■大誘拐/天藤真 2017.10.31
『ミステリ国の人々』(有栖川有栖)紹介の古典、その8は、天藤真作 『大誘拐』 です。
『ミステリ国の人々』の紹介文。
とし子刀自は八十二歳。身長は1メートル四〇センチ足らずと小柄で、「顔も体にふさわしくちんまり」して、見るからに「かわいい仏像」のように上品だ。地方切ってのお金持ちというだけでなく、慈善活動にも熱心なのでみんなから深く尊敬されている。
ほお、そんな素晴らしいお婆ちゃんが名探偵になって難事件を解決するのか、と早とちりなさらぬように。そんなお婆ちゃんが実は恐ろしい殺人計画を実行する犯人----でもなく、被害者になる。タイトルにあるように、そう、誘拐されてしまうのだ。
お年寄りが誘拐されるなんて嫌な話だな、という心配は無用。この作品はふんわりとしたユーモアが全編を包んでおり、意外な展開と見せ場がたっぷりという極上のエンターテインメントである。
面白い犯罪だの洒落た犯罪だの現実の世界には存在しないが、ミステリの中にはたくさんある。代表格がこの『大誘拐』だ。
大柳川の当主と胸を張るだけあって刀自は老いても頭脳明晰にして冷静沈着。未熟な三人の若者たちを仕切って身代金の受け取り計画を練るところなど、一大プロジェクト推進の観がある。その様は誘拐という言葉の陰惨さから遠く離れ、祖母と孫の交わりのようで微笑ましい。
さて、その『大誘拐』は、1978年に発表されました。
今読んでも、古くない。
ユーモアと機知にとみ、次どうなる、どうなる…… と本を置くことが出来ません。
1979年、第32回日本推理作家協会賞受賞
週刊文春ミステリーベスト10の20世紀国内部門第1位
刑務所で知り合った戸並健次、秋葉正義、三宅平太の3人は、紀州随一の大富豪、柳川家の当主 とし子刀自 を誘拐する。
彼らが要求した身代金は、100億円。
なぜ、身代金は、100億円という巨額なのか。びっくり。
それには、理由があるのですが、それはこの小説をお読みになって、ご確認下さい。
ぼくは、読みながら自分なら、どのような方法で受け取り、運ぶだろうかと考える。
そこで、1億円の重さと大きさを調べてみました。
一万円札の重さは1枚あたり約1グラム。
1億円では 1g × 10000枚 = 約10kg
銀行のジュラルミンケースには、1億円(大きい物には1.5億円)入るそうです。
100億円の重さは、約1トン。ケースに入れるとその倍として約2トン。
さて、彼らはどんな方法で運んだのでしょうか。 それは読んでのお楽しみ。
適正価格としては、不謹慎かも知れませんが、過去の誘拐事件で要求された身代金の金額を調べてみました。
1960年5月16日 雅樹ちゃん誘拐殺人事件 身代金200万円
1963年3月31日 吉展ちゃん誘拐殺人事件 身代金50万円
1984年(昭和59年)と1985年(昭和60年) グリコ・森永事件 グリコ社長の身代金として現金10億円と金塊100kgを要求
「かい人21面相」は、どのような方法で身代金を受け取るつもりだったのでしょうかね。
誘拐されたとし子刀自が、お金の使い方について健次に話す場面があります。
使う額によってお金の使い道が違ってくることやお金の使い方でその人の大きさが分かる。お金の意味が変わると。
さて、この100億円、ぼくも使い道を考えてみました。
お酒を飲みながら、長々とあれこれ。
考えれば、考えるほど楽しくなるのだが。
ここで、庶民の夢 「宝くじ一等賞金」 の推移を調べてみました。
平成元年11月 1億円(1等6,000万円と前後賞各2,000万円)
年末ジャンボ宝くじ(第270回全国自治)
平成27年11月 10億円(1等7億円、1等・前後賞合わせて)
年末ジャンボ宝くじ(第688回全国自治)
『 大誘拐/天藤真/創元推理文庫 』
『ミステリ国の人々』(有栖川有栖)紹介の古典、その8は、天藤真作 『大誘拐』 です。
『ミステリ国の人々』の紹介文。
とし子刀自は八十二歳。身長は1メートル四〇センチ足らずと小柄で、「顔も体にふさわしくちんまり」して、見るからに「かわいい仏像」のように上品だ。地方切ってのお金持ちというだけでなく、慈善活動にも熱心なのでみんなから深く尊敬されている。
ほお、そんな素晴らしいお婆ちゃんが名探偵になって難事件を解決するのか、と早とちりなさらぬように。そんなお婆ちゃんが実は恐ろしい殺人計画を実行する犯人----でもなく、被害者になる。タイトルにあるように、そう、誘拐されてしまうのだ。
お年寄りが誘拐されるなんて嫌な話だな、という心配は無用。この作品はふんわりとしたユーモアが全編を包んでおり、意外な展開と見せ場がたっぷりという極上のエンターテインメントである。
面白い犯罪だの洒落た犯罪だの現実の世界には存在しないが、ミステリの中にはたくさんある。代表格がこの『大誘拐』だ。
大柳川の当主と胸を張るだけあって刀自は老いても頭脳明晰にして冷静沈着。未熟な三人の若者たちを仕切って身代金の受け取り計画を練るところなど、一大プロジェクト推進の観がある。その様は誘拐という言葉の陰惨さから遠く離れ、祖母と孫の交わりのようで微笑ましい。
さて、その『大誘拐』は、1978年に発表されました。
今読んでも、古くない。
ユーモアと機知にとみ、次どうなる、どうなる…… と本を置くことが出来ません。
1979年、第32回日本推理作家協会賞受賞
週刊文春ミステリーベスト10の20世紀国内部門第1位
刑務所で知り合った戸並健次、秋葉正義、三宅平太の3人は、紀州随一の大富豪、柳川家の当主 とし子刀自 を誘拐する。
彼らが要求した身代金は、100億円。
なぜ、身代金は、100億円という巨額なのか。びっくり。
それには、理由があるのですが、それはこの小説をお読みになって、ご確認下さい。
ぼくは、読みながら自分なら、どのような方法で受け取り、運ぶだろうかと考える。
そこで、1億円の重さと大きさを調べてみました。
一万円札の重さは1枚あたり約1グラム。
1億円では 1g × 10000枚 = 約10kg
銀行のジュラルミンケースには、1億円(大きい物には1.5億円)入るそうです。
100億円の重さは、約1トン。ケースに入れるとその倍として約2トン。
さて、彼らはどんな方法で運んだのでしょうか。 それは読んでのお楽しみ。
適正価格としては、不謹慎かも知れませんが、過去の誘拐事件で要求された身代金の金額を調べてみました。
1960年5月16日 雅樹ちゃん誘拐殺人事件 身代金200万円
1963年3月31日 吉展ちゃん誘拐殺人事件 身代金50万円
1984年(昭和59年)と1985年(昭和60年) グリコ・森永事件 グリコ社長の身代金として現金10億円と金塊100kgを要求
「かい人21面相」は、どのような方法で身代金を受け取るつもりだったのでしょうかね。
誘拐されたとし子刀自が、お金の使い方について健次に話す場面があります。
使う額によってお金の使い道が違ってくることやお金の使い方でその人の大きさが分かる。お金の意味が変わると。
さて、この100億円、ぼくも使い道を考えてみました。
お酒を飲みながら、長々とあれこれ。
考えれば、考えるほど楽しくなるのだが。
ここで、庶民の夢 「宝くじ一等賞金」 の推移を調べてみました。
平成元年11月 1億円(1等6,000万円と前後賞各2,000万円)
年末ジャンボ宝くじ(第270回全国自治)
平成27年11月 10億円(1等7億円、1等・前後賞合わせて)
年末ジャンボ宝くじ(第688回全国自治)
『 大誘拐/天藤真/創元推理文庫 』