朝日新聞への投稿短歌・俳句で「原発」に関連して詠まれたものを抜き書きした。
大衆をいじめいじめて政治家は福島を捨て東電を取る
(長岡京市)寺嶋三郎 (3/10馬場あき子選)
メダリストに「自分は無力」と言わしむる三年経っても仮設住宅の国
(川崎市)宮尾桂子 (3/10 佐佐木幸綱選)
我が県のすべてが除染できるのかバケツと箒と熊手とスコップで
(いわき市)馬目弘平 (3/17 佐佐木幸綱選)
原発の大事故見たか鱩(はたはた)の貌もムンクの叫びに似たり
(青梅市)津田洋行 (3/17 野公彦選)
ユメカサゴ漁(と)られて海に返されてもうこの国に近づくなかれ
(福島市)美原凍子 (3/24 馬場あき子選)
胴体に押されしぶしぶ穴を蛇放射能満つ荒野へ出づる
(いわき市)馬目弘平 (3/24 馬場あき子選)
啓蟄だね今年も村は無人かね除染は駄目かね出たくはないね
(いわき市)馬目弘平 (3/31 永田和宏、馬場あき子選)
除染後に敷かれた土は硬すぎて今年もごめん種まきうさぎ
(福島市)米倉みなと (3/31 馬場あき子選)
「想定外」の言葉の日々が遠くなる三年過ぎて他人事(ひとごと)の空
(函館市)武田悟 (3/31 佐佐木幸綱選)
録(と)り置きしドラマの間に東電の地球に優しとふコマーシャルあり
(さいたま市)吉田俊治 (3/31 佐佐木幸綱選)
美味しくておかわり食べた味わった復興バザーの浪江焼きそば
(鎌倉市)小島陽子 (3/31 高野公彦選)
除染中地蔵に着せる雪合羽
(福島市)引地こうじ (2/24 金子兜太選)
こんこんと湧く三月の汚染水
(高松市)島田章平 (3/3 長谷川櫂選)
地獄へと続く吹雪の家路かな
(福島県伊達市)佐藤茂 (3/3 長谷川櫂選)
ふくしまの棄民に積る涅槃雪
(福島市)池田義弘 (3/17 金子兜太選)
蛇穴を出て強烈な放射能
(いわき市)馬目空 (3/17 金子兜太選)
笑ふにも笑へざる国山笑ふ
(向日市)松重幹雄 (3/24 大串章選)
福島はフクシマのまま春四度
(金沢市)前九疑 (3/24 長谷川櫂選)
福島を離れ一〇〇〇日ふきのたう
(川越市)横山由紀子 (3/31 長谷川櫂選)
3月10日付けの同紙面のコラム「うたをよむ」に佐藤通雅の「佐藤祐禎という歌人」が掲載されていた。その中に東電福島第一原発のある福島県双葉郡大熊町に住んでいた佐藤祐禎の短歌二首が紹介されていた。
眠れざる一夜は明けて聞くものか思はざりし原発の放射能漏れ
(『短歌』2011年10月号)
死の町とはかかるをいふか生き物の気配すらなく草の起き伏し
(同上)
なお、福島原発事故以前の短歌は、佐藤禎祐歌集『青白き光』(いりの舎、平成23年)に収められている。