11月のNHKテレビの番組「笑わない数学」で、自然数全体の和の公式
1+2+3+…=-1/12 (1)
が正しいか否かをめぐって展開された歴史的経緯といくつかの総和法についての説明があった。左辺の無限級数はどう見ても無限大になるとしか考えられないのに、右辺が-1/12に収束することを示しているから、この式は間違いであるで終わってしまいそうである。
50年ほど前に習った無限級数についての定理:
「正項級数a1+a2+a3+…は、その部分和Snが有界なるとき、すなわち
Sn=a1+a2+…+an<=K (an>0; n=1,2,3,…)
なるnに無関係な定数Kが存在するとき収束し、有界でないとき+無限大に発散する。」に照らすと、(1)式の左辺は無限大に発散するはずである。
しかし、(1)式のように発散してしまう無限級数も、ゼータ関数表示にして繰り込み操作をすると収束することが知られている。ゼータ関数とは、
Z(s)=1^(-s)+2^(-s)+3^(-s)+4^(-s)+… (2)
で表現できるsの関数である。(1)式はZ(-1)の場合に相当し、その計算結果はZ(-1)=-1/12となって、(1)式右辺に一致する。また、Z(-2)=0, Z(-3)=1/120の結果が得られる。
物理学の場の理論によると、真空も電磁場として取り扱われる。真空は、エネルギー的には基底状態にあり、零点エネルギーをもって零点振動を行っている状態とされる。真空中に、薄い金属膜を2面、接近するように向かい合わせておく。2つの膜の間には電気的クローン力が存在しないにもかかわらず、膜の間には弱い引力が働き、膜が互いに引き合うことが確かめられる(カシミール効果と呼ばれている)。
金属膜の間の狭い空間に閉じ込められている電磁場の零点エネルギーと、金属膜がないときの同一空間内の零点エネルギーとの間には差分が生じるので、その差分を計算することによって、膜の間に生じる引力の大きさを算出することができる。その計算式に基づいて計算するプロセスの途中に、次の無限級数:
1^3+2^3+3^3+4^3+…
を計算する場面が出てくる。この無限級数をゼータ関数とみなせば、Z(-3)=1/120に相当する。この数値を用いた理論値は、実測値と一致することが確かめられている。そうすると、ゼータ関数の少なくともZ(-3)が、間接的に確認されたことになる。
無限級数を扱う「笑わない数学」では、「カシミール効果」のほかに、超弦理論の10次元時空についても言及していた。この理論では、(1)式を用いることにより、10次元時空が予言できるとのことである。
そこで、「無限大に発散する無限級数の計算において、繰り込み操作をすると収束する例について教えてほしい。」とネット検索すると、リーマンのゼータ関数として(2)式を挙げ、「実数sに対してs>1のとき収束し、s<=1のとき発散する。s<=1のとき、繰り込み操作により収束することが知られている。」との回答を得た。
無限集合に関する「部分無限集合の濃度は全体集合の濃度に等しい」という命題は、直感に反する。上記の定理に反し、直感にも反する(1)式を前にして、まだ無限大というものを理解するに至っていないのではないかと思う。
数学好きの知人にこの問題を投げると、「「無限大の不思議」というよりは「解析接続の不思議」というものでしょう」というコメントが返ってきた。(2)式は、実はオイラーのゼータ関数であり、sは実数である。これを複素数の世界にまで拡張したものが、リーマンのゼータ関数である。リーマンのゼータ関数は、(2)式を包含していることと、解析接続は、複素関数に対しても矛盾なく成立することを確認したい。
参考文献
中村亨著「リーマン予想とはなにか」(ブルーバックス)
1+2+3+…=-1/12 (1)
が正しいか否かをめぐって展開された歴史的経緯といくつかの総和法についての説明があった。左辺の無限級数はどう見ても無限大になるとしか考えられないのに、右辺が-1/12に収束することを示しているから、この式は間違いであるで終わってしまいそうである。
50年ほど前に習った無限級数についての定理:
「正項級数a1+a2+a3+…は、その部分和Snが有界なるとき、すなわち
Sn=a1+a2+…+an<=K (an>0; n=1,2,3,…)
なるnに無関係な定数Kが存在するとき収束し、有界でないとき+無限大に発散する。」に照らすと、(1)式の左辺は無限大に発散するはずである。
しかし、(1)式のように発散してしまう無限級数も、ゼータ関数表示にして繰り込み操作をすると収束することが知られている。ゼータ関数とは、
Z(s)=1^(-s)+2^(-s)+3^(-s)+4^(-s)+… (2)
で表現できるsの関数である。(1)式はZ(-1)の場合に相当し、その計算結果はZ(-1)=-1/12となって、(1)式右辺に一致する。また、Z(-2)=0, Z(-3)=1/120の結果が得られる。
物理学の場の理論によると、真空も電磁場として取り扱われる。真空は、エネルギー的には基底状態にあり、零点エネルギーをもって零点振動を行っている状態とされる。真空中に、薄い金属膜を2面、接近するように向かい合わせておく。2つの膜の間には電気的クローン力が存在しないにもかかわらず、膜の間には弱い引力が働き、膜が互いに引き合うことが確かめられる(カシミール効果と呼ばれている)。
金属膜の間の狭い空間に閉じ込められている電磁場の零点エネルギーと、金属膜がないときの同一空間内の零点エネルギーとの間には差分が生じるので、その差分を計算することによって、膜の間に生じる引力の大きさを算出することができる。その計算式に基づいて計算するプロセスの途中に、次の無限級数:
1^3+2^3+3^3+4^3+…
を計算する場面が出てくる。この無限級数をゼータ関数とみなせば、Z(-3)=1/120に相当する。この数値を用いた理論値は、実測値と一致することが確かめられている。そうすると、ゼータ関数の少なくともZ(-3)が、間接的に確認されたことになる。
無限級数を扱う「笑わない数学」では、「カシミール効果」のほかに、超弦理論の10次元時空についても言及していた。この理論では、(1)式を用いることにより、10次元時空が予言できるとのことである。
そこで、「無限大に発散する無限級数の計算において、繰り込み操作をすると収束する例について教えてほしい。」とネット検索すると、リーマンのゼータ関数として(2)式を挙げ、「実数sに対してs>1のとき収束し、s<=1のとき発散する。s<=1のとき、繰り込み操作により収束することが知られている。」との回答を得た。
無限集合に関する「部分無限集合の濃度は全体集合の濃度に等しい」という命題は、直感に反する。上記の定理に反し、直感にも反する(1)式を前にして、まだ無限大というものを理解するに至っていないのではないかと思う。
数学好きの知人にこの問題を投げると、「「無限大の不思議」というよりは「解析接続の不思議」というものでしょう」というコメントが返ってきた。(2)式は、実はオイラーのゼータ関数であり、sは実数である。これを複素数の世界にまで拡張したものが、リーマンのゼータ関数である。リーマンのゼータ関数は、(2)式を包含していることと、解析接続は、複素関数に対しても矛盾なく成立することを確認したい。
参考文献
中村亨著「リーマン予想とはなにか」(ブルーバックス)