2020年8月2日(日) 私の女房の実家である新潟市の老舗蕎麦店”むらた”が先月7月25日に店を閉じた。 これは昨年から決めていたことで、新型コロナの影響とは別の意味での決断である。 3代目の義兄は、加齢と腰痛のため仕事を続けることが困難になってきたこと、長男がそば粉や小麦粉アレルギーで、体質的に跡を継ぐことができないこと、その長男と同居する2世帯住宅を建てる予定になっていたことなどによって、このタイミングで店を閉じることになった。 この蕎麦屋は、昔は県庁、今は市役所の職員、医学部の学生や大学病院の医師や職員など、古くからの常連客が多い。 閉店日が近づくにつれて開店前から長蛇の行列ができたそうだ。 私たちが食べに行った閉店3日前も、ソバが品切れとなり、何とかギリギリありつくことができたような状況だった。 昔、長男が生まれた時、私も女房の実家に居候させてもらっていたことがあった。 その時は毎日ソバを食べさせてもらったが、全く飽きることはなかった。 そのソバが食べられなくなるのは非常に残念だが、義兄夫婦の体のことを考えると、やむを得ない決断だったと思う。 初代、2代、3代とも頑固な一徹職人だった。 マスコミの取材は、一切受けつけず、常に常連さんを大切にする店だった。 かつて、なぜマスコミの取材をかたくなに拒むのか?を尋ねたことがあった。 その答えは、「マスコミに出れば客は増えるだろうが、その分常連のお客さんに迷惑がかかるから」ということだった。 単なる頑固ではなく、常連客を大切にする、まさに老舗の重みのある言葉だった。 今日は取り壊す前に写真を撮っておこうと思い立って女房の実家に出かけた。 しかし、残念ながらもうソバは食べられない。
〈今なら登録文化財になるほどの古い木造建築物だが、今月中に解体されてしまう〉