JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

山田風太郎 「八犬伝 上・下」

2006-02-09 | BOOK
今年は戌年ということで、昨年末あたりから「南総里見八犬伝」がらみの書籍が書店に数々並んでいますね。
正月には長時間ドラマも放映されていたし(見てませんが)

手に取ったのは山田風太郎の「八犬伝 上・下」
これは関川夏央の「本読みの虫干し」で取上げられていて、是非、読もうと思っていたものです。
現代に訳すだけでも、その荒唐無稽なストーリーの面白い八犬伝を山田風太郎はどのように料理するか。

物語は八犬伝という作品の「虚」の世界と、文化10年から天保12年の作者馬琴の楽屋「実」の世界から構成されます。
技法としては決して珍しい物では無いのでしょうが、これが絶妙です。
最初、「作品」ストーリーがあまりに面白いので、「作者・実」の世界がCMのように疎ましくも感じましたが、どんどん読んでいくと「実」の世界も負けずに面白くなってきます。
八犬伝の醍醐味の1つは八犬士が1人づつ出現してくる部分でしょう。八犬士が出揃ったところで、ちょっと落着く。と言うか停滞を感じる。そこら辺から俄然「実」の世界がバトンを受けた如く面白くなってきます。

この作品を馬琴は28年もかけて、作り上げる。その完全主義の性格からか、作品の興趣を削ぐ事も厭わず善と悪の決着にこだわり、年老いて、失明してもなお執念を見せる。
このあたりは、作品の聞き役で登場する葛飾北斎を題材にした映画「北斎漫画」がありますが、また見たくなった。

失明し口実筆記を余儀なくされた八犬伝。その筆記役はほとんど文盲の嫁、お路。この2人の苦行ともいえる口実筆記の描写は凄いです。

ラストの1文でデュマを持ち出すのは関川夏央の技でなく、山田風太郎の技だったのですね。

最後の1文を読み終わった時、心の中で「イヨォ!出来ました!」と叫んで本を閉じた。巧いなぁ。

我々の世代は「八犬伝」というとNHKの人形劇「新・八犬伝」でそのストーリーを認識しています。毎日、夢中になって見たものです。

仁○義○礼○智○忠○信○孝○悌○!

「玉梓が怨霊」によって「が」を古典的に「の」の意味で使う事も知った「新・八犬伝」です。がのにをよりにてへとからして・・・



今回も読んでいて、登場人物は皆、頭の中で辻村ジュサブローの人形となって現れました。
忘れていた「新・八犬伝」の名場面が記憶として沢山甦りました。ただし、その記憶は「実」の記憶なのか、今回作られた「虚」の記憶なのかは混沌として・・・

NHKさん、名作「新・八犬伝」のテープをほとんど廃棄してしまい、残っていないそうな。何、ドジな事をしているんだNHKさんよ。「ひょっこりひょうたん島」の時代なら仕方ないけれど。「新・八犬伝」はもう70年代だぞ、アーカイブス!(意味不明な発言、陳謝。

そんな、「新・八犬伝」の記憶を甦らせる格好なページがありますので、ご紹介。

新八犬伝をもう一度見ようよ

正月のドラマもDVD化されるそうで、機会があったらレンタルしてみましょう。




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