今日も7月1日(日曜日)に拾ったネタです。この日、今年のE-ライン・ビューティフル大賞に、武井咲さんが選ばれたというニュースでした。E-ラインとは、鼻の頭からあごの先端を結んだ線で、歯並びがよく横顔がきれいな人は、この線が美しいとのことで、毎年美しい女性が、日本成人矯正歯科学会によって選ばれるのだそうです。
E-ラインとは、はじめて知りましたが、私がこのニュースでまず思い浮かべたのは、頭部のレントゲン写真を撮るときの目安となる、様々な基準線のこと。次に思い浮かんだのが、やはり耳鼻科医だった、父の博士論文です。
父は世に知られるような業績を残したわけではなく、父の名前をググっても、生前故郷の日出町の万里図書館に多くの書籍を寄贈したことで、2010年に表彰されたことと、”先天性外耳道奇形の分類について”という論文で、飯田太先生らと共著者になっていることぐらいしか、出てきません。
その父の1962年の博士論文は、鼻の形に関するもので、当時住んでいた水戸の地方紙に、父が博士号をとったニュースと、美人の鼻とはどのような形かという記事が、けっこう大きく出ていたのを、よく憶えています。でも、父の論文そのものは、自分が耳鼻科医になってから、一度読んだはずなのですが、その内容を憶えていませんでした。
父の論文が載った耳鼻咽喉科展望誌も、今は電子化されて簡単に検索でき、オンラインで論文を読むこともできます。さっそく検索してみると、”外鼻形態に対する態度の研究”という論文でした。見ると、本当にどのような形の鼻が美しいと感じられているか、という研究でした。若い頃の学問的興味の対象が、美人の鼻であったというのは、父らしいような気もします。
以前は日本でも、外鼻の手術も耳鼻科医が行っていました。私も、斜鼻(外傷などで大きく曲がってしまった鼻)の手術などは、行っていた時期もありましたが、現在は形成外科の領域となって、耳鼻科医が行うことは、ほとんどなくなっています。上記、”先天性外耳道奇形の分類について”の父と共著の飯田太先生は、その過渡期に活躍され、耳鼻咽喉科医から耳鼻科領域の形成外科の専門家となった方です。2000年出版の新図説耳鼻咽喉科・頭頸部外科講座という本で、専門家でもない私が鞍鼻(外傷などで、鼻がつぶれた状態)と斜鼻の項を書くことになったのも、耳鼻科で外鼻の手術をする先生がいなくなっているということだと思います。
私の若いころを最後に耳鼻科の手を離れたもうひとつの領域に食道異物があります。胃カメラがない頃は固い金属の内視鏡を使って、耳鼻科医が食道に引っかかった異物を取っていました。父も九州で開業したとき、当時の多くの耳鼻科医がそうであったように、耳鼻咽喉科とともに気管食道科も標榜していました。私が医師になったころにはもう胃カメラはあって、それを使って食道異物を取るようになっており、内科や外科の先生、もっと後年には内視鏡科という科もできて、だんだん耳鼻科医が関わることが少なくなっていきました。しかし、今でも食道異物の話題が出たりすると、若いころ、救急の患者さんの異物で苦労したことを思い出したりします。