彼女との付き合いは今年で45年になる
もう半世紀も経ってしまったのか
春色の海にも行った
四月の雨に打たれて駅のホームでデートもした
でもまだ手を握ったことも握られたことも無い
五月は彼女からちっとも便りが無かった
気が弱くて頼りがないのは僕のほうだったけど
そんな彼女が六月の梅雨の晴れ間に
寝たきりの僕の手を初めて強く握ってくれた
「脈がありません、ご臨終です」
恋の終わりを知らされた
初めて出会った時から
脈が無いのはわかっていたことだ
彼女は天使のような人だった
薄れ行く意識で見た天国は幸福な空色だった
三途の川の岸辺には青い矢車菊が咲いていた
今僕は川のどっち側にいるのだろう
もう半世紀も経ってしまったのか
春色の海にも行った
四月の雨に打たれて駅のホームでデートもした
でもまだ手を握ったことも握られたことも無い
五月は彼女からちっとも便りが無かった
気が弱くて頼りがないのは僕のほうだったけど
そんな彼女が六月の梅雨の晴れ間に
寝たきりの僕の手を初めて強く握ってくれた
「脈がありません、ご臨終です」
恋の終わりを知らされた
初めて出会った時から
脈が無いのはわかっていたことだ
彼女は天使のような人だった
薄れ行く意識で見た天国は幸福な空色だった
三途の川の岸辺には青い矢車菊が咲いていた
今僕は川のどっち側にいるのだろう