今回取り上げるのは、文の直接の構成成分ではないが、完全に別のクローズ(分句)にもならない、しかし表現上は意味を強めたり、文が冗長になるいことを防ぎ、表現を豊かにする、という文法成分です。表題に掲げた、文全体の修飾語、文の提示成分、独立成分の三つに分けて説明をします。
文の特殊成分
文の特殊成分とは、文全体の修飾語、提示成分、独立成分を言う。これら三者の特徴は、文に付着し、文を離れて独立することはできないが、文を構成する直接成分ではないので、これを文の特殊成分と呼ぶ。
一 文全体の修飾語とその機能
主述文は文全体の修飾語を伴うことがある。このような修飾語が文頭に現れる時は、文頭の状況語と見做すこともできる。例えば:
(1)除了少数人之外,大家都賛成這個方案。
(2)関于這件事,我們已経討論過了。
介詞構造はしばしば文頭に置かれ、文全体の修飾語になる。“関于”、“対于(対)”、及び“在……以后”、“在……方面”、“在……時”を用いて構成される介詞構造以外に、文全体の修飾語は更にいつも“在……上”、“在……下”、“在……中”といった介詞構造を用いる。これらの介詞構造は、もともとこれらを用いることで方位、場所、時間を表す。例えば、“在桌子上”、“在灯光下”、“在春節中”がそうである。後に、これらが派生(“引申”)して条件、範囲を表すようになった。例えば、“在他的領導下”、“在生産上”、“在調査研究中”がそうである。注意すべきは“在……上”、“在……下”を用いる時、「主語+述語(動詞+賓語)」のような構造形式を挿入できないことである。“在学習上”、“在大家的幇助下”と言うことはできるが、“在我們学習外語上”、“在大家幇助我們下”と言うことはできない。
時間を表す名詞や詞組も、しばしば文全体の修飾語になる。例えば:
(3)下午我們開小組会。
(4)三天之后,風力会加強,気温会下降。
副詞、形容詞、場所を表す名詞や詞組は、文全体の修飾語になることがある。例えば:
(5)忽然人們発出了一陣笑声。
(6)慢慢地,他驚奇地発現,随着一封封信的往来,他和老人的心在一天天靠近……
(7)津浦路上,他遇到一位多年不見的朋友。
述語の中の修飾成分で、とりわけ時間を表すものは、しばしば文頭に持って来られ、文全体の修飾語になる。このような修飾成分の性質の変化は、表現上の必要のためである。それは、あるものは時間を突出させるため、あるものは前の文と意味をつなげるため、あるものは言葉を簡潔でわかりやすくするためである。時間を突出させる例は:
(8)夏天,他堅持鍛煉;冬天,他仍旧堅持鍛煉。
前の文と意味をつなげる例は:
(9)(他接連鍛煉了三個月)那時候,驕陽如火,別人都思歇一歇,他却能堅持。
もちろん、全ての述語の修飾成分が文頭に持って来られて文全体の修飾成分になる訳ではない。たとえ時間を表す修飾語でも、移動できるものはたいてい時間名詞に限られる。副詞や形容詞はたいていは移動できない。とりわけ単音節のものはそうである。例えば、“我早上就知道了”は、“早上我就知道了”と言うことができる。一方、“我早就知道了”は“早我就知道了”と言うことはできない。しかし“很早我就知道了”と言うことはできる。
反対に、文全体の修飾語が皆述語に移動して修飾成分になる訳ではない。例えば“関于”、“至于”を用いて構成される介詞構造は文全体の修飾語になるが、あまり移動させることはできない。時間を表す語句の位置は、比較的融通が利くが、次のような文では、文全体の修飾語に留めておくのがふさわしい。
(10)在1986年9月22日,新疆部分地区可以看到日全食,上海什麼也看不到。
いくつかの修飾語は、文頭に置くこともできるし文中に置くこともできるが、表現する意味は異なる。例えば:
(11)幸而他来了,要不然我們要迷路了。
(12)他幸而来了,要不然他一個人要迷路的。
二 提示成分とその機能
二つの詞、或いは詞組が指すのが同一の事物で、それらが組み合わさって一つの言語単位になるもの、例えば“五一節那天”、“中国的首都北京”、“中朝両国”、“雷鋒同志”、“你老王”は、前に説明した同位詞組である。また、“反封建的旗幟”、“先進集団的光栄称号”のような偏正詞組で構成される部分も同一の関係があり、前者の“的”は“這面”に変えることができ、後者の“的”は“這個”に変えることができる。このような同一性のものの組合せは、一つの単位として使用される。もし二つの詞や詞組が指すものが同一の事物であり、一つは文の中で文の一部となり、もう一つが文頭、或いは文末に置かれ、主語や述語の一部に属さない時、文頭、或いは文末のこの部分を提示成分と呼ぶ。提示成分には、二つの種類がある。
(一)代詞復唱型(“称代式”)の提示成分
代詞復唱型の提示成分は一般に文頭に置かれ、文中では代詞を用いてそれを指す。提示成分の後ろは、明らかに語気の停頓、ポーズが入るので、文章では通常コンマ(,)やダッシュ(―)を用いて表示する。例えば:
(1)国家的統一,人民的団結,国内各民族的団結,這是我們的事業必定要勝利的基本保証。
(2)母親――這是多麼親切、多麼偉大的名子啊!
代詞復唱型の提示成分がたまたま文の後ろに倒置されることがある。例えば:
(3)我們常常想念他,敬愛的胡老師。
(二)全体+部分型(“総分式”)の提示成分
文頭の提示成分は、全体の説明をし、文中にはそれに呼応する部分的な説明部分がある。部分的な説明の部分は、クローズ(節、分句)の主語となる。これが全体と部分の提示成分である。このような提示成分の後ろには、一般に音声の停頓(ポーズ)があり、書面ではコンマ(,)やコロン(:)を使って表す。常に“的”を使った構造、或いは“一個”などを使って部分的な説明をする。例えば:
(4)全村農民,有的在割麦,有的在挿秧,有的在従事別的労働。
(5)姚志蘭和呉天宝,一個是電話員,一個是火車司机。
(6)婆媳二人,儿媳頂個全労働力,婆婆一日不閑。
文によっては、部分説明の部分は一つしか出てこない。例えば:
(7)参加這項科研工作的人,年紀軽的占百分之七十。
また、文によっては提示成分が部分説明の部分で、文末、文中に分けて説明しているものが全体の説明部分に相当する。例えば:
(8)文科有五個系,中文、歴史、哲学、経済、新聞。
(9)這里有三種人,同意的、反対的、中立的。
“××説”がいくつものクローズ(節)の先頭に置かれるのも、一種の提示成分である。
提示成分の主要な機能は文の条理を明確にすることである。文の前方には音声の停頓(ポーズ)があり、また文中で代詞やその他の相応する詞で再提起(“復指”)するので、表現する事物がたいへん強調される。時にはこうした句式を採用することで明らかに語気が活発になり、意味が明確になる。例えば例(2)がそうである。文によっては、こうした句式を採用することで、文がだらだらしたり(“拖沓”)、くどくなったり(“累贅”)するのを防いでいる。
意味を正確に、綿密に表すため、修飾語が長くなってしまうことがあるが、修飾語が長過ぎたり複雑になると、文がだらだらしてくるので、一定の条件下で、提示成分を用いて長い修飾語に取って替えるのは、良い方法である。例えば:
(10)你怎麼能随随便便把農民辛辛苦苦種出来的糧食糟踏了呢?
この文は“農民辛辛苦苦種出来的糧食,你怎麼能随随便便把它糟踏了呢?”に変えた方が良い。
提示成分は主述詞組であってはならない。さもないと、複文の中のクローズ(分句)になってしまう。例えば:
(11)新生的必然代替腐朽的,這是自然界発展的規律,也是社会発展的規律。
(12)調査有両種方法,一種是走馬看花,一種是下馬看花。
・走馬看花[成語]馬を飛ばして花見をする。大ざっぱに物事の表面だけを見るたとえ。
・下馬看花[成語]馬から降りて花を見る。じっくり観察し、調査、研究するたとえ。
上の例(11)、(12)は、意味の上では文全体の提示ではあるが、主述詞組なので、ここで言っている提示部分とは文法的には異なる。
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3つ目の独立成分については、次回に説明します。
【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年
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文の特殊成分
文の特殊成分とは、文全体の修飾語、提示成分、独立成分を言う。これら三者の特徴は、文に付着し、文を離れて独立することはできないが、文を構成する直接成分ではないので、これを文の特殊成分と呼ぶ。
一 文全体の修飾語とその機能
主述文は文全体の修飾語を伴うことがある。このような修飾語が文頭に現れる時は、文頭の状況語と見做すこともできる。例えば:
(1)除了少数人之外,大家都賛成這個方案。
(2)関于這件事,我們已経討論過了。
介詞構造はしばしば文頭に置かれ、文全体の修飾語になる。“関于”、“対于(対)”、及び“在……以后”、“在……方面”、“在……時”を用いて構成される介詞構造以外に、文全体の修飾語は更にいつも“在……上”、“在……下”、“在……中”といった介詞構造を用いる。これらの介詞構造は、もともとこれらを用いることで方位、場所、時間を表す。例えば、“在桌子上”、“在灯光下”、“在春節中”がそうである。後に、これらが派生(“引申”)して条件、範囲を表すようになった。例えば、“在他的領導下”、“在生産上”、“在調査研究中”がそうである。注意すべきは“在……上”、“在……下”を用いる時、「主語+述語(動詞+賓語)」のような構造形式を挿入できないことである。“在学習上”、“在大家的幇助下”と言うことはできるが、“在我們学習外語上”、“在大家幇助我們下”と言うことはできない。
時間を表す名詞や詞組も、しばしば文全体の修飾語になる。例えば:
(3)下午我們開小組会。
(4)三天之后,風力会加強,気温会下降。
副詞、形容詞、場所を表す名詞や詞組は、文全体の修飾語になることがある。例えば:
(5)忽然人們発出了一陣笑声。
(6)慢慢地,他驚奇地発現,随着一封封信的往来,他和老人的心在一天天靠近……
(7)津浦路上,他遇到一位多年不見的朋友。
述語の中の修飾成分で、とりわけ時間を表すものは、しばしば文頭に持って来られ、文全体の修飾語になる。このような修飾成分の性質の変化は、表現上の必要のためである。それは、あるものは時間を突出させるため、あるものは前の文と意味をつなげるため、あるものは言葉を簡潔でわかりやすくするためである。時間を突出させる例は:
(8)夏天,他堅持鍛煉;冬天,他仍旧堅持鍛煉。
前の文と意味をつなげる例は:
(9)(他接連鍛煉了三個月)那時候,驕陽如火,別人都思歇一歇,他却能堅持。
もちろん、全ての述語の修飾成分が文頭に持って来られて文全体の修飾成分になる訳ではない。たとえ時間を表す修飾語でも、移動できるものはたいてい時間名詞に限られる。副詞や形容詞はたいていは移動できない。とりわけ単音節のものはそうである。例えば、“我早上就知道了”は、“早上我就知道了”と言うことができる。一方、“我早就知道了”は“早我就知道了”と言うことはできない。しかし“很早我就知道了”と言うことはできる。
反対に、文全体の修飾語が皆述語に移動して修飾成分になる訳ではない。例えば“関于”、“至于”を用いて構成される介詞構造は文全体の修飾語になるが、あまり移動させることはできない。時間を表す語句の位置は、比較的融通が利くが、次のような文では、文全体の修飾語に留めておくのがふさわしい。
(10)在1986年9月22日,新疆部分地区可以看到日全食,上海什麼也看不到。
いくつかの修飾語は、文頭に置くこともできるし文中に置くこともできるが、表現する意味は異なる。例えば:
(11)幸而他来了,要不然我們要迷路了。
(12)他幸而来了,要不然他一個人要迷路的。
二 提示成分とその機能
二つの詞、或いは詞組が指すのが同一の事物で、それらが組み合わさって一つの言語単位になるもの、例えば“五一節那天”、“中国的首都北京”、“中朝両国”、“雷鋒同志”、“你老王”は、前に説明した同位詞組である。また、“反封建的旗幟”、“先進集団的光栄称号”のような偏正詞組で構成される部分も同一の関係があり、前者の“的”は“這面”に変えることができ、後者の“的”は“這個”に変えることができる。このような同一性のものの組合せは、一つの単位として使用される。もし二つの詞や詞組が指すものが同一の事物であり、一つは文の中で文の一部となり、もう一つが文頭、或いは文末に置かれ、主語や述語の一部に属さない時、文頭、或いは文末のこの部分を提示成分と呼ぶ。提示成分には、二つの種類がある。
(一)代詞復唱型(“称代式”)の提示成分
代詞復唱型の提示成分は一般に文頭に置かれ、文中では代詞を用いてそれを指す。提示成分の後ろは、明らかに語気の停頓、ポーズが入るので、文章では通常コンマ(,)やダッシュ(―)を用いて表示する。例えば:
(1)国家的統一,人民的団結,国内各民族的団結,這是我們的事業必定要勝利的基本保証。
(2)母親――這是多麼親切、多麼偉大的名子啊!
代詞復唱型の提示成分がたまたま文の後ろに倒置されることがある。例えば:
(3)我們常常想念他,敬愛的胡老師。
(二)全体+部分型(“総分式”)の提示成分
文頭の提示成分は、全体の説明をし、文中にはそれに呼応する部分的な説明部分がある。部分的な説明の部分は、クローズ(節、分句)の主語となる。これが全体と部分の提示成分である。このような提示成分の後ろには、一般に音声の停頓(ポーズ)があり、書面ではコンマ(,)やコロン(:)を使って表す。常に“的”を使った構造、或いは“一個”などを使って部分的な説明をする。例えば:
(4)全村農民,有的在割麦,有的在挿秧,有的在従事別的労働。
(5)姚志蘭和呉天宝,一個是電話員,一個是火車司机。
(6)婆媳二人,儿媳頂個全労働力,婆婆一日不閑。
文によっては、部分説明の部分は一つしか出てこない。例えば:
(7)参加這項科研工作的人,年紀軽的占百分之七十。
また、文によっては提示成分が部分説明の部分で、文末、文中に分けて説明しているものが全体の説明部分に相当する。例えば:
(8)文科有五個系,中文、歴史、哲学、経済、新聞。
(9)這里有三種人,同意的、反対的、中立的。
“××説”がいくつものクローズ(節)の先頭に置かれるのも、一種の提示成分である。
提示成分の主要な機能は文の条理を明確にすることである。文の前方には音声の停頓(ポーズ)があり、また文中で代詞やその他の相応する詞で再提起(“復指”)するので、表現する事物がたいへん強調される。時にはこうした句式を採用することで明らかに語気が活発になり、意味が明確になる。例えば例(2)がそうである。文によっては、こうした句式を採用することで、文がだらだらしたり(“拖沓”)、くどくなったり(“累贅”)するのを防いでいる。
意味を正確に、綿密に表すため、修飾語が長くなってしまうことがあるが、修飾語が長過ぎたり複雑になると、文がだらだらしてくるので、一定の条件下で、提示成分を用いて長い修飾語に取って替えるのは、良い方法である。例えば:
(10)你怎麼能随随便便把農民辛辛苦苦種出来的糧食糟踏了呢?
この文は“農民辛辛苦苦種出来的糧食,你怎麼能随随便便把它糟踏了呢?”に変えた方が良い。
提示成分は主述詞組であってはならない。さもないと、複文の中のクローズ(分句)になってしまう。例えば:
(11)新生的必然代替腐朽的,這是自然界発展的規律,也是社会発展的規律。
(12)調査有両種方法,一種是走馬看花,一種是下馬看花。
・走馬看花[成語]馬を飛ばして花見をする。大ざっぱに物事の表面だけを見るたとえ。
・下馬看花[成語]馬から降りて花を見る。じっくり観察し、調査、研究するたとえ。
上の例(11)、(12)は、意味の上では文全体の提示ではあるが、主述詞組なので、ここで言っている提示部分とは文法的には異なる。
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3つ目の独立成分については、次回に説明します。
【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年
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