かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発事故はどう詠まれたか:朝日歌壇・俳壇から(事故後1年3ヶ月の頃)

2013年11月06日 | 鑑賞

 これは、朝日新聞の投稿欄「朝日歌壇・俳壇」に掲載された短歌と俳句の中から、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉溶融事故に関連して詠まれたものを縮刷版から抜き書きしたものである。
 原発事故の発生時から2012年7月までの期間について順次抜き書きを進めていて、今回は2012年6月と7月前半2週に掲載されたものである。
 2012年7月後半以降の抜き書きは、新聞発行をリアルタイムでフォローしたブログ記事「原発を読む」シリーズにまとめてある。

 

2011年6月4日

「味よりも見栄えと安全が売れてます」直売場に農夫は嗤ふ
     (ひたちなか市)篠原克彦 (高野公彦選)

日本の原発すべて止まったとその夜のニュース詳しかりけり
     (フランス)松浦のぶこ (永田和宏選)

除染せし校庭に子ら駆け出して運動会湧く若葉風かな
     (福島市)美原凍子 (馬場あき子選)

草餅にフクシマの野を思ひけ
     (八王子市)樋口雄二 (長谷川櫂選)

 

2012年6月10日

桃の花咲くふるさとのふくしまは雪占(ゆきうら)うさぎのあらわるる頃
     (神栖市)寺崎尚 (永田和宏選)

原子炉を抱えし空母入り来るを為すすべもなく丘に見ている
     (横須賀市)梅田悦子 (馬場あき子選)

東京は疑心暗鬼の梅雨重し
     (清瀬市)峠谷清広 (金子兜太選)

 

2012年6月18日

原発はなかったけれど明るかった修学旅行の東京のネオン
     (長野県)小林正人 (馬場あき子選)

空赤く原発燃えて放射能だ逃げろ―と叫ぶムンクの「叫び」
     (新潟市)丸山一 (高野公彦選)

 

2012年6月25日

電気もない水上勉の生家があった大飯の村で原発稼動
     (滋賀県)木村泰崇 (高野公彦選)

原発に悩む下北山背吹きかすむ大地に風車が回る
     (青森市)清藤菊江 (馬場あき子選)

除染すみ白砂まぶしき公園にパンダと河馬の遊具置かれる
     (取手市)緑川智 (馬場あき子選)

フクシマから何学びしや夏期講座
     (船橋市)窪田空華 (長谷川櫂選)

 

(写真は記事と関係ありません)

 

2012年7月2日

「メ」か「ハ」か貴方はどちらと思います――原子力は人類カイ〇ツ装置
     (宮古市)金沢邦臣 (高野公彦選)

アユ・ウグヒ阿武隈川にセシウムの検出されて瀬音さびしき
     (福島県)谷口修作 (馬場あき子選)

この国はもっと小さくなってゆく誰も住めない地域が増えて
     (宇都宮市)渡辺玲子 (佐佐木幸綱選)

蟻地獄原子炉に火を入るるてふ
     (神奈川県二宮町)松井恭子 (長谷川櫂選)

 

2012年7月9日 

3・11の原発避難のわれあの短歌(うた)ニューヨークの大聖堂に声あげて読む
     (東京都)反杭螢子 (佐佐木幸綱選)

除染せし柔肌の土の公園にはやタンポポの小さき黄の花
     (福島市)斎藤一郎 (馬場あき子選)

山は荒れ田畑に何も作れぬを知らずに出たクマ民家をのぞく
     (福島市)澤正宏 (高野公彦選)

セシウムの雨に濡るるなかたつむり
     (久慈市)和城弘志 (金子兜太選)