歳で現在52歳である人口数91万6319人より、20万人以上少ない数値である」

韓国の平均年齢は、2021年で43.4歳まで上がっている。2009年は、38.5歳であった。この間11年で4.9歳の上昇である。22年の合計特殊出生率が0.78であったことから言えば、これからの10年は、駆け足の上昇になろう。

(5)「『低出産』により、『高齢化』はより深刻化するものとみられる。実際、2035年に満27歳となる現在満15歳の人口数は49万9150人と観測された。さらに2047年に満27歳となる現在、満3歳の人口数は30万4481人で、これは現在満27歳の半数にも満たない数値である。KDB未来戦略研究所は「人口高齢化の進行速度が加速していることにより、企業労働者の平均年齢も急速に上がっている」とし「高齢化が急速になるほど、企業としては賃金負担が一層加重され、これは経済・社会的に大きな衝撃として迫ってくるだろう」と分析した」

下線のような問題が起こる以上、韓国では年功序列賃金を継続不可能になる。早く、成果給にして生産性に見合った賃金体系に変更することだ。年功序列・終身雇用では、定期的に希望退職を募るという不合理な結果を招く。頭を切換えることだ。


280兆ウォン投入も「世界最低」…韓国出生率0.78人ショックに尹大統領が出したカード

2023-02-25 18:17:28 | 日記
280兆ウォン投入も「世界最低」…韓国出生率0.78人ショックに尹大統領が出したカード

2/25(土) 11:57配信

22日、光州(クァンジュ)北区庁の状況室で女性保育課女性親和低出生チームの職員が年度別地域別出生率を比較した資料を見ている。 

韓国の昨年の合計特殊出生率が過去最低の0.78人となった中、大統領室が来月、低出生総合対策を発表する。

経済協力開発機構(OECD)加盟国で最低の合計特殊出生率を高めるために従来の対策のうち効果が低いものはなくし、実効性を中心に再確立する方針だ。 

大統領室の関係者は24日、聯合ニュースに「従来の百貨店式の対策ではなく、効果があるものを中心に『選択と集中』をする計画」と話した。 

「育児在宅勤務保障」などの案が大統領室の内部で言及されている。

子どもの通園時間や育児環境を考慮した「午前在宅勤務」などさまざまな在宅勤務活性化制度を設けるということだ。

 16年間に約280兆ウォン(約28兆円)の低出生対応予算が投入されながらも出生数は10年前の半分ほどの25万人以下に減少したのは、仕事・家庭の両立が難しい硬直した労働環境という本質的問題が解決されていないためという判断からだ。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も大統領候補当時に「柔軟勤務制」の保障を公約し、「育児在宅を認める企業に多様なインセンティブを与える」と強調していた。 

不妊治療費支援、出産休暇・育児休職期間の延長および実質的保障案なども議論されると予想される。

所得と関係のない不妊治療費支援、有給不妊治療休暇期間の拡大(3日間から7日間)、産後うつ病治療を含む産後ケア国家支援は、昨年の大統領選挙で国民の力が公約集に盛り込んだ内容だ。

また「父母給与」などのような従来の対策を維持しながらも、新たな現金性支援対策は控えるという。

 関係者は「少子化問題に加え、特別な対策がなかった高齢社会対策も講じるべきという認識もある」と伝えた。

人口の変化への対応に関連した部処全体レベルの計画を審議する大統領直属の低出産高齢社会委員会も活発になるとみられる。

低出産委委員長の尹大統領が3月に会議を自ら開く方針という。

 大統領室の関係者はこの日、「国民も関心が大きいだけに、計画された日程の操り上げが可能な案、包括的対策を出せる案を考えている」と明らかにした。 

低出産委の会議には各部処の長官が委員として出席する。住宅供給、移民政策、地域均衡発展案なども共に議論の対象になると予想される。

救護兵の父がウクライナの最前線で見たのは置き去りにされたロシア兵 避難した娘が描いたのは故郷の風景

2023-02-24 18:03:46 | 日記
救護兵の父がウクライナの最前線で見たのは置き去りにされたロシア兵 避難した娘が描いたのは故郷の風景


2023年2月22日 06時00分

ロシア侵攻前年の2021年8月、フメリニツキーの自宅で父セルヒーさん(中央)の50歳の誕生日を祝う(左から)ナタリアさん、母ルドミラさん、妹アナさん=ナタリアさん提供

<侵攻1年 家族と兵士④>

 父は毎日、負傷した兵士たちのうめき声を聞いている。置き去りにされた敵のロシア兵が助けを求める悲鳴も。ロシアが攻勢をかけるウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムト。この戦略的要衝で、ナタリア・ゲラシムチュク(33)の父セルヒー(51)は救護兵として任務を続ける。
 「父は詳しく語らないが、バフムトは非常に危険な状況。心配でたまらない」。英南部マルムズベリーで避難生活を送るナタリアは、朝晩欠かさず父の無事を祈る。「父は志願して軍に入り、最前線に派遣された。とても誇りに思う」。努めて笑顔で話すナタリアの目に、涙がにじんだ。

 ナタリア以外の家族はウクライナ西部の故郷フメリニツキーで暮らす。女性や子どもの多くが国外に避難する中、医師の母ルドミラ(52)は父のために国内に残る。

祖父母も慣れ親しんだ家から離れるのを嫌がった。

妊娠していた妹アナ(26)は10日に元気な男の子を産んだ。

分娩ぶんべん中に市内に爆弾が落ちたが、妹は警報の中で医師に励まされ、無事出産したという。ナタリアは「初孫を早く父に見せてあげたい」と話す。

ウクライナ防衛の最前線で戦うナタリアさんの父セルヒーさん=ナタリアさん提供


 父は侵攻前は運転手だった。かつて車の事故で脊椎を損傷し、医師から一生まひが残ると言われたが、奇跡的に回復した。侵攻直前には脚を骨折した。だが迷わず「軍に入る。家族と国を守る」と宣言した。ナタリアは行かないでとは言えなかった。「ロシア軍が来るのを黙って待つわけにはいかない。父が行かなければ他の人が行くことにもなる」。家族全員で父の決断を尊重した。
 ギプスが取れた直後に入隊。救護兵としての訓練後、南部の激戦地だったヘルソンへ派遣された。それからバフムトへ。最前線で父が見たのは、負傷して動けなくなったロシア兵たちが置き去りにされ、苦痛と恐怖で叫ぶ姿だった。ナタリアは「ロシアは自国の兵を見殺しにしている。兵士を人間ではなく、ただの肉の塊と見ている」と憤る。
 ナタリアは侵攻前は故郷で手作りの宝飾品販売を営んでいた。経営は順調だったが、侵攻で全てが変わった。「戦争中に宝飾品などとても勧められない。女性たちはきらびやかに人生を楽しむ気分にはなれない。私自身も」。英国在住の叔母を頼り、侵攻直後に渡英。全く話せなかった英語を必死に学び、ウエートレスとして働いた。

戦争前の平和なウクライナの空を描いたというナタリアさん。英国での初個展の夜は父を思って毎晩泣いた=13日、英マルムズベリーで、加藤美喜撮影

 不安で押しつぶされそうな心を静めてくれるのが油絵だ。故郷の風景を描き、今月には初の個展をマルムズベリーで開いた。多くの人が購入してくれ、収益は生活費とウクライナ軍への寄付に充てた。
 個展では来場者に父や故郷の話をするのがつらく、毎晩部屋で泣いた。それでもウクライナを支援してもらいたい思いから、自らの経験や家族を語った。父はナタリアの無事と活動を喜び、声援を送ってくれる。
 望んだ人生ではない。先は全く見えない。空を見上げて、いつも最前線の父や故郷の家族を思う。「いつかきっと、また一緒に暮らせる」。そう信じて、毎日を生きる。

(マルムズベリーで、加藤美喜)=文中敬称略
                                                      ◇ 

 ウクライナでは今も多数の兵士が戦場に立つ。その帰りを待つ家族らの言葉から、侵攻1年を振り返る。