「あのさぁ、オレ、仙台行くわ。明日泊めて。」
「ほぇ?」
それは震災からやっと一週間が経ったという頃のこと。
横浜の友人が突然、時間がつくれたからといって電話をくれた。
「仙台、ったって、どうやって来るの?」
まさか横浜から一般道を使って来るのかしら?
「いやさすがにこっち(横浜)もガソリンなかなか手に入らなくてさぁ、車ってわけにはいかないんだ。」
「あ、そうなんだ。」
このとき、僕は首都圏でもガソリンが手に入りにくくなっていることを知った。
「こっち(横浜)で行列つくってんのは群集心理。単なる買い占めなんだよ。たしかに横浜でもコンビナート燃えたけど、それでガソリン無いわけじゃないみたいだよ。」
へえ。で、君はどの手段で来るの?
「まず上越新幹線で新潟まで行って、そこから長距離バスに乗るよ。」
す、すごい。
日本海側まで廻るの? っつーか長距離バスっていま高速乗れるの?
「高速乗れるらしいよ。テレビのテロップで案内やってた。たぶん緊急車両扱いなんだろ。新潟から磐越道、郡山から東北道で行くからね。よろしく。あ、メシの心配とか一切すんなよ。全部こっちで持って行くからお構いなく。」
あまりの展開に頭がついてゆかない。
BELAちゃんに話すと、BELAちゃんもお口あんぐり。
「・・・すごい人なんだねぇ。」
まぁ、子供の頃から大胆で即断の人だったけど。
で、翌日、いろいろメールでやりとりしながら一日経過し、夜の11時頃、友人を迎えに仙台駅に向かった。
夜の仙台駅周辺はすっかり灯が消えている。
お店を開こうにも食材が不足している。おまけに電力不足の懸念がある。
JRの踏み切りもバーが抜かれていて無条件に通過できる。震災から7日。当時、JRの復旧見通しはまったく立っていなかった。
あまりの変わりようにこっちが凹んでしまう。
迎えに行くと、
「おう。」
大きなキャリングケース。大人がしゃがんで入れそうなくらい。さらにボストン級×2。
「すごいね。」
「中身はもっとすごいぞ。」
よっこいしょ、と車のカーゴスペースに荷物を入れる。けっこう重いし。
放菴に到着して、さあ御開帳となった。
まず出てきたのは駅弁。それからレトルト食品(サバ、イワシなどの煮込み、新潟バスターミナルのカレー(レア物!)、ドンブリの素などなど)、レンジ調理できるパスタ、パスタソース、インスタントラーメン、インスタントみそ汁、缶詰、ふりかけ、のり、こんぶ、だし、ごま、しょうゆ、マヨネーズ、紅茶、煎茶、コンソメ、etcetc・・・。
「すごいだろ。ほら。」
すごいなんてもんじゃない。雑貨屋ひらけるぜ。こんだけありゃ。
「さらに、これだ。重かったのは。」
友人がケースのそこから引きずりだしたのは、なんと「IH調理器」。しかもポータブル型。
さらに大鍋、フライパン。
あまりの豊富な物資に声も出ない。
「いや、ガスが復旧していないっていうからさ、こういうのないと不便かなぁって思って。カセットコンロだけじゃ心もとないだろうし。だいいちガスボンベ売ってないもんね。」
そこまで読んでいましたか。脱帽です。
「物資で余分なやつは近所にわけてくれていいよ。近所づきあいもあるだろうし、物資の拡散は復興にも役に立つかなぁって思うし。そもそも食べれるもの食べれないものもあるだろう。辛口のレトルトとかさ。そういうのむしろ近所に分けちゃって、あとは子供たちが食べれそうなものがあるといいんだけど。」
ある、ある。魚とかドンブリの素とか!
話は盛り上がりつつ、けれども友人はこれら持ってきたものは一切手をつけず、持参した駅弁を食べ始めた。
「だって、オマエんトコに支援物資もってきて逆に厄介になるわけにはいかねーじゃん。ホント一晩泊めてもらうだけで後はお構いなく。」
とはいえ、せっかく遠路はるばる来てくれた友人に酒のひとつも出さないわけにはいかないよ!
戸棚に入っていて難を逃れた小さな芋焼酎。大丈夫、近所のスーパーでもお酒に限っては制限なく買えるから。
友人Mクンの、その英雄的行動力にカンパイ!
夜はしんしんと更けてゆく。
「ほぇ?」
それは震災からやっと一週間が経ったという頃のこと。
横浜の友人が突然、時間がつくれたからといって電話をくれた。
「仙台、ったって、どうやって来るの?」
まさか横浜から一般道を使って来るのかしら?
「いやさすがにこっち(横浜)もガソリンなかなか手に入らなくてさぁ、車ってわけにはいかないんだ。」
「あ、そうなんだ。」
このとき、僕は首都圏でもガソリンが手に入りにくくなっていることを知った。
「こっち(横浜)で行列つくってんのは群集心理。単なる買い占めなんだよ。たしかに横浜でもコンビナート燃えたけど、それでガソリン無いわけじゃないみたいだよ。」
へえ。で、君はどの手段で来るの?
「まず上越新幹線で新潟まで行って、そこから長距離バスに乗るよ。」
す、すごい。
日本海側まで廻るの? っつーか長距離バスっていま高速乗れるの?
「高速乗れるらしいよ。テレビのテロップで案内やってた。たぶん緊急車両扱いなんだろ。新潟から磐越道、郡山から東北道で行くからね。よろしく。あ、メシの心配とか一切すんなよ。全部こっちで持って行くからお構いなく。」
あまりの展開に頭がついてゆかない。
BELAちゃんに話すと、BELAちゃんもお口あんぐり。
「・・・すごい人なんだねぇ。」
まぁ、子供の頃から大胆で即断の人だったけど。
で、翌日、いろいろメールでやりとりしながら一日経過し、夜の11時頃、友人を迎えに仙台駅に向かった。
夜の仙台駅周辺はすっかり灯が消えている。
お店を開こうにも食材が不足している。おまけに電力不足の懸念がある。
JRの踏み切りもバーが抜かれていて無条件に通過できる。震災から7日。当時、JRの復旧見通しはまったく立っていなかった。
あまりの変わりようにこっちが凹んでしまう。
迎えに行くと、
「おう。」
大きなキャリングケース。大人がしゃがんで入れそうなくらい。さらにボストン級×2。
「すごいね。」
「中身はもっとすごいぞ。」
よっこいしょ、と車のカーゴスペースに荷物を入れる。けっこう重いし。
放菴に到着して、さあ御開帳となった。
まず出てきたのは駅弁。それからレトルト食品(サバ、イワシなどの煮込み、新潟バスターミナルのカレー(レア物!)、ドンブリの素などなど)、レンジ調理できるパスタ、パスタソース、インスタントラーメン、インスタントみそ汁、缶詰、ふりかけ、のり、こんぶ、だし、ごま、しょうゆ、マヨネーズ、紅茶、煎茶、コンソメ、etcetc・・・。
「すごいだろ。ほら。」
すごいなんてもんじゃない。雑貨屋ひらけるぜ。こんだけありゃ。
「さらに、これだ。重かったのは。」
友人がケースのそこから引きずりだしたのは、なんと「IH調理器」。しかもポータブル型。
さらに大鍋、フライパン。
あまりの豊富な物資に声も出ない。
「いや、ガスが復旧していないっていうからさ、こういうのないと不便かなぁって思って。カセットコンロだけじゃ心もとないだろうし。だいいちガスボンベ売ってないもんね。」
そこまで読んでいましたか。脱帽です。
「物資で余分なやつは近所にわけてくれていいよ。近所づきあいもあるだろうし、物資の拡散は復興にも役に立つかなぁって思うし。そもそも食べれるもの食べれないものもあるだろう。辛口のレトルトとかさ。そういうのむしろ近所に分けちゃって、あとは子供たちが食べれそうなものがあるといいんだけど。」
ある、ある。魚とかドンブリの素とか!
話は盛り上がりつつ、けれども友人はこれら持ってきたものは一切手をつけず、持参した駅弁を食べ始めた。
「だって、オマエんトコに支援物資もってきて逆に厄介になるわけにはいかねーじゃん。ホント一晩泊めてもらうだけで後はお構いなく。」
とはいえ、せっかく遠路はるばる来てくれた友人に酒のひとつも出さないわけにはいかないよ!
戸棚に入っていて難を逃れた小さな芋焼酎。大丈夫、近所のスーパーでもお酒に限っては制限なく買えるから。
友人Mクンの、その英雄的行動力にカンパイ!
夜はしんしんと更けてゆく。