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中国語には、同義語が数多く存在するが、またそれらの間にはニュアンスの違いが存在する。ここでは、それを「語義の交叉現象」(“詞義交叉現象”)という言い方をしている。このニュアンスの違いを見分ける方法は、一つはその用例を見ることであるが、もうひとつ、これら同義語に呼応して、多く存在する反意語を利用する方法がある。
語義の交叉現象、及びその語義の分析での役割
現代漢語では、言葉(“詞”)の多義現象、同義現象、反義現象が常に同時に併存する。大量の多義語、同義語、反意語の存在により、現代漢語の語彙の系統の中に複雑な語義の交叉現象が形成される。ひとつの言葉がしばしば多くの意味を持つので、これらの言葉はいくつもの同義語を持つことができ、同時にいくつもの反意語を持つことができる。逆に言うと、多くの言葉は常にある意味の上では同じであるので、ひとつの言葉が多くの同義語を持ち、同時に多くの反意語を持っている。語彙系統中の言葉のひとつひとつが、常に複雑な意味関係の中に置かれ、その他の多くの言葉の意味と相互に連携し、相互に制約を与えられている。
例を挙げると、現代漢語での“深”という言葉は、それが指すのが上から下までの距離が大きいという場合、この同義語は“高”(例えば“高山深谷”中の“高”と“深”)であり、それが指すのが中から外、或いはここからあそこまでの距離が大きいという場合、同義語は“遠”(例えば“深遠”、“深入沙漠几十公里”)であり、それが指すのは色が濃い(“顔色深”)という場合、同義語は“濃”である。それが指すのが、親しみが深い(“感情深”)という場合は、同義語は“厚”である。これを状況語として程度を表す場合、その同義語は“很”、“十分”である。このように、同じ“深”という言葉が、その異なる意味の上では、“高”、“遠”、“濃”、“厚”、“很”、“十分”等の異なる同義語が存在し、同時にこれと対応して、これらの異なる意味において、“浅”、“近”、“淡”、“薄”等と反意語を形成する。このように、複雑な語義の交叉関係の中で、“深”という言葉は一連の異なる言葉と連携し、異なる関係を形成する。
語義のこうした交叉関係は、ひとつひとつの言葉の意味を分析するうえで大きな助けとなる。語義を確定するのに、以下のいくつかの方法を用いることができる。
第一、同義語を使って多義語の異なる意味を確定する。多義語の意味は正確に把握するのが困難である。その異なる同義語を関連付けてみると、比較的はっきりする。例えば、“開”ということばには、“打開”、“発動”、“操縦”、“開抜”、“開辧”、“開始”、“挙行”、“発付”、“沸騰”等の同義語があることがわかれば、“開”の各種の用法、意味を理解するのは容易である。
第二、反意語を利用して多義語の異なる意味を確定する。多義語の異なる意味は、常に異なる反意語がそれと呼応しているので、異なる反意語を利用すれば、多義語の異なる意味を確定することができる。例えば、“薄”という言葉を理解するには、“厚”、“肥沃”、“濃”、“深”等と反意語を構成するので、その各種の異なる意味を確定することができる。“酒太薄”と言う場合、その反意語は“濃”であり、ここでは“薄”は“淡”の意味である。“地太薄”と言う場合、その反意語は“肥”、或いは“肥沃”fei2wo4であり、そのここでの意味は“貧瘠”pin2ji2(土地がやせている)である。
第三、反意語を利用して同義語の語義上の細かな違いを確定する。多くの同義語は、同じ意味の上でそれに相応する反意語があるが、その意味の細かな違いの上で、異なる反意語が存在し得る。したがって、異なる反意語の手助けにより、同義語の間の細かな意味の差異を理解することができる。例えば、“果断”と“武断”は同義語であるが、“果断”は“遅疑”(ためらう。躊躇する)と反意語の関係になる。“武断”は“審慎”(周到かつ慎重である)と反意語の関係になる。“遅疑”と“審慎”の意味の上での差異から、“果断”(断固として。きっぱりと)と“武断”(独断。権勢を盾にみだりに裁断する)という同義語の細かな差異を見ることができる。
ここから、言語の語彙の中で、言葉と言葉の間、語義と語義の間は互いに連携し合い、互いに制約し合い、これらの関係は複雑である。これらの複雑な相互関係が、語彙の完全な系統を形作る。したがって、正しく言葉の意味、機能、用法を把握するには、これをその他の言葉との連携の中に置いて検討しなければならない。
【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年