「追悼 高峰秀子」
「稲妻」1952年 角川 監督:成瀬巳喜男
観光バスの案内嬢をする清子は、勝気で美しい娘。長姉・縫子は清子に縁談話を持ち込むが、清子は金儲けのうまい男を妹と結婚させようという姉の魂胆に腹を立てる。一方、次姉・光子の夫が急死し、光子は実家に戻るが、親族たちは光子の夫の遺産を狙う。そんな家族たちに嫌気がさした清子は、家を出てアパートを借りて隠れ住み、隣家の兄妹・周三とつぼみとの交流の中で心洗われていくのだが…。
高峰秀子がバスガイド役という事で、見ておきたかった作品。
「秀子の車掌さん」から成長した高峰秀子。
今のところ、この人に関しては若ければ若いほど価値があるという認識なので、この「稲妻」はギリギリ。
バス車両から紹介される当時の銀座八丁の様子や、路地裏を三輪車で遊ぶ子等の風景がとても魅惑的。
しかし、その後、バスガイドを活かす内容は出てきません。バスガイドである必要も無さそうです。強いてあげれば、勉強をして自立したいがままならないヒロインの性格付けに当時の花形バスガイドが合っているというくらいか。
物語はそれぞれ父の違う姉妹の話。
次から次へと問題が起こりますが何も解決することなく進んでいきます。
それぞれの性格付けと配役された女優さんの嵌りっぷりな演技が秀逸。
強欲な長女、縫子(村田知栄子)とアル中の亭主、龍三(植村謙二郎)。亭主に死なれて妾の存在を知った次女、光子(三浦光子)。ダメっぷり全開の長男、嘉助(丸山修)。しっかりしたヒロインの三女、清子(高峰秀子)。父親違いの子を次々に産んだ能天気な母親(浦辺粂子)・・・
中でも浦辺粂子が適役でベリベリー・ナイス。
縫子が清子に両国のパン屋で嫌らしくずうずうしい男、綱吉(小沢栄太郎)との縁談を持って来ている。
長女の旦那である龍三は、儲け仕事に大風呂敷を広げるが、これまた何もできず酒ばかり飲んでいる。女たちのダメさに比べて男どものダメさ加減のどうしようも無さ。これはツボに嵌ります。堪えられない。
やがて、家族に嫌気がさし、自立しようとする清子はアパートを借りて一人暮らしを始める。このアパートでは対照的に心豊かな大家、隣家のピアノ兄妹(根上淳と香川京子)との交流に心癒される清子でありますが、この隣家の兄などは完全に清子を狙っているはずなんだけど、そういう事には一切踏み込まず爽やかに描写される。
清子が気の大人しい光子と連れだって、養育費を要求する亡夫の愛人(中北千枝子)に談判にいくシーン。
愛人のアパートが見える小さな橋の風景を初めとして、東京の小さな橋がいくつか見れる。
終盤、清子の借りているアパートでの母親とのやり取り。
暴言吐きまくりで泣き崩れ、窓外に稲妻が光ると謝罪の言葉もなく、なんとなく和解する母娘。
どんなに関係性が良くできていてもあそこまで言ってしまったら、やはりキチンと謝るべきなんだそうですよ。
・・・でも理想的ですよね。
愛情や感謝や謝罪の気持ちをはっきり言葉にして相手に伝えなくてはいけないというのは面倒くさいです、やっぱり・・・。
聞いていないところで手を合わせていたら、かみさんがまだ出かけておらず
「いけねぇ、元帳を見られちゃった」って・・・
あれが理想です。照れ隠しとかっていう意味でなく、怠惰な意味でね。
それじゃ、駄目なのは解っているんですが・・・。
話が逸れました。
次女、光子の行方の心配なんかは放っておいて、不思議な幸福感を残す作品の魅力。
成瀬巳喜男作品の中で、この作品がどういう位置を占めるのかは知りませんが、こういうのは嫌いじゃない。
訃報 高峰秀子
池袋 新文芸座
「稲妻」1952年 角川 監督:成瀬巳喜男
観光バスの案内嬢をする清子は、勝気で美しい娘。長姉・縫子は清子に縁談話を持ち込むが、清子は金儲けのうまい男を妹と結婚させようという姉の魂胆に腹を立てる。一方、次姉・光子の夫が急死し、光子は実家に戻るが、親族たちは光子の夫の遺産を狙う。そんな家族たちに嫌気がさした清子は、家を出てアパートを借りて隠れ住み、隣家の兄妹・周三とつぼみとの交流の中で心洗われていくのだが…。
高峰秀子がバスガイド役という事で、見ておきたかった作品。
「秀子の車掌さん」から成長した高峰秀子。
今のところ、この人に関しては若ければ若いほど価値があるという認識なので、この「稲妻」はギリギリ。
バス車両から紹介される当時の銀座八丁の様子や、路地裏を三輪車で遊ぶ子等の風景がとても魅惑的。
しかし、その後、バスガイドを活かす内容は出てきません。バスガイドである必要も無さそうです。強いてあげれば、勉強をして自立したいがままならないヒロインの性格付けに当時の花形バスガイドが合っているというくらいか。
物語はそれぞれ父の違う姉妹の話。
次から次へと問題が起こりますが何も解決することなく進んでいきます。
それぞれの性格付けと配役された女優さんの嵌りっぷりな演技が秀逸。
強欲な長女、縫子(村田知栄子)とアル中の亭主、龍三(植村謙二郎)。亭主に死なれて妾の存在を知った次女、光子(三浦光子)。ダメっぷり全開の長男、嘉助(丸山修)。しっかりしたヒロインの三女、清子(高峰秀子)。父親違いの子を次々に産んだ能天気な母親(浦辺粂子)・・・
中でも浦辺粂子が適役でベリベリー・ナイス。
縫子が清子に両国のパン屋で嫌らしくずうずうしい男、綱吉(小沢栄太郎)との縁談を持って来ている。
長女の旦那である龍三は、儲け仕事に大風呂敷を広げるが、これまた何もできず酒ばかり飲んでいる。女たちのダメさに比べて男どものダメさ加減のどうしようも無さ。これはツボに嵌ります。堪えられない。
やがて、家族に嫌気がさし、自立しようとする清子はアパートを借りて一人暮らしを始める。このアパートでは対照的に心豊かな大家、隣家のピアノ兄妹(根上淳と香川京子)との交流に心癒される清子でありますが、この隣家の兄などは完全に清子を狙っているはずなんだけど、そういう事には一切踏み込まず爽やかに描写される。
清子が気の大人しい光子と連れだって、養育費を要求する亡夫の愛人(中北千枝子)に談判にいくシーン。
愛人のアパートが見える小さな橋の風景を初めとして、東京の小さな橋がいくつか見れる。
終盤、清子の借りているアパートでの母親とのやり取り。
暴言吐きまくりで泣き崩れ、窓外に稲妻が光ると謝罪の言葉もなく、なんとなく和解する母娘。
どんなに関係性が良くできていてもあそこまで言ってしまったら、やはりキチンと謝るべきなんだそうですよ。
・・・でも理想的ですよね。
愛情や感謝や謝罪の気持ちをはっきり言葉にして相手に伝えなくてはいけないというのは面倒くさいです、やっぱり・・・。
聞いていないところで手を合わせていたら、かみさんがまだ出かけておらず
「いけねぇ、元帳を見られちゃった」って・・・
あれが理想です。照れ隠しとかっていう意味でなく、怠惰な意味でね。
それじゃ、駄目なのは解っているんですが・・・。
話が逸れました。
次女、光子の行方の心配なんかは放っておいて、不思議な幸福感を残す作品の魅力。
成瀬巳喜男作品の中で、この作品がどういう位置を占めるのかは知りませんが、こういうのは嫌いじゃない。
訃報 高峰秀子
池袋 新文芸座
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