今朝は、超音波検査装置のデモ。椎骨動脈の血流をカラードップラーで観察できるタイプ。めまいに椎骨動脈の血流が関係することもあるので、興味深いのですが、その検査を必要とする患者さんの数と、器械の価格を考えると、なかなか手が出ません。優れた装置なのですが、車よりずっと高価です。
そのあと、大エルミタージュ美術館展を見に国立新美術館へ。美術館内のレストランでランチ。昨夜に続いて、カロリーオーバーですが、夜を軽くすれば、大丈夫でしょう。体重はこの10週間で、順調に10kg減っています。
大エルミタージュ美術館展は、超有名な画こそ来なかったですが、16世紀から20世紀初頭まで、イタリアルネッサンス、フランドール/オランダ、フランスの新古典主義、印象派ーポスト印象派と分かりやすく整理された展示で、けっこう粒ぞろいで、見応えがありました。
実はエルミタージュには一度、1991年12月にソ連が崩壊して間もなくの頃に行っています。スウェーデン留学中で、数日の休暇を利用して、スウェーデンの旅行社のツアーに申し込んで、家族で出かけたのです。
レニングラード(現サンクトペテルブルク)の空港に着くと、国内では物資が手に入らないのでしょう、外国から日用品を山のように買い込んで帰って来た大勢の人たちでごったがえしていて、外に出るまで3時間近くかかりました。空港の外で、ロシアのガイドさん(ソ連の国営旅行社インツーリストがまだそのまま残っていました)が待っている予定でしたが、連絡を取るすべも無く、帰ってしまっていたらどうしようと心配しましたが、ちゃんと待っていました。聞くと、3時間待たされるなどは、ここでは当たり前とのことでした。
私たち家族4人と、スウェーデン人の家族がもう一組、それとそれぞれのガイドさん、合わせて10人程度だけが乗った、ガラガラの大型観光バスで、観光に出発。街にはレーニン像がまだ立っていましたが、あれは来週倒すんだと、ガイドさんが教えてくれました。
冬ということもあって街は灰色一色で、商店を覗いても、商品が少なく棚はがらがらの状態でしたが、外国人向けのホテルやレストランでは、食べるものはちゃんとありました。食事の時間には、ガイドさんの同僚が、用もないのに、いつもひとりかふたり同席しました。役得ということなのでしょう。彼らの食事代も、我々の払った旅行代金に含まれているわけですが、当時ルーブルの価値は、想像がつかないぐらいどんどん下落しており、ホテルのコーヒー1杯の代金が日本円の1円ぐらいでしたので、大した金額ではなかったはずです。
ここでもうひとつ印象に残ったことがあります。メニューに鶏のドラムスティック(骨付きもも肉を中央の関節で切り離した下の足の部分)の料理があり、これはアメリカからの食料援助だということでしたが、ロシア人はアメリカに感謝するどころか、もも肉全部でなく小さなドラムスティックだけ送ってきたアメリカはケチだと、これをブッシュの足と呼んで笑いの種にしていました。援助する側にも目的があるのだから、別に感謝する必要はないということなのか、経済危機の中にも新しい時代に期待を膨らませる、ロシア式のユーモアだったのかは、分かりませんでした。
あるレストランでは、TBSだったと思いますが、日本のテレビ局から取材に来た人たちに声をかけられました。この混乱期に、小さな子連れの日本人がいたので、何かいわれがあると思われたのでしょう。ただの観光客だと分かると、この大変なときにこんな小さな子を連れて来て観光とは非常識なやつだ、という顔をして、すぐ行ってしまいましたが。でもこのときのレニングラードは、物資はなかったですが、治安はしっかりしていました。官僚機構と軍が、ソ連からそのまま引き継がれたからだと思います。
子供たちのために、サーカスにも行きましたが、その完璧なパフォーマンス、芸の見事さ、才能がある者が子供のころから必死に訓練して初めて到達できるレベルは、ヴァイオリニストやバレリーナと同様、ロシアならではというものでした。合間に売店で子供にコカコーラを買ったのですが、周りの地元の子供たちが皆じっとこちらを見るので、何事かと思ったら、コーラなどは外国人しか買うことが許されておらず、彼らには絶対に手に入れることができないのだということでした。
エルミタージュに着いたら入り口には長蛇の列、これでは入るまで1−2時間待ちかと思ったら、ガイドさんはその列をサッサと追い抜いて私たちを入り口まで連れて行き、受付の人に上から目線で一言何か言って、私たちを中に入れました。ガイドさんのその態度には、インツーリストは役人であり、ソ連では役人がいかに威張っていたかを、垣間みたような気がしました。
そして、肝心のエルミタージュで何を見たかと言うと・・・実はよく憶えていないのです。ガイドさんの英語を聞き取るのと、子供たちの世話に気を取られ、展示品に集中できなかったのでしょう。せっかく行ったのに、全く憶えていないので、日本のこういう展覧会はすごく混むので敬遠することが多いのですが、エルミタージュ展だけは見たかったのです。