新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
ニジイロクワガタについて
ニジイロクワガタ
Phalacrognathus muelleri(MacLeay,1985)
分布:オーストラリア北東部,ニューギニア.
体長:♂36.8~68.0mm ♀25.5~36.4mm
↓ 飼育個体
日本での歩み
ニジイロクワガタは(以下ニジイロ)世界一きれいなクワガタムシといわれ
昆虫店やペットショップだけでなくホームセンターでも見かける人気種です。
鈴木智之・福家武晃著.2002.
「世界のクワガタムシ 生態と飼育」によると
ニジイロは主に標高700m以上の熱帯山地林に生息しており
幼虫は多湿な白枯れから発見できたそうです。
また、成虫は夕暮れ時の灯火にも稀に飛来するそうです。
1999年、外国のクワガタ生体輸入解禁はこのニジイロから始まりました。
輸入された野外生体は非常に高価で、当時の生体販売リストには
1ペア48万円の価格が表示されていました。
しかしながら、このリストには「2年ぶりの再上陸」とあり
1997年にはすでに日本に入っていたことを示唆していました。
また、この輸入解禁を境に世界各地から様々な種が正々堂々と
日本にやってくるようにもなりました。
当時は今ほどはインターネットが普及しておらず
昆虫販売の一つの手法として、生体の販売リストが郵送・FAXで届く時代でした。
もちろんPCを使った情報発信もされてはいましたが
アナログな情報手段が十分通用する時代でもありました。
↓ファイルしたほとんどの店が今は存在しない(1998〜2004年分)
↓ 参考:1999年
↓参考:2000年ニジイロは飼育第2代目まで進んでいる
当初から比較的容易に繁殖できたニジイロの子孫たちは
あっという間に国内で繁栄し
2003年には幼虫3頭セットで2500円というリストまで出てきました。
ちなみに2000年「ムナコブクワガタ材割成虫ペア」は45000円となっていました。
↓ 短期間で飼育個体の流通量が増え、価格は下がってきた
あれから20年ほどが過ぎ、現在では野外個体の入荷は事実上ありません。
当時の野外個体から派生した子孫たちは、あるものは変わらず
あるものは体や複眼の色を変え、日本で生き続けています。
↓ グリーン系
色について
ニジイロのあのきれいな体色は
体にあたった光がクチクラの層膜で干渉と回折などを起こして見える色
「構造色」といわれています。
つまり、光の反射によって見える色ということになります。
ということは、今流行の紫系やブルー系といった系統は色素が遺伝しているのではなく
構造が遺伝しているということでしょうか?
となると、仮にクチクラの層に変化を起こしたら
見える色も変化するかもしれないと考え
思い付きの検証を行いました(実施:2019.12.19)
↓ 一般的な体色(飼育個体)
検証に使用したサンプル(標本)は、昨年末にKさんから提供していただきました。
Kさんありがとうございました。
↓ ノーマルタイプの♂サンプル(Kさん提供)
検証の方法は、上翅を磨き(削り)色の変化を見るというものです。
まず、最初に思い付いた研磨剤は金属磨きの代名詞「ピカール」です。
早速上翅の赤い部分をを磨いてみることにしました。
↓ おなじみの「PiKAL」
↓ 片方はマスキングして保護(2019年12月19日)
結果は、一生懸命磨いたつもりでしたが歯が立たないのか?
特に色の変化は感じませんでした。
↓ 赤い部分を磨いてはみたが・・・(左上翅)
そこで今度は少々乱暴ではありますが
カッターの刃物で少しずつ削ってみることにしました。
層は極めて薄いらしいので注意しながら
上翅の赤い部分をなでるように削っていきました。
慎重に上翅をけづっていくと赤みは少しくすんで見え
また若干黒みを帯びたように見えましたが
これは、上翅のつやつやした表層が剥がれたことによるものかもしれません。
更に作業を続けると赤みは次第に薄れ
とうとう深層部の繊維質まで到達してしまい
最初に期待したような色の変化は感じ取ることができませんでした。
また、上翅側縁の緑色部なども削ってみましたが
非常に硬質で、組織が欠けうまくいきませんでした。
↓ 左:研磨 右:無加工内側
↕ 上翅深層部は繊維状
今回の検証方法は、繊細な多層膜を変化させるには
有効な手段ではなかったかもしれませんが
少なくとも検証したニジイロの上翅赤色部はクチクラの奥深くまで認められました。
↓ 中央の白み部は上翅深層部の繊維質
↑ 赤みは深層部まで続く
一般にニジイロは「構造色」といわれていますが
もしかしたら一部色素も含んだ「混合色」なのかもしれません。
そのあたりのことをインターネットでも調べましたが
残念ながら、探し出すことはできませんでした。
採卵
昨年の12月にニジイロの青系メスに深い青系オスをかけた個体を入手し
よく発酵したマットを使い産卵セットを組んでいました。
昨日はその割り出しを行いました。
↓ 母虫 後翅側縁あたりに青色(室内LED電灯下)
↕ 上翅側縁部はほんのり青い
↓ 後胸の複眼近くに弱い青
↓ 自然光 一般的な色彩個体のほうが綺麗に見えた
↕ 自然光で見てもくすんだ色合い
↓ 産卵セットの様子(2019年12月5日)
↓ セットから1か月経過
↕ 卵と幼虫は底部周辺の硬詰めしたところに多かった
↓ 卵22個 初齢幼虫17頭 計39
↓ マットで保管
↓ 母虫は健在
最後に
今回の記事を書くにあたり
手持ちの過去の生体リストを入念にチエックし、資料としましたが
限られた範囲での調べにつき認識の違いや明らかな誤りなどありましたら
遠慮なくご指摘ください。
生体リスト調査総数:1998~2004年まで177部
参考文献:
鈴木智之・福家武晃.2002. 世界のクワガタムシ生態と飼育.
株式会社環境調査研究所.
藤田宏.2010.世界のクワガタムシ大図鑑6.むし社.
新年早々風邪で声が枯れて仕事にならない状態です。こよみさんは大丈夫でしょうか?
ニジイロの色については興味深いですね。私も以前ノーマルから飼育し、赤、緑、そこからブラックへと累代してみましたが、今となってはノーマルが1番綺麗だと感じ、そのうちノーマルで大型作出をしたいと考えております。最近は案外本当にノーマルな色は少なく感じますね。色が何に由来するのかわかりませんが、人間だとメラニンの量ではなく大きさによって黒人や黄色人種の色が決まるのでニジイロにも当てはまるのか気になります。
風邪、大丈夫ですか?
私は口内炎でチョコラBBを飲んでいます(>_<)
改めてニジイロを見るとやっぱりノーマルはきれいですね。
「虹色のニジイロ」なんかややこしいですが・・・
今回採れた幼虫が成虫になったらもう一度色の検証してみます。
羽は思っていた以上に頑丈で、削っていくと繊維を編み込んだような基盤が出てきて驚きました。