連動式、兼語式というのは、英語のto不定詞や-ing分詞形、或いは日本語の助詞(て・に・を・は)のようなものの無い中国語の文の構成に欠くことのできない構文です。述語の構造の分析で、今回は、連動式、兼語式を取り上げます。
三 連動述語と兼語述語
(一)連動詞組と連動式
連動詞組、つまり二つ以上の動詞が重なった詞組は他の詞組と同様、文を構成する材料となる。例えば:
(1)団結起来走共同富裕的道路是大家的願望。
(2)那些都是来参観的人。
(3)我挙双手賛成。
連動詞組が述語になった文(例(3))は、“連動式”と呼ばれる。構造から見て、連動関係は複数の動作や行為を包含しているので、これらは細かく分割することができる。これをⅠ、Ⅱ、Ⅲ、……で表すと、次のようになる:
(4)老李∥站起身来 軽軽地拉開門 走了出去。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
(5)黄参謀∥拿起筆来 写好報告 交給旁辺的通訊員。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
(6)許光発∥站起来 迎接他們。
Ⅰ Ⅱ
(7)這些東西∥炒着 吃。
Ⅰ Ⅱ
(8)大家∥扛着鋤頭 跑来了。
Ⅰ Ⅱ
(9)南方的人∥過冬 不穿棉衣。
Ⅰ Ⅱ
(10) 他的病假単∥一直揣在口袋里 没有交出来。
Ⅰ Ⅱ
これらの文は何れも連動式だが、述語の中の各節の意味関係は必ずしも同じではない。例(4)、例(5)のⅠ、ⅡとⅢは前後の動作を表している。例(6)、例(7)のⅠとⅡは前後の動作の関係があると同時に、ⅠはⅡの方法や手段であり、ⅡはⅠの目的である。例(8)のⅠとⅡは、前後関係は無く、ただⅠはⅡの方式や方法であることを表すだけである。例(9)のⅠとⅡも前後関係は無く、ⅡはⅠの方式、方法である。例(10)では、ⅠとⅡは前後関係が無いだけでなく、方式、手段、目的といた関係も無く、ⅠとⅡは正反両面から主語を説明し、これらは相互に補完関係にある。
“他倒杯茶喝”も連動式であるが、連動式の特殊な型である。“倒”は“喝”の方法を表し、“喝”は“倒”の目的で、且つ“倒”と“喝”は同じ主語“他”に属している。ここまでは一般の連動式と同じである。一般の連動式と異なるのは、この文の前の動詞の賓語は、後ろの動詞の動作の対象であり、後ろの動詞は賓語を伴うことができない点である。
(二)兼語詞組と兼語式
兼語詞組、つまり前の動詞の賓語が、後ろの動詞の表す動作、行為の送り手となっている構造の詞組も、他の詞組と同様、文を構成する材料となる。例えば:
(1)譲他去承担這一任務是很合適的。
(2)這真是令人高興的事。
(3)我請你写一篇文章。
兼語詞組が文の述語になるもの(例えば例(3))を、“兼語式”と呼ぶ。兼語式の述語は、三つの部分に分けることができる。つまり、Ⅰ:動詞、Ⅱ:兼語、Ⅲ:兼語の陳述部分である。例えば:
(4)這件事∥使 我 非常着急。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
(5)你∥(為什麼不)叫 他 馬上来?
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
兼語式の特徴は:
1.動詞に使役や促す意味を持ち、通常、“使”、“叫”、“譲”、“請”、“命令”、“派”、“禁止”、等を用いる。①
[注①]“我們要保護眼睛不受損害”、“上級指定他作代表”といった文は、使役の意味を包含しているので、兼語式と見做すこともできる。
2.動詞の表す動作は、たいてい兼語が陳述する部分の原因であるので、兼語が陳述する部分は動作の到達しなければいけない目的や生み出さねばならない結果である。例えば、例(5)で、“叫”は“馬上来”の原因であり、且つ“馬上来”は“叫”の目的である。
3.兼語と兼語の陳述部分は、陳述・非陳述の関係がある。
以上の特徴に基づき、兼語式と非兼語式を区分することができる。例えば、主述詞組を賓語とする文は、兼語式と形式上はよく似ているが、決して同じではない。例えば:
(6)我∥希望大家来。
(7)我∥請大家来。
二つの文の述語は、何れも「動詞+人称代詞+動詞」であるが、これらには次のような区別がある:
第一、“希望”には使役の意味は含まれず、“請”は使役の意味を含む。
第二、“希望”と“来”には因果関係が無く、“大家”=皆が来るかどうかは、“希望”したか否かの結果ではない。一方、“請”と“来”には因果関係があり、請うたから、来たのである。
第三、語音の停頓、つまりポーズがどこに入るかによって区別する。例えば、“我希望――大家来”は、主述詞組を賓語とする文であり、“我請大家――来”は兼語式である。
第四、例(6)は文を“我希望的是大家来”、或いは“大家来是我希望的”というように変えて言うことができるが、例(7)はこのような言い換えができないことから、二つの文の構造が異なることが分かる。
兼語式の中に、連動詞組を当てはめて(“套用”)使うことができる。例えば:
(8)那次戦役中,有不少人去野戦医院做護理工作。
(9)老魏叫董事留下来開董事会。
同様に、連動式の中に兼語詞組を当てはめて使うこともできる。例えば:
(10)他站起来騰出一把椅子請我坐下。
(11)営業員跑過来従書架上取下一本小説譲小李看。
“有”は単独で述語になるが、その時の主語はたいてい存在する事物を表す。例えば、“老的有,小的也有”というようになる。また、“有”と別の詞組の組合せにより動賓述語が形成される。例えば、“他有経験”、“他有説有笑”、“他有五尺高”がそうである。“有”が伴う賓語は、名詞性の時も、非名詞性の時もあるが、前の動詞が“有”である連動式や兼語式では、“有”が伴う賓語は常に名詞性である。
“有”を使って構成される連動式は、例えば:
(1)公民対于任何違法失職的国家機関和企業、事業単位的工作人員,有権向各級国家機関提出控告。
(2)在工作十分繁忙的情況下,他没有心思再去考慮個人的事情了。
上の文の中の“有”が表すのは従属(“領属”)関係である。注意する必要があるのは、“我有一点儿不舒服”、“他没有你那麼高”のようなケースは、動詞述語文であり、連動述語文ではないということである。“有”はここでは推量(“估量”)を表し、賓語は推量の結果である。単純に“有不舒服”、“有高”と言うことはできない。なぜなら、推量の結果の説明になっていないからである。“一点儿不舒服”、“你那麼高”は何れも推量の結果を表し、形容詞性の詞組を“有”の賓語としている。
“有”を用いて構成される兼語式は、例えば次のようなものである:
(3)有個村子叫張家庄。
(4)会場里有些人在発表意見。
(5)我們班級有両位同学懂得好几種外語。
(6)他有個朋友住在杭州。
例(3)は主述文でないが、それ以外は主述文である。例(3)と例(4)の“有”は存在を表し、“有”の後ろの語句は存在する事物である。例(5)と例(6)の“有”は従属を表し、“有”の後ろの事物は前の主語に属する。このような兼語式の中の兼語は、通常、不特定のものであり、したがって、“有”の後ろには一般に固有名詞は置かれない。つまり、“有人在発表意見”と言うけれども、“有張三在発表意見”とは言わないのである。したがって、“有”の後ろの兼語は“這個”、“那個”で修飾されることはなく、“一個”、“几位”、“好些”などで修飾される。
“大家有事做”は連動式である。なぜなら、“有”、“做”は同一の主語“大家”を陳述するからである。
【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年
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三 連動述語と兼語述語
(一)連動詞組と連動式
連動詞組、つまり二つ以上の動詞が重なった詞組は他の詞組と同様、文を構成する材料となる。例えば:
(1)団結起来走共同富裕的道路是大家的願望。
(2)那些都是来参観的人。
(3)我挙双手賛成。
連動詞組が述語になった文(例(3))は、“連動式”と呼ばれる。構造から見て、連動関係は複数の動作や行為を包含しているので、これらは細かく分割することができる。これをⅠ、Ⅱ、Ⅲ、……で表すと、次のようになる:
(4)老李∥站起身来 軽軽地拉開門 走了出去。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
(5)黄参謀∥拿起筆来 写好報告 交給旁辺的通訊員。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
(6)許光発∥站起来 迎接他們。
Ⅰ Ⅱ
(7)這些東西∥炒着 吃。
Ⅰ Ⅱ
(8)大家∥扛着鋤頭 跑来了。
Ⅰ Ⅱ
(9)南方的人∥過冬 不穿棉衣。
Ⅰ Ⅱ
(10) 他的病假単∥一直揣在口袋里 没有交出来。
Ⅰ Ⅱ
これらの文は何れも連動式だが、述語の中の各節の意味関係は必ずしも同じではない。例(4)、例(5)のⅠ、ⅡとⅢは前後の動作を表している。例(6)、例(7)のⅠとⅡは前後の動作の関係があると同時に、ⅠはⅡの方法や手段であり、ⅡはⅠの目的である。例(8)のⅠとⅡは、前後関係は無く、ただⅠはⅡの方式や方法であることを表すだけである。例(9)のⅠとⅡも前後関係は無く、ⅡはⅠの方式、方法である。例(10)では、ⅠとⅡは前後関係が無いだけでなく、方式、手段、目的といた関係も無く、ⅠとⅡは正反両面から主語を説明し、これらは相互に補完関係にある。
“他倒杯茶喝”も連動式であるが、連動式の特殊な型である。“倒”は“喝”の方法を表し、“喝”は“倒”の目的で、且つ“倒”と“喝”は同じ主語“他”に属している。ここまでは一般の連動式と同じである。一般の連動式と異なるのは、この文の前の動詞の賓語は、後ろの動詞の動作の対象であり、後ろの動詞は賓語を伴うことができない点である。
(二)兼語詞組と兼語式
兼語詞組、つまり前の動詞の賓語が、後ろの動詞の表す動作、行為の送り手となっている構造の詞組も、他の詞組と同様、文を構成する材料となる。例えば:
(1)譲他去承担這一任務是很合適的。
(2)這真是令人高興的事。
(3)我請你写一篇文章。
兼語詞組が文の述語になるもの(例えば例(3))を、“兼語式”と呼ぶ。兼語式の述語は、三つの部分に分けることができる。つまり、Ⅰ:動詞、Ⅱ:兼語、Ⅲ:兼語の陳述部分である。例えば:
(4)這件事∥使 我 非常着急。
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
(5)你∥(為什麼不)叫 他 馬上来?
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
兼語式の特徴は:
1.動詞に使役や促す意味を持ち、通常、“使”、“叫”、“譲”、“請”、“命令”、“派”、“禁止”、等を用いる。①
[注①]“我們要保護眼睛不受損害”、“上級指定他作代表”といった文は、使役の意味を包含しているので、兼語式と見做すこともできる。
2.動詞の表す動作は、たいてい兼語が陳述する部分の原因であるので、兼語が陳述する部分は動作の到達しなければいけない目的や生み出さねばならない結果である。例えば、例(5)で、“叫”は“馬上来”の原因であり、且つ“馬上来”は“叫”の目的である。
3.兼語と兼語の陳述部分は、陳述・非陳述の関係がある。
以上の特徴に基づき、兼語式と非兼語式を区分することができる。例えば、主述詞組を賓語とする文は、兼語式と形式上はよく似ているが、決して同じではない。例えば:
(6)我∥希望大家来。
(7)我∥請大家来。
二つの文の述語は、何れも「動詞+人称代詞+動詞」であるが、これらには次のような区別がある:
第一、“希望”には使役の意味は含まれず、“請”は使役の意味を含む。
第二、“希望”と“来”には因果関係が無く、“大家”=皆が来るかどうかは、“希望”したか否かの結果ではない。一方、“請”と“来”には因果関係があり、請うたから、来たのである。
第三、語音の停頓、つまりポーズがどこに入るかによって区別する。例えば、“我希望――大家来”は、主述詞組を賓語とする文であり、“我請大家――来”は兼語式である。
第四、例(6)は文を“我希望的是大家来”、或いは“大家来是我希望的”というように変えて言うことができるが、例(7)はこのような言い換えができないことから、二つの文の構造が異なることが分かる。
兼語式の中に、連動詞組を当てはめて(“套用”)使うことができる。例えば:
(8)那次戦役中,有不少人去野戦医院做護理工作。
(9)老魏叫董事留下来開董事会。
同様に、連動式の中に兼語詞組を当てはめて使うこともできる。例えば:
(10)他站起来騰出一把椅子請我坐下。
(11)営業員跑過来従書架上取下一本小説譲小李看。
“有”は単独で述語になるが、その時の主語はたいてい存在する事物を表す。例えば、“老的有,小的也有”というようになる。また、“有”と別の詞組の組合せにより動賓述語が形成される。例えば、“他有経験”、“他有説有笑”、“他有五尺高”がそうである。“有”が伴う賓語は、名詞性の時も、非名詞性の時もあるが、前の動詞が“有”である連動式や兼語式では、“有”が伴う賓語は常に名詞性である。
“有”を使って構成される連動式は、例えば:
(1)公民対于任何違法失職的国家機関和企業、事業単位的工作人員,有権向各級国家機関提出控告。
(2)在工作十分繁忙的情況下,他没有心思再去考慮個人的事情了。
上の文の中の“有”が表すのは従属(“領属”)関係である。注意する必要があるのは、“我有一点儿不舒服”、“他没有你那麼高”のようなケースは、動詞述語文であり、連動述語文ではないということである。“有”はここでは推量(“估量”)を表し、賓語は推量の結果である。単純に“有不舒服”、“有高”と言うことはできない。なぜなら、推量の結果の説明になっていないからである。“一点儿不舒服”、“你那麼高”は何れも推量の結果を表し、形容詞性の詞組を“有”の賓語としている。
“有”を用いて構成される兼語式は、例えば次のようなものである:
(3)有個村子叫張家庄。
(4)会場里有些人在発表意見。
(5)我們班級有両位同学懂得好几種外語。
(6)他有個朋友住在杭州。
例(3)は主述文でないが、それ以外は主述文である。例(3)と例(4)の“有”は存在を表し、“有”の後ろの語句は存在する事物である。例(5)と例(6)の“有”は従属を表し、“有”の後ろの事物は前の主語に属する。このような兼語式の中の兼語は、通常、不特定のものであり、したがって、“有”の後ろには一般に固有名詞は置かれない。つまり、“有人在発表意見”と言うけれども、“有張三在発表意見”とは言わないのである。したがって、“有”の後ろの兼語は“這個”、“那個”で修飾されることはなく、“一個”、“几位”、“好些”などで修飾される。
“大家有事做”は連動式である。なぜなら、“有”、“做”は同一の主語“大家”を陳述するからである。
【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年
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