中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

中国語の修辞: 比喩によりイメージを際立たせる

2010年12月15日 | 中国語
 今回は、中国語の修辞技法として、比喩を取り上げます。

                  四 生動(表現を生き生きさせる)

 文を磨き鍛える(“錘煉”)には、更に表現が生き生きしている(“生動”)という要求を満足させなければならない。なぜなら、表現が生き生きした文でこそ人々を興奮させ、人々を感化し、共鳴させることができるからである。文の生き生きとしたイメージは、しばしば一定の修辞手法の活用と切り離すことができない。

(一) イメージ(形象)
比喩によりイメージを際立たせる

 文芸作品と政治論文は、しばしば一定のイメージを持ったことばを使って事の道理を説明する。その中で、最も幅広く活用するのは比喩である。

 比喩はたいへん良い表現作用を持っている。それは未知の事物を既に知っているものに変え、奥深い道理を分かりやすく説明する。例えば:
   (1) 一道閃電明亮,只見山北辺,白茫茫的雲海,就像几万匹馬向前
    跑着一様,順着丹江,一直往東滚gun3着。有几次風把雲塊推過来,
    玉山就像个大佛爺凸着肚子,把它又擋回去。点閃着,雷打着,風卷着
    雲,雨乗着風,整个天空上呀,就像個唱戯大舞台

   (2) 什麼叫“国粋”?照字面看来,必是一国独有,他国所無的事物了。
    換一句話,便是特別的東西。但特別未必定是好,何以応該保存?
    譬如一個人,臉上長了一個瘤,額上腫出一顆瘡chuang1,的確与衆不同,
    顕出他特別的様子,可以算他的粋。然而据我看来,還不如将這粋割去了,
    同別人一様好。

 例(1)はいくつかの比喩句を通じて、山地の雷雨の情景を大げさに表現し、山地以外の地域の人が読んでも、自分がその場にいるかのようであり、未知の事物を読む人の知っているものに置き換えて表している。例(2)では、魯迅が顔の上にできた瘤や額の上にできた瘡を例に使って“国粋”の悪いところを譬えた。奥深い道理を分かりやすく説明した例である。

 比喩はまた、抽象的な事を具体的に説明し、平板なことを生き生きと表現することができる。例えば:
   (3) 我們的文学藝術不愧為偉大時代的鏡子,同時也是我国人民従中
    吸取智慧和力量的生活教科書

   (4) 在今天,
      我用滚燙gun3 tang4的双手
      我摸着
      我們的
        紅旗――
           又一次把
           母親的
           衣襟
           牽動……
・滚燙gun3 tang4 非常に熱い

 例(3)は“時代的鏡子”、“生活教科書”ということばを用いて文学芸術を譬えたことで、内容が具体的になり、イメージが明確になった。例(4)は母親の中国服のおくみ(“衣襟”)を引っ張るという表現で赤旗を手でさすることを譬えたことで、思い入れが深まり、読む人を心の底から感動させる表現となった。

 比喩を使う時は、ぴったり当てはまり(“貼切”)、分かりやすく、鮮明で、ユニーク(“新穎”)であるかどうかに注意しなければならない。次のいくつかの文はよくない例である。
(但し、この基準は時代や環境により変化する。以下の例は、文を書かれた当時はそうだったかもしれないが、現代の日本で見ると、善し悪しの判断が変わるケースもある。)

   (5) 無数条淙淙流淌的小河就像大地上的脉搏一様在不停地流動着,
    跳動着。
・淙淙 cong2cong2 細い水の流れる音。さらさら
・流淌 liu2tang3 (液体が)流れる
・脉搏 mai4bo2 脈拍

   (6) 我今天買了只新式銥yi1金筆,様子跟潜水艇似的,頭尖溜溜的。
・銥 yi1 イリジウム。銥yi1金筆で、イリジウムを使った万年筆。
・尖溜溜 jian1liu1liu1 とがったもの、または鋭いものの形容。

   (7) 従走廊的那一頭,走出白求恩和奥布莱安,記者們像捕獲到野獣似地
    撲上前去,七嘴八舌問長問短,照相机的閃光閃爍着。
・撲 pu1 飛びかかる。突き進む
・七嘴八舌 [成語]多くの人が方々から口を出すさま。口々に言う
・問長問短 [成語]あれこれ尋ねる
・閃爍 shan3shuo4 (光が)ちらつく

   (8) 青年賽過趙子龍,壮年干勁比武松,老年本領超黄忠,婦女就像
    穆桂英
・賽 sai4 ~にまさる。~より優れる
・干勁 gan4jin4 (物事に対する)意気込み

 例(5)で“脉搏”は“跳動”(脈打つ)ものであるが、“流動”するものではないので、流れる“小河”の比喩としては不適切である。例(7)で、有名人の取材に記者が群がる光景に、“捕獲到野獣”という比喩を使うのは意味合いが違い、不適切である。
 例(6)と(8)は現在の日本で見ると、判断が異なるように思う。例(6)で“銥yi1金筆”、つまり万年筆の形の譬えとして、“潜水艇”は一般に見かけないので、比喩としては不適切としている。例(8)は譬えとなる人物が中国ではよく耳にする人物ばかりで、新鮮味が無いので、比喩として不適切としている。

 比喩が適当でないのは、主に作者が客観事物に対する観察が不十分で、事物の本質を把握しておらず、いいかげんに比喩を考え、手当たり次第に適当にことばをえらんだことで発生する。人によっては喩えを考える時に、考えすぎて、却って難解になってしまい、訳が分からなくなってしまう(“不倫不類”bu4lun2bu4lei4[成語]得体が知れない。似ても似つかない)ことがある。

 比喩を使った文を推敲する時は、文の前後の語句との組合せの関係にも注意すべきである。比喩の中で譬えられた物とその物の関係は適当であるが、その他の語句との組合せが不適当な場合は、文として不適切である。例えば:
   (9) 小河如飄動的綢帯。

   (10) 烈火般的熱情在天安門広場沸騰起来了。

 “小河如綢帯”、“烈火般的熱情”という比喩句は、内容的におかしくない。けれども、“綢帯”に修飾語“飄動的”が加わると、“綢帯”は空中を漂っているかのような意味合いとなり、この組合せで“小河”の比喩とするのは不適切である。同様に、“熱情”の後ろの述語は“沸騰起来”である。“熱情”は“沸騰”することができるが、“烈火般的熱情”となると、“沸騰”はできず、“燃焼”しかできない。

 人の思想感情を無生物や生物の上に注ぎ込み、それらを人と同じように描写する表現手法を“擬人”と言う。適切に擬人法で構成される文を使うと、イメージが生き生きとしたものになる。例えば:

   (11) 在節日里,
       我們的党
         没有
         在酒杯和鮮花的包囲中,
            酔意沉沉
       党,
         正揮汗如雨
            工作着――
         在共和国大厦的
            建筑架上!
・揮汗如雨 “揮汗成雨”hui1han4cheng2yu3 という成語を踏まえる。意味は、汗をふるうと雨になる。大勢の人がひしめく形容。

 賀敬之はここで“酔意沉沉”、“揮汗如雨工作”といった人の行為、動作を表す語句を使って共産党という政治団体を人格化した。これにより、文章全体に生き生きしたイメージが生まれ、読む人の印象が鮮明になるという効果を得ている。

 擬人法は大部分が描写的、叙述的で、人の行為や性状を表す語句を人以外の事物の上に置くことで、その物に人の思想感情を持たせている。また場合によっては人以外の事物に人のように話をさせ、その物に自分の感情を述べさせることがある。例えば:

   (12) 天色又開朗了,四周突然亮了起来,月亮衝出了雲囲把雲抛在后面
     直往浩大的藍空走去

   (13) 蚍蜉撼大樹,
       辺揺辺狂叫
        “我的力量大
       知道不知道?”
       大樹説
       “我知道
       一張報,両個校
       几個小丑嗷嗷叫。”
・蚍蜉 pi2fu2 オオアリ
・撼 han4 揺り動かす。揺さぶる
・小丑 xiao3chou3 道化。小人。
・嗷嗷 ao2ao2[擬声語]痛みや苦しみなどのためにあげる悲鳴や鳴き声。ううんううん、ひいひい。わあわあ

 擬人法は死んだものを生きたものに変え、感情の無いものを感情を持ったものに変え、読む者に生き生きとしたイメージを与える。擬人法は通常文芸作品の中で用いられ、叙述描写の文の中で用いられ、抒情的な意味がたいへん濃厚である。人の話しぶりを真似し、それに人の感情を持たせ、更に比喩文を敷き詰めて文にし、それを拡大して鳥や獣が語り出す童話や寓話にすることができる。

 擬人法は感情が高まった時のことばの表現方式であるが、使用する時は、自然で調和がとれているか注意しなければならず、わざとらしく([成語]矯揉造作jiao3rou2zao4zuo4)してはならない。

 擬人法は人以外の物を人と見做して書かれるので、表現する時はできるだけその事物自身の特徴に合うよう注意しなければならない。例えば:

   (14) 新水井,亮閃閃,
       好像姑娘汪汪的眼,
       看得玉米露牙笑
       看得地瓜渾身甜
       看得谷子垂下了頭
       看得高粱羞紅了臉
・汪汪 wang1wang1 水をいっぱいためているさま。
・渾身 hun2shen1 全身

 新しい井戸ができ、水がこんこんとわき出て、農作物が豊かに実る喜びを、少女のはつらつとした動作に譬えている。“玉米露牙笑”は、粒のきれいに揃ったとうもろこしが、少女がにっこり笑った時に見える健康な歯並びのように見える。“地瓜渾身甜”、“谷子垂下了頭”、“高粱羞紅了臉”何れも作物の特徴に合った譬えである。


【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社 1995年


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