これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2012年4月に掲載されたものである。
2012年8月以降については、新聞発行をリアルタイムでフォローしながら適宜まとめてこのブログで紹介している。
2012年4月2日
一望の荒地と化しし汚染の地の庭にけなげに水仙の咲く
(東京都)反杭螢子 (高野公彦選)
きっちりとそと遊び終える一時間日課となりぬふくしまの子は
(本宮市)廣川秋男 (永田和宏選)
廃炉まで四十年の道程を今日生まれ来る子は歩みゆく
(福島市)澤正宏 (馬場あき子選)
フクシマに生きのびし牛三百頭放射状にならび干草を食む
(堺市)木村陽子 (馬場あき子選)
終わりなく始まりもなくフクシマは苦しみ探しこれからもまた
(郡山市)渡辺良子 (馬場あき子選)
底抜けに蝌蚪明るかり原発地
(いわき市)馬目空 (金子兜太選)
2012年4月8日
基準値を超えてセシウム検出とう野兎のこの冬を思えり
(山形市)渋間悦子 (馬場あき子選)
原発に働く人らで賑はえるまぶしき夜の街はまぼろし
(いわき市)矢内松美 (高野公彦選)
ふきのとうごめんな喰つてやれなくて
(須賀川市)伊藤伸也 (長谷川櫂選)
2012年4月16日
「おれたちはただのマウスよ」南相馬の放射能浴びし若きらは叫ぶ
(平塚市)三井せつ子 (永田和宏選)
なほ避難われを悲しむ山桜
(横浜市)荒川澄 (金子兜太選)
原発に耕土失ふ春の惨
(厚木市)斎藤正弘 (金子兜太選)
(写真は記事と関係ありません)
2012年4月23日
公魚(わかさぎ)の釣るは可食ふは不可といふセシウムの来て湖のさはがし
(前橋市)荻原葉月 (馬場あき子選)
2012年4月23日
フキノトウツクシタラノメウドヨモギワラビゼンマイ摘めぬ春は来
(白河市)金沢美香 (高野公彦選)
芭蕉さま今の五月雨毒まじり
(久喜市)三餘正孝 (金子兜太選)