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「中原中也 沈黙の音楽」 神童から「肝やき」への人生

2017年12月25日 | もう一冊読んでみた
中原中也 沈黙の音楽/佐々木幹郎  2017.12.25

 中原中也は友人たちの前でしばしば自作詩を朗読したが、誰もまともに聞いていなかったと、『山羊の歌』を出版した文圃堂書店の社主、野々上慶一は回想している。
 「中也は、飲んでいて、時に突如として自作の詩を、嗄れた、しかし、しっかりとした声で、また時には悲し気な音声で、抑揚をつけて、朗唱したりしました。........ しかし、中也の朗読がはじまると、みなイヤな顔をして、座は白けたものでしたが、そして私もまたはじまった、とその時は迷惑に思ったのですが、歳月はふしぎなものです。私はいまでは時々、このことをとてもなつかしく思い出すことがあります。


詩人中原中也の人生そのものを映すような文章です。
歳月はふしぎなものです。 とてもなつかしく思い出すことがあります。」 中也の人生を振り返る、しみじみとした言葉です。

さみしくて、悲しくて、しかし、愛されずにはいられない人物であり、詩の数々です。
ぼくには、彼の生き方は青春のひとつの典型と感じられますが、誰もが、彼のように極端な形で生き抜くのは難しい。

 山口中学の弁論部の部長で中学五年生だった小川五郎は、........弁論部に入部した中也について、「私の記憶に残る中原は明眸丸顔で小柄な少年であった。議論づきでものを言ふ時に早口にまくし立てゝ相手の感情を刺激すると言った風な型であつた」と述べている

 長男の私が学校を打つちゃつて詩人になるとか脚本家になるとか勝手な熱を吹いてゐることは父に取っては自分の命を喰い取られることとしか思へなかつたのだ。

 「雪」は中原中也にとって比喩でもなんでもなかった。「雪」が宿命のように、あるいは不幸をも授ける恩寵のように中也のもとに降りてくるのは、詩のなかだけではなく、その詩を書く彼自身の生活にも及んだということ。

中也をして 「口惜しき男」 になったと言わしめた長谷川泰子との恋愛は、この詩人を理解する時、欠かすことの出来ない出来事です。

小林秀雄が長谷川泰子をめぐる中原中也との関係を「奇怪な三角関係」と書いて公表したのは、中也がなくなってから12年目、「文芸」1949年(昭和24年)八月号 「中原中也の思い出」でです。
有名な文章であるとともに、中也の人生を知るうえで大変貴重な資料です。

本書は、資料となる出典について「かっこ」で直後に記述されています。
これが読書のリズムを崩します。 ぼくには、大変読みにくく感じられました。
例えば、脚注形式でまとめられていれば読みやすかったのにと思います。

  『 中原中也 沈黙の音楽/佐々木幹郎/岩波新書 』

最近では、「100分de名著」の 『中原中也詩集/太田治子』 が、中原中也を知るよい入門書になっていると感じました。
映像とともに楽しめるのが何よりです。

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