遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

大脳機能と細胞老化

2013-11-13 23:04:04 | BIONEWS
Depression 'makes us biologically older' (BBC)
うつ病だとテロメアが普通よりも短いことが判明、老化スピードが早くなる可能性が示される (GIGAZINE)
アムステルダム自由大学の研究チームの発表によると、うつ病患者は健康な人よりも早いスピードで老化している可能性があるとのことです。細胞の老化スピードが早くなることにより、痴呆やタイプ2糖尿病などの老化に伴う病気の発症の危険性も増加してしまうそうです。

どういうわけか分かっていませんが、ずいぶん前から酸化ストレスに曝された細胞のテロメアは短くなっています。また、テロメア構造が損なわれると結合タンパク質のひとつTPP1がテロメアから遊離して、何故かミトコンドリアに移行しミトコンドリア機能を阻害することが、報告されています。酸化ストレス、ミトコンドリア機能と細胞の代謝、テロメア構造、細胞の寿命・・・どれも密接に絡まって、切り離せない関係なのです。

発達した大脳をもち社会生活を営む大型ほ乳類は、生殖できる年齢を過ぎても生き続けます。大脳が生物を長寿にした最大の臓器です。人間でも百歳を超えて生きる『スーパーご長寿』の一番の特徴は脳が健康なことだと老化研究に携わる医師達は言います。逆に、脳機能に発達障害を持つ患者さんは老化が早いと小さな声でささやきあってました・・・ここで紹介されている研究は脳機能と細胞老化を裏付けるものになるかもしれません。もちろん、この話題は一般のニュースになる前に僕は耳にしていましたが、今日BBCで見つけて日本語サイトではGIGAZINEで掲載されていました。一般の人が単純に結びつけて考えるのはあんましよくないと思います。テロメアの長さだけで細胞老化を計るのは愚の骨頂です。テロメアが短くならない生物でもちゃんと老化し、死んでいくのですから。老化とか寿命とかいうのはもっと複雑な決定因子の積み重ねで決まっているはずです。

本日のお酒:KIRIN 一番搾り とれたてホップ + 立山 特別本醸造
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする