中国が2020年を目標に、スタートした自力の宇宙ステーション開発が注目を浴びています。宇宙ステーション開発では、宇宙空間での長期の滞在の為、いくつかのパーツに分けて、宇宙空間で組み立てる必要があり、また基地への行き来に、人を載せた宇宙船を基地に近づき、ドッキングさせる必要があります。このため、宇宙空間での基地と宇宙船のランデブー、ドッキングが安全確実に行われる必要があります。その第1段として、基地と宇宙船の無人でのランデブー、ドッキングの実験が行われますが、その疑似基地として打ち上げられたのが天宮1号です。
アメリカのスペースシャトル・プロジェクトが終了した今、国際宇宙ステーションと地球の行き来は、ロシアの宇宙船しかなく、中国の宇宙ステーション開発は世界の注目を集めています。中国政府も、天宮1号の打ち上げには、政府首脳全員が北京の司令センターと、シルクロード・ゴビ砂漠の中の酒泉衛星発射基地に分かれて訪問し、現場視察するという力の入れようでした。
当初、天宮1号の打ち上げは27~30日の間と言っていましたが、最終的に29日夜になりましたが、これは政府首脳の日程に合わせたものと思います。それまでに、呉邦国全人代委員長はロシア・中央アジア訪問の外交日程を終えており、また10月1日の国慶節を控え、政府首脳が一堂に会するのに29、30両日が実に都合がよかったのでしょう。29日の天宮1号打ち上げ視察に続き、30日夜は人民大会堂で、各界の代表や各国大使を招いての国慶節前夜の祝賀晩餐会に参加されています。大変だったのは、温家宝総理で、29日にはるばる甘粛の酒泉まで飛び、天宮1号発射基地視察、翌30日朝は酒泉衛星発射センター職員を激励し、そのまま北京へとんぼ帰り、30日午後からの中国友好賞授与式に臨み、その後、晩餐会でのスピーチ、というハードな日程でした。
この、政府首脳の天宮1号打ち上げ現場視察の記事の表現をチェックしてみましょう。
■[1]
( ↓ クリックしてください。中国語原文が表示されます。)
先ず、七言の対聯が書かれています。
■ 神州儿女多奇志 人造天宮翔太空
・奇志 qi2zhi4 殊勝な志。
□ 神州の子弟には殊勝な志の者が多い。人工衛星は宇宙に飛び立つ。
今回の衛星の開発、打ち上げに携わった、中国の若い力を称えています。
■ 胡錦涛等領導同志対天宮一号目標飛行器発射成功表示熱烈祝賀,向為此作出貢献的広大科技工作者、干部職工和解放軍指戦員表示親切慰問,勉励大家再接再、頑強拼搏,圓満完成我国首次空間交会対接任務。
・指戦員 zhi3zhan4yuan2 指揮官と戦闘員の総称
・勉励 mian3li4 励ます。激励する。
・再接再 zai4jie1 zai4li4 [成語]努力に努力を重ねる。なおいっそう励む。
・頑強 wan2qiang2 粘り強い。困難や挫折を恐れず、とことんまでやり抜く。
・拼搏 pin1bo2 力いっぱい戦って勝利を勝ち取る。苦闘して目的を達成する。
□ 胡錦涛ら政府トップは天宮1号目標宇宙飛行体の発射成功を心から祝福し、この為に貢献した幅広い技術者、幹部、解放軍の指揮官、戦闘員に対し、親しく慰問し、皆が更に努力し、粘り強く頑張ってやり抜き、我が国初の宇宙空間でのランデブー、ドッキングの任務を円満に完了させるよう激励した。
■ 夜幕降臨,地処戈壁深処的酒泉衛星発射中心載人航天発射場灯火通明,天宮一号目標飛行器発射前的最后准備工作正緊張有序地進行。
・夜幕降臨 ye4mu4 jiang4lin2 “夜幕”は夜のとばり。夜のとばりが降りる。
・戈壁 ge1bi4 ゴビ(の沙漠)。
□ 夜のとばりが降り、ゴビ砂漠の奥地にある酒泉衛星発射センターの有人宇宙船発射場は明かりが煌々と輝き、天宮1号目標宇宙飛行体の発射前の最後の準備作業が、緊張の中でも整然と進められていた。
■[2]
■ 大庁墻上,書写着胡錦涛総書記対載人航天工程重要指示“精心組織、精心指揮、精心実施,確保成功、確保万無一失”的横幅十分醒目。
・万無一失 wan4wu2 yi1shi1 [成語]万に一つの失敗もない。絶対にまちがいない。
・醒目 xing3mu4 人目を引く。目立つ。
□ ホールの壁には、胡錦涛総書記の有人宇宙船プロジェクトについての重要指示:「心を込めて組織し、心を込めて指揮し、心を込めて実施し、必ず成功し、万に一つの失敗もしない」の書かれた横断幕があるのが人目を引いた。
■ 温家宝指出,突破和掌握空間交会対接技術,是実現載人航天“三歩走”戦略目標的重要歩驟。
・載人航天“三歩走”戦略:宇宙ステーションを三段階で実現しようとする戦略。第1歩:今回の天宮1号を無人基地として軌道に乗せたら、無人、更には有人の宇宙船を打ち上げ、宇宙空間でのランデブー、ドッキングの試験を行う。第2歩:ランデブー、ドッキングに一定の経験を積んでから、一定期間、天宮1号の基地の実験室に人員を一定期間滞在させ、様々な宇宙空間での実験を行う。第3歩:より規模の大きい、長期間滞在可能な本格的宇宙ステーションを建設する。
□ 温家宝はこう指摘した:宇宙空間でのランデブー、ドッキングの技術的難関を突破し、技術習得することは、有人宇宙ステーション実現の「三段階」戦略目標を実現するための重要な一歩である。
■[3]
(この部分は全訳します。)
・蒼穹 cang1qiong2 青空。大空。蒼穹(そうきゅう)。
・耀眼 yao4yan3 まぶしい。まばゆい。
・助推器 zhu4tui1qi4 ブースター・ロケット。補助推進ロケット。
・整流罩 zheng3liu2zhao4 ノーズコーン。衛星フェアリング。ロケット先端の衛星格納部を保護するための円錐形の覆い。
・器箭分離 qi4jian4 fen1li2 衛星とロケットの切り離し。
・太陽能電池帆板 tai4yang2neng2 dian4chi2 fan1ban3 太陽電池パネル。船の帆のように、畳んであるものを宇宙空間で広げる。
□ 発射場では、高さ105メートルの発射塔のフレームの傍で、改良された長征2号FT1衛星積載ロケットはまっすぐ天空を指し、全てを搭載して発射を待っていた。
21時16分03秒、「点火」の号令とともに、天宮1号目標宇宙飛行体を搭載されたロケットは、轟音の中、天を衝いて飛び立ち、あっという間に空高く飛び、夜のとばりの中、まばゆい光の軌跡を描いた。ブースター・ロケットが分離され、ロケットのノーズコーンが分離され、衛星とロケットが切り離され、太陽電池パネルが広げられた……。約10分の飛行を経て、天宮1号目標宇宙飛行体は正確に予定の軌道に入った。
今回発射された天宮1号目標宇宙飛行体は、全長10.4メートル、最大径3.53メートルで、実験室と資源室から構成される。実験室には3名の宇宙飛行士が室内作業と生活をすることができ、その先端には受動式のドッキング機構が取り付けられ、宇宙船とドッキングを実現するこができる。
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このように、天宮1号は、「目標宇宙飛行体」という名前で呼ばれていますが、ランデブー、ドッキングの経験を積むという第1段階の任務が完了すれば、第2段階では、中国初の試験宇宙ステーションとして、ここに宇宙飛行士が長期滞在し、様々な宇宙空間での実験を行うことになります。
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