お絵かき教室の後、庭から切ってもらったカルドンを抱えてりえさんのお宅を失礼した。
ちょっと茎がベトベトするからと新聞紙に包んでもらった鬼あざみの花は、取り寄せた種から大きく育ったのだという。
花々は勢いよく夏の庭の四畳ほどを占めて私たちの背より高く咲き始めていた。
帰りに寄った文房具店で画板と消しゴムのお会計時に小さなゾウムシが歩いていたのは、やはり花の包みから逃げ出したのか。
あの楽園のような庭にいたのに、駅ビルに連れてきてしまって申し訳なかった。
りえさんに個展の案内をもらい、絵本の題名みたいな画廊カフェを訪ねたのは去年だった。
何でどう描いたのかさっぱりわからない絵。淡いのに深くて、私の頭の裏側が反応する。いったいどうしたらこんな絵が描けるんですかと聞いたら、普通のえんぴつとか色えんぴつで描くんですよ。今度お教室を始めるのでよかったら来ませんかと誘ってもらった。
ずいぶん前だけどカフェの前に邪魔にならないよう気をつけて自転車を止めたのを覚えてる。
あの時あの個展に行かなければ、ゾウムシは今もまだ緑と花にあふれたあの庭にいたのだろうか。