中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

中国語の音韻の修辞技法、平仄について考える (2)

2011年10月19日 | 中国語

【3】近代の中国語音韻の変化

 中古の音韻が近代の北方語系に発展する中で、g、d、pの入声は失われた。大部分の北方区域では、入声は既に消失した。韻尾のmはnの中に包含された。声母では、濁音声母は清音に含められ、また声母の舌前化、主韻母の母音の混同化の傾向がある。このように語音系統に大量の同音文字が増加している。例えば、七、戚、妻、欺は中古代の音韻では区別されていたが、入声の消失に、声母の舌前化、母音の混同化の結果、現代漢語では何れもqiと読まれるようになった。また例えば、“男”と“難”、“甘”と“干”は現在は皆nan、ganと読むが、これは韻尾の-mが-nに編入された結果である。“到”と“盗”、“半”と“伴”は現在は皆dao、banと読むが、これは濁音が清音に編入された結果である。

 読音系統と音節の単純化の結果、元々声母と韻母、或いは声調の上で区別されていた文字が、現代漢語では区別が無くなってしまった。現代漢語は同音の増加によって引き起こされる語義の混同の問題をどのように解決しているのか。それは、語彙の双音節化である。例えば、勢→勢力、逝→消逝、嗜→嗜好、柿→柿子、事→事情などがそうである。

【4】律詩での平仄の運用

 中国の詩歌は斉梁の時代に到り、意識的に平仄と音律の追求が求められ始めた。唐代に到り、平仄、対句形式の格律詩が正式に形成された。それ以前の平仄、対句、脚韻などの要求が厳格でない、或いは要求されない詩を“古体詩”と呼び、簡単に“古詩”、或いは“古風”と言った。これに相対する格律詩を、“近体詩”と呼んだ。

 平仄は律詩の重要な組成部分である。平仄を強調するのは、詩句に抑揚と強弱を持たせ、音律と脚韻の美を持たせるためである。律詩は一般に8句で構成され、2句ごとが一聯である。8句中、第1、2句が“首聯”、第3、4句が“頷聯”、第5、6句が“頸聯”。第7、8句が“尾聯”である。首聯、頸聯はまた上聯とも言う。頷聯、尾聯はまた下聯とも言う。各聯の上の句が“出句”、下の句が“対句”である。李商穏の《錦瑟》を例にすると:

         出句         対句
     錦瑟無端五十弦, 一弦一柱思華年。 (首聯)
     庄生暁夢迷蝴蝶, 蜀帝春心托杜鵑。 (頷聯)
     滄海月明珠有涙, 藍田日暖玉生煙。 (頸聯)
     此情可待成追憶, 只是当時已惘然。 (尾聯)

 律詩は“黏”、“対”を重んじる。もし詩中の平仄の形式が“黏”、“対”の規律に合っていないと、それを“失黏”、“失対”と称し、何れも律詩の忌み嫌うところである。

 いわゆる“黏”とは、上聯の対句の二番目の文字の平仄と下聯の出句の二番目の文字の平仄が同じことを指す。上で挙げた李商穏の《錦瑟》を例にすると、首聯の対句の二番目の文字は“弦”で平声で、頷聯の出句の二番目の文字が“生”で、これも平声である。頷聯の対句の二番目の文字は“帝”で、仄声で、頸聯の出句の二番目の文字は“海”で、これも仄声である。頸聯の対句の二番目の文字は“田”で平声であり、尾聯の出句の二番目の文字は“情”で、これも平声である。これらのことがいわゆる“黏”である。

 いわゆる“対”とは、一つの聯の中の出句と対句の二番目の文字の平仄が相反することを指す。上の律詩を例にすると:首聯の出句の二番目の文字は“瑟”で、仄声である。対句の二番目の文字は“弦”で、平声である。頷聯で出句の二番目の文字は“生”で、平声である。対句の二番目の文字は“帝”で、仄声である。頸聯の出句の二番目の文字は“海”で、仄声である。対句の二番目の文字は“田”で平声である。尾聯の出句の二番目の文字は“情”で、平声である。出句の二番目の文字は“是”で、仄声である。

 律詩の全ての句では、平仄の句式は何れも固定されている。

 そのうち、五言律詩には2分類・計4種がある。
仄声で始まるもの:甲1 仄仄仄平平 甲2 仄仄平平仄
平声で始まるもの:乙 1 平平仄仄平 乙2 平平平仄仄

 七言律詩も、二分類・計4種がある。
平声で始まるもの:甲1 平平仄仄仄平平 甲2平平仄仄平平仄
仄声で始まるもの:乙1 仄仄平平仄仄平 乙2仄仄平平平仄仄

 律詩が韻字を用いる時の平仄にも規定があり、一般に平声に韻字を用いる(極めて少数だが、仄声に韻字を用いることもある)。古体詩では、平声で韻字を用いることができ、仄声にも韻字を用いることができる。

 律詩の“黏”、“対”の規則と入韻の原則(平声の韻字は入韻し、仄声の韻字は一般に入韻しない)の規定に基づき、上記の4種の句型の適切な配列が、律詩の平仄の格律である。

1.最初の首の句が入韻する
五言。 七言
平平仄仄平,仄仄仄平平。 平平仄仄仄平平,仄仄平平仄仄平。
仄仄平平仄,平平仄仄平。 仄仄平平平仄仄,平平仄仄仄平平。
平平平仄仄,仄仄仄平平。 平平仄仄平平仄,仄仄平平仄仄平。
仄仄平平仄,平平仄仄平。 仄仄平平平仄仄,平平仄仄仄平平。

2.平声から始まる最初の句が入韻しない
五言。 七言
平平平仄仄,仄仄仄平平。 平平仄仄平平仄,仄仄平平仄仄平。
仄仄平平仄,平平仄仄平。 仄仄平平平仄仄,平平仄仄仄平平。
平平平仄仄,仄仄仄平平。 平平仄仄平平仄,仄仄平平仄仄平。
仄仄平平仄,平平仄仄平。 仄仄平平平仄仄,平平仄仄仄平平。

3.仄声から始まる最初の句が入韻する
五言 七言
仄仄仄平平,平平仄仄平。 仄仄平平仄仄平,平平仄仄仄平平。
平平平仄仄,仄仄仄平平。 平平仄仄平平仄,仄仄平平仄仄平。
仄仄平平仄,平平仄仄平。 仄仄平平平仄仄,平平仄仄仄平平。
平平平仄仄,仄仄仄平平。 平平仄仄平平仄,仄仄平平仄仄平。

4.仄声から始まる最初の句が入韻しない
五言 七言
仄仄平平仄,平平仄仄平。 仄仄平平平仄仄,平平仄仄仄平平。
平平平仄仄,仄仄仄平平。 平平仄仄平平仄,仄仄平平仄仄平。
仄仄平平仄,平平仄仄平。 仄仄平平平仄仄,平平仄仄仄平平。
平平平仄仄,仄仄仄平平。 平平仄仄平平仄,仄仄平平仄仄平。

 以上は格律詩の平仄の句の様式が定まった後の4分類8種の組合せの情況である。ただ、一句一句の平仄の決まりを必死で覚える必要はなく、規則に従っていけば、自然と推察することができる。

 律詩の平仄に対する要求はたいへん厳格であるが、一部が完全には上記の格律に合っていなくても許される場合がある。これを“変格”という。しかし変格にもルールがあって、詩句の1、3、5番目の字(五言詩は5番目の字は含まない)でのみ現れる。

(次回に続く)

 
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