JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「サウルの息子」

2016-02-22 | 映画(DVD)
「サウルの息子」2015年 洪 監督:ネメシュ・ラースロー
SAUL FIA

1944年10月、ハンガリー系ユダヤ人のサウルは、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所でナチスから特殊部隊“ゾンダーコマンド”に選抜され、次々と到着する同胞たちの死体処理の仕事に就いていた。ある日、ガス室で息子らしき少年を発見した彼は、直後に殺されてしまったその少年の弔いをしようとするが……。

いつもエログロやポルノを追っかけているけれど、いろいろ評判を耳にするに付け、こういう作品は観ておかないとね。
映画史に残るホロコースト映画。公開中に観ておかなきゃ損だ。

ユダヤ人に同胞の虐殺を手伝わせたというのは何かで聞いていたけれど、ゾンダーコマンドというのですね。ここまでとは・・・
最近の映画界はPOV大流行だけれど、これもその延長線上の作品。今までのPOVとは明らかに違う手法。
スタンダードサイズの狭苦しい画面のほとんどはサウルの顔や背中(ゾンダーコマンド×印)でその向こうに見えるものはほとんどがピンボケ。
ユダヤ人の肌色が気になる。
そして、そのピンが偶にピシッと合う時があるのが恐ろしい。
監督の意図としてはこのような極限の厳しい状況下、彼らは見たくないものを見ないように、心を閉ざし、生きながら死人同然であった事を現わそうと言う事だそうな。
その心境は体験したものでしか解らない事だが。
監督の選んだ手法はそれ以上の効果を生んでやしないか。
視覚の制限だけではない。周囲でひそひそ囁かれる言葉には字幕が及んでいない。何でも8ヶ国語が使われているらしい。
まさに視覚と聴覚を制作側に蹂躙されているような心境になる。
これは近年の映画界における大きな発明と言えましょう。
そして、その手法はホロコースト作品だからこその手法という事になる。



そんな手法なので、最初のうちはサウルの行動に不明な点もあるのですが、仲間との会話から息子の存在すらも不明確になってくるし、やっと見つけたラビの役に立たなさが凄い。偽物だったのでしょう。

仲間曰く「生きるものの場所」で死者を正式に弔う事に拘り続ける意味。彼の行動が仲間の生命を危険にさらす事になっても尚拘る意味・・・。

ゾンダーコマンド疑似体験で息苦しいまでの映像体験だが、ラストがまた凄い。
このラストは癒しと絶望が同居しているようでした。
それまで使われていなかった音楽がエンドスーパーの時に鳴る。ヴァイオリンの音色が優しくて観賞後の後味は決して悪くない。



新宿シネマカリテ

映画のタイトルについてですけど、どうもすぐに「サウルの城」って言っちゃう。「ハウルの動く城」のイメージから来てるんだろうけど、そのジブリ作品も観てないのにね。

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