山形のホリデイマタギ日記

山菜とキノコと魚を採って遊ぶ年寄りの冷や水日記

いてもいいのね(さんぽうた235)

2024年12月08日 | いきもの

   いてもいいのね    はつね ゆき

 

ひさしぶりに

このまちに やってきた

 

わたしは

うけいれて もらえるかな

 

それとも

きらわれて しまうのだろうか

 

あさ

 

わたしのすがたをみた

こどもたちの

ひとみが かがやいた

ほっぺたが  ふくらんだ

 

ああ

だいじょうぶかもしれない

 

たずねてきて よかった

 

また しばらく

このまちに

いてもいいのね

 

       一番高い山が真っ白になり

       その隣の山も白くなって

 今朝、

       いよいよ我が家にも雪が積もり始めた

 ああ、来るべきものが来たな。

 これは、北国の住人の宿命。

 そして、この来訪者を受け入れるかどうかも、北国の住人にゆだねられる。

 はっきり言って、除雪にしても車の運転にしても、厄介なことは多いんだよ。

 でもね、この雪が連れてきてくれる喜びも、すごくたくさんある。

 ここで、細かいことを書き上げる気はないけれど、一つだけ。

 

 今年もようこそ!

 また、よろしくね!!


よそおって(さんぽうた234)

2024年11月16日 | いきもの

   よそおって   もみじたに かえで

 

さりげなく

ともだちを

よそおって

 

おなじ

かぜのなかを

あゆんで きたけれど

 

ほんとうは

ちがうめで

みつづけてきたの

あなたのこと

 

だけど いま

きがついて

 

こんなにも

きれいになった

わたしのすがたに

 

いままでと

おなじひとみで

みつめられないほど

 

よそおった

いまのわたしに

 

       遠くの山が白く染まったのに合わせるように

       周囲のモミジが急に色づき始めました

       他の花々が散り落ちたのを

       待っていたかのように

       装い始めたのです

 「きれいに染まりましたね。」

「ありがとうございます。今年の気候は、私たちに合っていたのかも。」

「そうかもしれませんね。急に冷えたから。それにしても・・・」

「それにしても?」

「今年は特に美しい。」

「そうかもしれない。・・・見てもらいたかったから。」

 ふうん。そうか。

 3年前に話した時とは、別人みたいに成長してきた『もみじたにさん』との再会を約束して、お昼の散歩を再開しました。

 (3年前は、№113)


ねえ、つれていって(さんぽうた233)

2024年10月26日 | いきもの

   ねえ、つれていって     ぽむ ぐらねいと ざくろ

 

かたく かたく

とじていた

たからばこ

 

わたしたちを

ずっと まもってきた

たからばこが

 

きょう ひらいた

 

ひざしが まぶしい

かぜが やさしい

 

ねえ

わたしたちに きづいたら

 

どうぞ

むかえにきて

 

ひろいせかいに

つれていって

 

       初夏に花を咲かせ

       小さな実をつけてから

       少しずつ大きくなり

       かたくなに閉じていた宝箱が

       開いた姿に、やっと出逢えました

       鮮やかな赤い果肉に包まれた種

 子供の頃、近所の木になった実を採って、「すっぱあい!」と言いながら頬張ったことを思い出します。

 目ざとく見つけたヒヨドリが、早速やってきて。ついばんでいました。

 ザクロさんも、まんざらでもなさそう。

 「どうぞ私たちを連れて行って、知らない世界を見せてくださいな。」

そう言っているように感じました。

 ザクロの宝箱が開く季節になりました。

 いよいよ、秋も深まってきたと、実感させられた、今日の散歩でした。


ほんとうの おもい(さんぽうた232)

2024年09月19日 | いきもの

   ほんとうの おもい   たち あざみ

 

そう

わたしは

いつもどおり

 

すこし すずしくなったかぜに

おはよう

 

すこし やさしくなったひざしに

こんにちは

 

そう

わたしは

いつもどおり

 

ほんとうのおもいは

けっして

きづかれないように

 

いきていく

これからも

 

 

       山裾の小径に咲いていたアザミ

       美しい花なのに

       けっして目立とうとせず

       静かに咲いていました

 「どうして、もっと広いところに出てこないの。」

「いいんです。ここが好きだから。」

「そうか。でも、なんだかもったいないと思うんだけど、そのきれいな花が。」

「いいえ、ここでいいんです。だって、」

「だって?」

「だって、怖いから。」

「怖い?」

「本当は・・・」

あざみさんは、それ以上話してくれませんでした。

どんな想いでいるのか、私にはわかりませんでした。


こんさあとほおる(さんぽうた231)

2024年09月14日 | いきもの

   こんさあとほおる   まつむし あおい

 

 けちなこと いわないで

あんたんとこの ほおる

つかわせてくれよ

 

このほおる

おとのひびきが

すごいんだからよ

 

おれがうたうと

ほら

このとおり

 

おきゃくが

どんどん あつまってくる

 

なあ

このあきだけでいいからさ

このほおるで

こんさあと させてくれよ

 

 草木も眠る丑三つ時、部屋のどこからか虫の声が響き始めた。

 始めのうちは、「秋の虫が迷い込んだのね。」ぐらいに考えていたんだが、いつまでも鳴き止まない。

 それどころか、その音の大きさが半端でなく大きくて、眠れない。

 悪いけど、出て行ってもらおうと思って探してみると、いましたいました。

       歌っているのはこのお方

 ただ、天井を見ていると、他にも動く虫の姿が。

       こちらは観客みたいです

       こっちにもいる

 申し訳ないんだけど、

       網ですくって

 外に出て行ってもらったんです。

 ところが、翌日、またやってきて歌ってるんですね。

 「そんなにこの部屋が気に入ったのかい?」

訊いてみると、

「ああ。」

と言って語り出したのが最初の話。

 また明日も来るのかなあ。

 正直、凄い大音量のテノールで歌うから、眠れないんですよ。

 でも、わずかな期間だからなあ。

 ホールを貸してやるかどうか、ちょっと迷っているマタギです。