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これまで何回かで、中国語の文法上の最小単位は“詞”、一方、独立して運用でき、意味を有する言語の最小単位を“語素”といい、一般に漢字一文字が“語素”に当たり、“詞”はこの語素の組合せにより構成されることを見てきました。“詞”は文法上の基本単位であることは分かりましたが、それでは“詞”はどのような構造になっているか、というのが、今回のテーマです。
一 詞の形式
詞の形式は、二つの面から見ることができる。一つは音節の数による区分。もう一つは、詞を構成する語素の数による区分である。
(一)単音詞と複音詞
単音詞とは、一つの音節で構成される詞である。例えば:
天 地 人 牛 馬 走 吃 大 紅 一 二
複音詞は、二つ、或いは二つ以上の音節から構成される詞を指す。例えば:
藝術 討論 問題 運動 見解 実際
出発 定義 語言学 候選人 人民性 噴気式
生産力 唯物主義 物理学家
現代漢語の語彙の中では、二音節で構成される詞が多数を占める。
以下の文章を見てみよう:
現実主義 文藝 在 中国 有 悠久 的 歴史 和
很 高 的 成就, 杜甫 的 詩, 関漢卿 的 戯劇,
曹雪芹 的 小説, 都 是 代表 作品,
在 文学史 上 已 占有 重要 的 位置。
この34個の詞で構成される文章の中で、二音節の詞は13個あり、それ以外では、単音節の詞が17個、三音節の詞が3個、四音節の詞が1個ある。
言語の進化、発展から見ると、現代漢語の語彙の特徴はより明確になる。現代漢語の発展過程で、多くの単音詞は次第に二音詞に変化した。多くの三音節以上の詞や詞組も、短縮されて二音詞となった。例えば:
民 ― 人民 友 ― 朋友 学 ― 学習 信 ― 相信
師 ― 老師 石 ― 石頭 雖 ― 雖然 但 ― 但是
少数の科学技術用語を除き、短音節の詞は再び生まれてきていないかのようである。したがって、二音節の詞が優勢を占めるというのは、現代漢語の語音形式上の重要な特徴である。
更にもう一歩、現代漢語の語音形式を研究すると、それらの中のいくつかの特殊な形式を発見することができる。それは畳音(畳音詞:同一の音節の重複により構成される詞)、双音(双声。二音節語の二つの文字が声母、つまり子音を同じくすること)、畳韻(二音節語の二つの文字が韻母を同じくすること)、などである。これら特殊な形式を備えた二音詞は、語音表現上、しばしばその文章作品に、音楽美を備えさせ、そこから好ましい表現効果をもたらすことができる。
(二)単純詞と合成詞
それぞれの詞の異なる内部の構造形式により、現代漢語の詞は単純詞と合成詞の二つに分けることができる。一つの語素から構成される詞は単純詞と呼ばれる。例えば:
人 少 向 芙蓉 疙瘩 馬達 白脱
托拉斯 法西斯
いくつかの語素が組み合わさり構成された詞を合成詞と呼ぶ。例えば:
意義 胖子 拖拉机 自行車 社会主義
中国語の中の合成詞は、多くは二つの語素から構成され、二つ以上の語素で構成されるものもある。二つ以上の語素から構成される合成詞で、それぞれの語素の間の関係は、しばしば異なる。合成詞の各語素の間の関係をはっきりさせることは、ことばの意味を正確に理解するのに役立つ。例えば、“老人家”は“老的人家”のことではないし、“反現実主義”は“反対現実主義”のことではない。
単純詞と単音詞、合成詞と複音詞は、異なった基準に基づき区分されたものであり、それらの関係は、下記のように表すことができる。
単純詞 ■ 天、 地、 人、 走 ● 単音詞
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単純詞 ■ 芙蓉、 葡萄、 托拉斯、 奥林匹克 ○ 複音詞
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合成詞 □ 意義、 語言、 胖子、 卓子、 拖拉机 ○ 複音詞
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合成詞 □ 邏輯学、 法西斯主義 ○ 複音詞
二 合成詞の構成形式
現代漢語の語彙の中で、合成詞は数の上で絶対多数を占めるだけでなく、多種多様の構成方式がある。その中で重要なものは、下記のいくつかの様式である。
(一)不定位語素が定位語素と連結して構成される合成詞
これは、一般に言うところの派生詞である。これは三つの種類に分けられる。(“定位語素”、“不定位語素”については、<語素から語句の構造を見る>の回を参照のこと。)
1.定位語素が前に置かれるもの
現代漢語には、“老”、“阿”、“可”、“反”、“非”、“汎”、“超”、“無”といった定位語素がある。これらの大部分は、語彙としての意味を表すだけでなく、文法的な意味(接頭語になる)も表わす。例えば:
老鷹、 老虎、 老師、 阿姨、 阿爺、 阿哥、 可変、 可靠
反封建、 反法西斯、 非党、 非正式、 非重点、 汎神論
汎霊論、 汎美主義、 超時代、 超声波、 超音速、 無常
無窮、 無比
2.定位語素が後ろに置かれるもの
定位語素が後ろに置かれる合成詞は、現代漢語の中では比較的多い。主要なものに、“子”、“儿”、“頭”、“性”、“者”、“員”、“家”、“手”、“化”などがある。その中には、単純に文法的な意味を表すもの(語尾について名詞化する)、一定の語彙的な意味を表し、且つ語法的な意味も表わすものがある。例えば:
桌子、 胖子、 兔子、 活儿、 鳥儿
錯儿、 木頭、 听頭、 苦頭
独立性、 階級性、 創造性
学者、 作者、 労働者、 学員、 職員、 通訊員
作家、 画家、 思想家、 旗手、 歌手、 坦克手
同比、 異化、 人格化、 軍事化
この他、中国語には常に二つの語素の中間に置かれる不自由語素がある。(“自由語素”、“不自由語素”については、<語素から語句の構造を見る>の回を参照)すなわち、“里”、“得”、“不”などである。
“里”を用いて構成される詞には、貶義、つまり蔑みの意味が含まれる。例えば:
傻里傻気 土里土気 胡里胡涂 古里古怪
・傻里傻気 sha3lisha3qi4 間が抜けた様子
・土里土気 tu3litu3qi4 野暮ったい。田舎くさい
・胡里胡涂 hu2lihu2tu 道理がはっきりしない。ぼんやりしている
・古里古怪 gu3ligu3guai4 変てこである。風変わりである
“得”、“不”を用いて構成される詞には、次のようなものがある。
吃不消 来不及 対不起
吃得消 来得及 対得起
ここで、上記のような詞の中での“得”、“不”と、“后補詞組”(后補短語ともいう。動詞、形容詞と、その補充的な説明の詞とで構成される詞組)での“得”、“不”とは区別しなければならない。后補詞組で、“得”、“不”は詞である。例えば、“搞得好”、“看得懂”、“打不破”、“弄不坏”などの詞組で、この中の“得”、“不”は、これだけで単独の詞であるので、取り去ることができる。それに対し、上記の“吃不消”、“来不及”といった詞の中では、“得”、“不”は一つの詞を構成する一部分となっており(独立した詞ではなく、詞を構成する語素であるので)、取り去ることはできない。
3.一つの不定位語素の前後が何れも定位語素であるもの
この種類の合成詞は、現代漢語の中ではあまり多くない。例えば、“反法西斯主義者”、“可靠性”などがそうである。
以上、不定位語素と定位語素の結合によって構成される詞を見てきたが、以下の点に注意しなければならない。
第一、現代漢語の定位語素は、大部分がかつては不定位語素であったものが変化してできたもので、虚化、つまり本来持っていた意味を失った結果である。これは、ことばが進化する過程で起こる現象で、形成過程のものもあり、虚化の程度はそれぞれ異なる。したがって、これと、まだ虚化しておらず、形式上は定位語素と同じ“詞根”(自由、或いは不自由な不定位語素。<語素から語句の構造を見る>参照。「語幹」と訳される)とは、区別しなければならない。例えば:
“老鷹”の“老”と“老調”の“老”は異なる。
“緑化”の“化”と“変化”の“化”は異なる
“卓子”の“子”と“棋子”の“子”は異なる
“創造性”の“性”と“男性”の“性”は異なる
“木頭”の“頭”と“香煙頭”の“頭”は異なる
これらは何れも、前者が虚化した定位語素、後者は詞根である。
不定位語素と定位語素の区別: 定位語素の意味は比較的抽象的で、概括的で、時には文法的な意味を表すだけである。一方、不定位語素の意味は具体的で、語彙としての意味を表す。
第二、いくつかの定位語は、依然として語彙としての意味を持っている。例えば、“阿”は常に親しみやすく温かい感情的色彩を持っている。試しに、“姨媽”、“姨姨”と“阿姨”、“哥哥”と“阿哥”を比べてみてほしい。
第三、定位語素は、詞を構成する中で、常に類似化する作用を持っている。例えば、後ろに“頭”、“子”の付く詞は、一般に全て名詞である。後ろに“化”の付く詞は、一般に全て動詞である。後ろに“性”の付く詞は、一般に抽象的な意味の名詞である。
【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂本 上海教育出版社1995年
合成詞にはもうひとつ、不定位語素どうしが結合してできたものがありますが、これについては、次回に見ていきたいと思います。