ゆめ未来     

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「ジャック・グラス伝」 あたしにどんな存在意義がある?

2018年03月19日 | もう一冊読んでみた
  2018年版 このミステリーがすごい!
  海外篇 第6位 ジャック・グラス伝


「このミステリーがすごい! 第6位」 6位だからおもしろくないはずがない。
そう思い、読んでみました。

ぼくは、SF音痴なのかも知れないなあ~。
そんな思いを強くしました。
すごく面白く感じた部分もありましたが、ぼくには総じてイマイチ評価のSFミステリでした。

ジャック・グラス伝』 より、SFの詩的表現を拾ってみます。

 「きっと心を打ち砕かれていたでしょう」
 「もしもわたしに心があったら」
 「そんなことを言わないで、アイアーゴ。口では“もう二度と”と言うことができるし、理性はそれを予測することができる。でも、“もう二度と”という言葉は心の語彙にはないのよ」


 ジャクはガラスのかけらを取り出して、磨きをかける作業に取りかかった。もう少しだ。だが、大騒ぎはせず、じっくりと作業を進めた。 “もう少し” は果てしない実存的失望の漸近線だ。これは宇宙の幾何学なのだ。黒と薄いグレイと青と紫と----

このガラスの使い道は、意外だった。

 箱の中には何がある?
 疑念だ。
 疑念の別の呼び名は?
 死こそ疑念の別の呼び名だ。死は、宇宙の営みの不滅の確実性を、その不確かさによって屈曲させる。


 「苦痛、それと死の恐怖なら、口を割らせることができるだろうと---なにしろ、意識のある人体にはそのような攻撃に対抗するすべはないのですから。尋問者たちはコーリイを拷問し、彼は耐えました。真空さらしを受けさせられたときは、もがくのではなく、肺の中の空気をすっかり吐き出しました。彼は歌っていたのだと思います。」
 「歌っていた?」
 「神の栄光をたたえる賛美歌を、声をかぎりに歌っていたのです----完璧に音を消す媒体である外の宇宙空間へむかって。渾身の力を振り絞った声なき賛美歌です。尋問者たちは気づきませんでした。対象者はふつうはそんな反応はしないのです。その痛みたるや、すさまじかったでしょう。悪魔の凍てついた手を気管から肺へ突っ込まれ、肉を引きちぎられるようなものです。しかしマコーリイには意志の力がありました。」


 「もちろん、その破壊的な力に気づけば、彼らはもっとそれをほしがるはず。当然よね。莫大な富以上に、権力者は破壊のテクノロジーを熱望するものだから。豊になることはいいことだけど、権力の座にとどまるのはもっといい----畏怖の念を呼び起こす兵器を意のままにできれば、それを実現しやすくなる」

    『 ジャック・グラス伝/アダム・ロバーツ
               /内田昌之訳/新ハヤカワ・SF・シリーズ 



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