地球の半分を駆け巡る1ヶ月
7月〜8月はフィールド学習と国内外での講演会が連続した。7月15日は海の日イベントとして恒例の「里海キャンパスで浄化実験を観察しよう。」と題した親子カニ釣り調査。【写真①】
7月18日〜20日は,福井県小浜市の若狭高等学校,京都大学環境学堂で開催された「国際マイクロプラスチック青年会議」に主催者として参加。台湾とアメリカの高校生の研究発表のアドバイザーを担った。【写真②】
台湾とアメリカの高校生と3日間過ごした後,20日アメリカ海洋教育学会に参加発表のため東海岸のニューハンプシャー大学へ。【写真③】
25日から30日まで西海岸に移動しカリフォルニア大学バークレー校へ。「国際海洋リテラシー調査委員会」の打ち合わせを行い,31日日本に到着。【写真④】
その直後中国の研究者との打ち合わせ。2日は森川海に住まう人々と題したオープンキャンパスでの講師を終えた直後,仙台へ。日本台湾森川海体験交流会の主催者として台湾の親子を迎え,3日から7日まで区界高原を皮切りに4泊5日のサーモンランド宮古での体験交流会。【写真⑤】
8,9日は大学院入試。
10日〜12日まで新潟県糸魚川市能生町にて大学2年生28名を対象とした水産調査。【写真⑥】
能生町は,意外にも森川海を生かしたユネスコジオパークだった【写真⑦】
17日までお墓参りとお盆を過ごし,19日〜25日までアジア海洋教育学会会長として中国青島市にある中国海洋大学を訪問。会長挨拶,招待講演,一般講演を終えた後,28日〜30日まで韓国浦項市にてシーグラントウィークに参加し招待講演。と目まぐるしく場所が変わったが,すべてが森川海MANABIプロジェクトの一環である。また,先々で気になるのが,渦巻きの意味だ。そして,不思議なことに,数々の渦巻きと数多くの出会いがあったのだった。
関東と関西で出会った渦巻かりんとう
小浜に旅立つ前日に,西麻布かりんとう専門店「麻布かりんと」を訪問。渦巻きかりんとうを入手。こちらのパッケージはさすがに洗練されていた。【写真⑧】
700円以上するが見た目が随分とおしゃれだ。ここの渦巻きかりんとうは100種類のうちの1種類。店員さんに由来を尋ねたが,わからないという。ただ,お客さんの中には懐かしいねーと言いながら購入するお客さんもあり人気があるという。関東出身の卒業生に聞いてみると,お祭りのときに神田のおばあちゃんの家に行くとかならず渦巻かりんとうがあったというから,関東でも昔から食べられていたようだ。
福井県での国際会議の後,関西空港に直行。そこでも出会いがあった。ラウンジで休憩していると,バリバリお菓子を食べる音がした。もしかしたらと思い,テーブルを見るとそこには常盤堂製菓のかりんとうがあるではないか。もちろんこちらも,北海道浜塚製菓と同様数種類のかりんとうのうちの1種類としてパッケージされている【写真⑨】。
パッケージには昔の駄菓子屋のイメージが描かれている。イメージから考えると,渦巻きかりんとうは駄菓子の一つとして古くから全国各地で作られて食べられていた,それが近代化とともに西洋菓子が登場し,駄菓子の需要が減り姿を消していった。生産性や合理性を重んじられ,手間ひまがかかる手作り製法は排除されたのだろう。
しかし,県北沿岸部では,縄文時代から続くおめでたい意味の込められた渦巻きかりんとうが,地元のニーズに応えながら途絶えることがなく作られ続けてきた。小規模な経営だからこそ,伝統の味と文化を伝える役割を担うことができたのであろう。希望郷いわて文化大使として,岩手文化遺産に推挙したい。
カリフォルニア大学バークレー校での渦巻きとの出会い
バークレー校は,サンフランシスコ市の対岸に位置する学園都市バークレー市にある。【写真⑩】
また,バークレー市の隣にはオークランドアスレチックスのホームグランド,オークランド市がある。バークレー校は,10校あるカリフォルニア大学の本部である。略してCAL,唯一バークレー校のみCALと名乗ることができる。ロサンゼルス校はUCLAであり,デービス校はUC Davis,サンタクルーズ校はUCSCである。また,バークレー校は,オッペンハイマーなどの有名な研究者が在籍し原子力開発で発展した大学。200人いるノーベル賞受賞者の一人であるローレンスの寄付によって建てられたのがローレンス科学館という科学教育の模範的施設がある。(この施設については,拙著「水圏環境教育の理論と実践」を参照)
さて,そのローレンス科学館(LHS: Lawrence Hall of Science)にて,国際海洋リテラシー委員として招聘され会議に出席した後,副館長のグレッグストラング氏の自宅でパーティに招かれた。その時の出来事である。
中国にもあった渦巻きかりんとう
まず,私の日本からの手土産として,岩手産渦巻きかりんとうをテーブルに並べた。【写真⑪】
LHSに訪問研究員として台湾海洋大学から派遣されたRay Yen教授は,台湾のかりんとうを持ってきた。麻花(マーファー)という棒状であるがねじれが入ったかりんとうだった。【写真⑫】
早速食べ比べをしてみる。日本のかりんとうより硬いが,味はほぼ同じである。味は日本のほうが洗練されている。そして,中国大陸にも渦巻きかりんとうがあるという。その場にはなかったが,中国ではごく普通に食べられているものだという。螺仔餅(ローザイピン:ネジ餅)あるいは猫耳という。【写真⑬】
また,中国の留学生に渦巻きの意味するところを聞いてみると生と死が繰り返されるという意味が込められているようだ。中国でも,渦巻きには大事な意味があったのだ。「淵は畏敬の対象でもあり,恵みをもたらす場所」「生命(いのち)に関わる重要な意味」と先月号で考察したが,この考察を裏付ける知見が得られた。中国では,どのような製造販売の形態をとっているのだろうか。小規模に経営する駄菓子屋さんや手作り料理として残っているのだろうか。興味がつきない。(つづく)