中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

沈宏非のグルメエッセイ: 【対訳】鴛鴦茶(おしどり茶)

2010年12月12日 | 中国グルメ(美食)
 今週も、週末は中国語の軽い読み物を読みましょう。沈宏非のグルメエッセイ。今回は,鴛鴦茶。これは香港のローカルの喫茶店で出てくる、ミルクティーにインスタントコーヒーを混ぜた不思議な飲み物。マンニンやパークンといったローカル・スーパーには、粉末の鴛鴦茶も売っています。お土産にどうぞ。

                          鴛鴦茶

■ 鴛鴦和茶都是国粋,前者代表濃情和忠貞,后者象征降解与散淡。但是当這両様東西做了一処時,便似有“鴛鴦綉了従君看,莫把金針度与君”的懸疑存焉。

・鴛鴦綉了従君看,莫把金針度与君: 正しくは“鴛鴦綉出凭君看,莫把金針度与人”。意味は“被綉好的鴛鴦任凭欣賞,就是不要把針黹zhi3手藝教予別人”。(おしどりの刺繍を自由に見ていただくのは良いが、この裁縫の技術を他人に教えではならない。)詩の形を取っているが、中国の昔からの処世術を表すことわざ。“金針”は縫物に使う金属製の針のこと。

 鴛鴦(おしどり)と茶は中国文化の精華である。前者はこまやかな愛情と貞節を代表し、後者は緊張を解き、心安らいだ状態の象徴である。しかしこの両者が一つに集まると、「鴛鴦の刺繍を君に見せるとも、金針を君に渡すことなかれ」との懸念が生じる。

■ 厮混在一起鴛鴦和茶,以“鴛鴦茶”之名行走江湖。其実,在没有喝過這茶之前,我們早已于一九八零年代早期在一出名叫《虎口脱険》(la grande vadrouille,1966年出品)的法国片里聴過了它的伝聞。電影一開始,有一執行代号為“鴛鴦茶”任務之英国轟炸中隊于巴黎上空跳傘,相約従天上掉到地上最舒服(一家土耳其浴室)同時又是最危険(軍遍布)的地方之后,以一首名叫《鴛鴦茶》的歌曲為接頭暗号。但見一派霧気茫茫之中,光着身子的英国男人幽霊般四処游蕩,并且把這支“鴛鴦茶”鬼鬼祟祟地唱了又唱,吹了又吹。

・厮混 si1hun4 いっしょに混じり合う
・行走江湖 各地を渡り歩く。各地に広まる。
・la grande vadrouille フランスの喜劇映画。日本語名:《大進撃》。
・土耳其浴室 トルコ風呂。蒸し風呂である。
・接頭 連絡をとる
・鬼鬼祟祟 gui3gui3sui4sui4 陰でこそこそする

 「おしどり」と茶がいっしょに混じり合い、“鴛鴦茶”の名は各地に広まっている。実際、この茶に接するより以前に、私たちは1980年代の初期に《虎口脱険》(la grande vadrouille,1966年作品)というフランス映画でこの名前を聞いた。映画が始まるとすぐ、暗号名“鴛鴦茶”の任務を執行するイギリスの爆撃中隊がパリ上空からパラシュートで落下し、天上から、地上で最も快適な(一軒のトルコ風呂)、そして同時に最も危険な(ドイツ兵がいたるところにいる)場所に舞い降り、《鴛鴦茶》の歌を連絡をとる際の暗号とした。しかし蒸気がもうもうと立ちこめる中、素っ裸の英国男性が幽霊のようにあちこちをぶらぶらと動き回り、陰でこそこそとこの歌のメロディーを歌ったり、口笛で吹いたりした。

* ここで言う“鴛鴦茶”は、アメリカのブロードウェー・ミュージカルの中で歌われた、“Tea for Two”(日本語名:二人でお茶を)のことです。映画の中国語訳の時、“鴛鴦茶”と訳されたようですが、本来の“鴛鴦茶”の意味合いとは、いささか異なります。

■ 相信大多数的中国観衆当時在記住了《鴛鴦茶》的同時,也首次目撃了桑拿浴。因縁際会,上述場景在許多年以后使大行其道的中国桑拿浴室始終帯有某種驚険的様式和喜劇的色彩。

 大多数の中国の観衆は当時《鴛鴦茶》のことを憶えたのと同時に、初めてサウナを目にしたことと思う。因果はめぐり、上で述べた情景は、それから何年かして隆盛を迎える中国のサウナに終始ある種のスリルのある様式と喜劇的色彩を帯びさせることになった。

* 北欧式のサウナと、古代からあるトルコ式の蒸し風呂とは、結構違いがあるような気がしますが。

■ “鴛鴦茶,鴛鴦茶,你愛我,我愛你……”其実這“茶”大有来頭。它的原創第一泡,為作曲家Vincent Youmans于1925 年為百老滙一音楽劇所写的一首歌TEA FOR TWO, 三年后,肖斯塔科維奇以此段旋律写了一首爵士風格的管弦楽版同名作品。与肖氏対TEA FOR TWO的管弦楽改編及其所謂“爵士”風格相比,我覚得対于TEA FOR TWO的漢訳顕然来得更為成功。然而,更有創意的是香港人,大約在TEA FOR TWO于百老滙問世的那個時期,他們真的発明了一種全世界絶無僅有的飲料,全称是“鴛鴦奶茶”,簡称“鴛鴦”。由于通常是凍飲,故茶餐庁里又名“凍鴛鴦”。

・来頭 来歴。いわれ
・Vincent Youmans ヴィンセント・ユーマンス
・TEA FOR TWO 二人でお茶を
・絶無僅有 [成語]ごくまれである。またとない。ただ一つしかない。
・茶餐庁 香港式の喫茶店。飲み物だけでなく、様々な食べ物を出す。

 「鴛鴦茶、鴛鴦茶、あなたは私が好きで、私はあなたが好き……」、実はこの「お茶」にはいわれがある。この最初の一杯は、作曲家ヴィンセント・ユーマンスが1925年ブロードウェー・ミュージカルのために作曲したTEA FOR TWOであり、三年後、ショスタコービッチがこの旋律を使ってジャズ風の管弦楽の同名の曲を作曲した。ショスタコービッチのTEA FOR TWOの管弦楽へ編曲したいわゆるジャズ風のスタイルと比べ、TEA FOR TWOの中国語訳は明らかにより成功していると私は思う。しかし、より創造力のある香港人は、TEA FOR TWOがブロードウェーで発表されたほぼ同じ時期に、世界に二つと無い飲み物を発明した。そのフルネームは“鴛鴦奶茶”と言い、略称を“鴛鴦”。通常は冷やして飲むので、“茶餐庁”では“凍鴛鴦”と呼ぶ。

■ “鴛鴦奶茶”的制造方法如下:氷紅茶半杯,氷珈琲半杯,同時倒入另杯中充分攪渾,即成。飲用時,根据各人口味加入適量煉乳。“鴛鴦”的味道実在難以形容。一個喝慣了茶的,会覚得它更像是一杯茶館里焼出来的珈琲;一個喝慣了珈琲的,興許就認為這是一杯在珈琲館泡出来的茶,而“鴛鴦”所散発出来的那種双性恋的気息,甚至在不同性取向的人喝来,相信亦会帯来各不相同的感触。味覚在同一時間内被両種経験左右着,飄浮揺曳,多少有一点像林語堂筆下懐春少女的那一種“対象模糊的煩悩的感覚”。也只有在香港這種地方才能創造出這種茶,就像聴一個香港人説話,当他流利地把粤語和英語混為一談時,聴起来既不是粤語也不是英語,倣佛是属于第三種語源里的一種熟悉而又陌生的方言。

・攪渾 jiao3hun2 かき回して濁らせる
・興許 xing1xu3 あるいは。もしかしたら。
・飄浮 piao1fu2 揺曳yao2ye4 ゆらゆら漂う
・懐春 huai2chun1 思春。少女が性に目覚める

 “鴛鴦奶茶”の作り方は次の通り: アイスティーを半杯、アイスコーヒーを半杯、同時に別のカップの中に入れて充分にかき混ぜれば、出来上がり。飲む時、お好みで練乳を適量加える。“鴛鴦”の味は実に形容し難いものである。茶を飲み慣れた人にとっては、茶館で淹れられたコーヒーのように感じられるかもしれない。コーヒーを飲み慣れた人にとっては、珈琲館で淹れられたお茶のように思えるかもしれない。そして“鴛鴦”から発散される両刀使い的恋愛の息吹は、異なる性的愛好を持った人が飲むと、きっとそれぞれ異なった感触をもたらすことさえあるに違いないと思う。味覚は同一の時間内で二つの経験により左右され、ゆらゆら漂い、林語堂が著す思春期の少女の「対象の漠然とした不安感」のようなところも多少ある。また香港のような場所でこそ作り得た茶であるので、香港人が話をするのを聞くように、彼が流暢な広東語と英語を交えて話をする時の、聞いてみると広東語でも英語でもなく、あたかも第三の言語の、よく知っているようでもあり全く聞いたこともないような方言のような感じがする。

■ 曾見到一北京男人在某電視脱口秀里説到他在温哥華一家香港人開的茶餐庁里的不幸遭遇:因在餐牌上見到“鴛鴦奶茶”,便好奇点了一杯,茶上来后,却発現此“鴛鴦奶茶”和隣座的“奶茶”看上去完全一様,当即向店家質疑,答曰:“‘鴛鴦奶茶’其実与普通奶茶無異,唯一的区別在于,前者插両根吸管,此即‘鴛鴦’之所以得名者。”

 以前、北京の一人の男性があるTV番組で早口でまくしたてていたが、彼はバンクーバーの香港人がやっている茶餐庁でひどい目にあったそうである。メニューに“鴛鴦奶茶”とあったので、好奇心にかられて一杯注文したところ、運ばれてきてから、“鴛鴦奶茶”は隣の人が頼んだミルクティーと全く同じであることが分かった。すぐに店主に質問すると、その答えは、「“鴛鴦奶茶”は実は普通のミルクティーと同じで、唯一違うのは、前者はストローを二本挿してあることで、だから“鴛鴦”と名前がついている」というものだった。

■ 老実講,我不太相信香港人敢這麼蒙事儿,“鴛鴦奶茶”乃香港的首本名飲,家喩戸暁,即使移民加国做了野鴛鴦,也不至于野成這様。鴛鴦可以戯水,“鴛鴦奶茶”則断無戯人之理。好在這位爺的想象力有限,否則,凭“鴛鴦奶茶”之名而質疑以“何故是牛奶而不是鴛鴦的奶”,茶餐庁老板就只好死給他看了。更為駭人聴聞的是,有台湾人已将港人原創的“鴛鴦奶茶”発揚光大,在台式“波霸奶茶”(在奶茶中加入数十顆寧波湯団大小的淀粉球)的基礎之上,進一歩梱綁bang3了“鴛鴦”,推出了一款名叫“波霸鴛鴦”的飲品……我希望上面的那位苦主万勿光顧,無論如何。

・蒙事 meng1shi4 ごまかす。知ったかぶりをする
・家喩戸暁 jia1yu4hu4xiao3 [成語]誰もがよく知っている。津々浦々に知れわたる。
・駭人聴聞 hai4ren2ting1wen2 [成語]聞く人をびっくりさせる。世間をぞっとさせる。
・発揚光大 [成語]大いに発揚する。大々的に広める。
・寧波湯団 寧波湯圓。“湯圓”はモチ米の粉で作った小さな団子で、甘いシロップで煮てお椀に入れて供する。白玉団子のようなもの。
・梱綁 kun3bang3 縄で(人を)縛り付ける

 正直なところ、私は香港人がこんなごまかしをするなんて信じられない。“鴛鴦奶茶”は香港ではじめて名付けられた飲み物で、誰もがよく知っている。たとえカナダに移民して「野良おしどり」になっても、こんな野放図になり下がるわけがない。おしどりが水と戯れるからといって、“鴛鴦奶茶”が人をからかっていいなどという道理は断じてない。幸い、このじいさんの想像力はここまでで、そうでないと、“鴛鴦奶茶”の名前から「どうして牛乳を使って、おしどりの乳を使わないのか」と聞かれた日には茶餐庁の主人は死んでみせるしかないではないか。更に人を驚かせたのは、台湾人が、香港人が元々生み出した“鴛鴦奶茶”を大いに広め、台湾式の“波霸奶茶”(ミルクティーに数十粒の寧波湯圓くらいの大きさのでんぷん粉で作った球を入れたもの)を元に、これと“鴛鴦”を結びつけ、“波霸鴛鴦”という飲み物を売り出したことだ……どうかあの苦渋をなめた人、決してこんなものに手を出さないように。

■ 奶茶的名字和玫瑰的名字一様,不同的人有不同的解読,即使奶茶本身亦復如此。老舍先生在小説《二馬》里写道:“老馬要是告訴普通英国人:‘中国人喝茶不擱牛奶。’‘什麼?不擱牛奶!怎麼喝?!可怕!’人們至少這様回答,他要是告訴社会党的人們,中国茶不要加牛奶,他們立刻説:‘是不是,還是中国人懂dong3得怎麼喝茶不是?中国人替世界発明了喝茶,人家也真懂dong3得怎麼喝法!没中国人咱們不会想起喝茶,不会穿綢子,不会印書,中国的文明!中国的文明!唉,没有法子形容!’”其実,把TEA FOR TWO訳成“鴛鴦茶”不但有信,還略不輸文采。不過,対于“鴛鴦”這両個漢字的理解,粤語却明顕偏離主流,即在“成双作対”和“好事成双”的大前提下,強調的并不是“永結同心”,而是差異,鴛是鴛来鴦是鴦,転換為現今常用的外交詞滙,大概就是“求同存異”。比方説,一個広東人若誤穿了両只不同顔色的袜wa4子,或者戴錯了両只不同款式的手套,另一個広東人便会笑他穿了“鴛鴦袜wa4”或戴了“鴛鴦手套”,這種表達方式非但毫不“鴛鴦”,甚至大有“乱点鴛鴦譜”的意思。

・玫瑰 mei2gui マイカイ。バラの仲間でハマナシの近縁種。日本語訳にする時にも、バラと訳すべきかどうか迷うが、中国でも用法に人によって違いがあるようである。
・擱 ge1 入れる
・成双 対になる
・作対 反対する。敵対する。
・求同存異 [成語]共通点を見つけ出し、異なる点は残しておく

 “奶茶”という名は“玫瑰”同様、人によって解釈が異なる。たとえ“奶茶”自身を本来の意味に戻したとしても。老舎先生は小説《二馬》でこう書いている。「老馬が普通のイギリス人に「中国人はお茶にミルクを入れない」と言ったところで、「何?ミルクを入れないって!どうやって飲むの?恐ろしい!」人々は少なくともこう答えるだろう。彼がもし社会党の人たちに、中国茶にミルクを入れてはいけない、と言ったら、彼らは直ちにこう言うだろう。「そうだろう、やっぱり中国人はどう茶を飲むか知っているだろう?中国人は世の中の人々に代わって茶を飲むことを発明し、他の人たちも飲み方を本当に理解した。中国人がいなかったら、私たちは茶を飲むなんて思いつかなかったし、シルクを着ることもなかったし、本を印刷することもできなかっただろう。中国文明!中国文明!ああ、形容しようがない!」実際、TEA FOR TWOを“鴛鴦茶”と訳したことは、意味が合っているだけでなく、文才も決して悪くない。しかし、“鴛鴦”という二つの漢字の理解について、広東語は明らかに主流からそれていて、「対になって反対する」、「良いことが続いて起こる」ということを大前提にしていて、強調しているのは「永久を誓っていつも心を一つにする」のではない。そして違うのは、鴛は鴛、鴦は鴦とし、昨今の外交用語を転用すれば、おおよそ「共通点を見つけ出し、異なる点は残しておく」ことである。例えば、一人の広東人が間違って左右違う色の靴下を履いたり、左右で異なる手袋をはめてしまっていたら、それを見た別の広東人は笑って、あいつは“鴛鴦”の靴下を履いたり、手袋をしていると言うだろう。こうした表現は少しも“鴛鴦”的でないばかりか、“鴛鴦”ということばをでたらめに使っているとさえ言える。

■ “鴛鴦于飛,畢之羅之。鴛鴦在梁,戢ji2其左翼。”(小雅)早在詩経時代,鴛鴦就是一夫一妻制的模範榜様,但是鴛鴦并不像伝説中那様飛則同振,游則同嬉;栖則連翼交頸,一只死了,另一只就終生“守節”,甚至抑郁而死。鴛和鴦都没那麼痴情,那麼You jump,I jump。事実上,鴛鴦平時都是各過各的,其成双作対及其双栖双飛,只是在配偶時期才表現出来的一種親密姿態而已,一旦交配完成,用不着棒打,立馬就各自東西,形同陌路。至于繁殖后期的産卵并撫育幼雛的工作,皆由鴦這個単親媽媽一力完成,鴛完全是搞gao3完了就走人。是故,以鴛鴦来做一夫一妻制的吉祥物雖然勝在直観,却実在很不吉祥,当然亦不無真実。誠如鄭板橋所言:“鴛鴦二字,是紅閨佳話,然乎否否。多少英雄儿女態,醸出禍胎冤薮,前殿金蓮,后庭玉樹,風雨摧残驟。”算下来,唯有港産的“鴛鴦茶”,才比較貼切地再現了鴛鴛鴦鴦們歴来所奉行的這種杯水主義的愛情観。

・抑郁 yi4yu4 憂鬱。鬱憤。
・痴情 chi1qing2 ひたむきな愛情。ひとすじに思い続ける愛情
・鄭板橋 清代の画家、書法家。江蘇・興化の人。
・禍胎 huo4tai1 禍根。災いの原因となるもの。冤薮 yuan1sou3 =冤家 仇(かたき)。“薮”は人や物が寄り集まるところ。

・前殿金蓮 南朝・斉の廃帝・東昏侯の妃であった潘妃の故事に由来し、ある時東昏侯が地面に金箔で蓮の絵を貼らせ、その上を潘妃に歩かせたところ、歩く姿がしなやかで美しく、歩くたびに蓮の花が生じるように見えたことから。“金蓮”には纏足の意味もある。

・后庭玉樹 南朝陳の后主 陳叔宝の作った宮体詩《玉樹后庭花》から。陳叔宝は陳の滅亡に際しても、宮中で愛姫の張麗華といっしょにいたと言われている。“后庭花”は江南地方に生える植物で、庭園で多く栽培されたことから“后庭花”の名がある。花は紅白の二色で、特に白色の花が樹に玉の冠をかぶせたように見えることから“玉樹后庭花”の名がある。

・摧残 cui1can2 打ち壊す
・驟 =驟然 zhou4ran2 にわかに。たちまち。
・貼切 tie1qie4 (言葉遣いが)適切である。ぴったり当てはまる

・杯水主義 革命後のソ連で生まれた一種の性道徳の観念で、従来の伝統的な貞節観念を打ち壊し、性欲はあたかも喉の渇きを癒すために一杯の水を飲むように簡単で平常なことだという考え方。

 「鴛鴦はつがいで飛ぶので、一つの網で二羽とも捕まえることができる。鴛鴦は渓流にいる時は、共に左の翼をたたみ、互いに寄り添う。」(小雅)早くも詩経の時代、鴛鴦は一夫一妻制の模範であったが、鴛鴦は決して伝説のように飛ぶ時はいっしょに羽根を広げ、遊ぶ時は共に遊び、樹の上で休む時は翼を連ね頸を交え、一方が死ねば、他方は終世貞節を守り、甚だしきは鬱々として死に至る、などということはない。鴛も鴦もお互いをひたむきに愛し、あなたが飛べば、私も飛ぶ、などということはない。実際は、鴛鴦は、平時は各々が別に過ごし、対になって共に樹の上にいたり共に飛ぶのは、産卵期につがいを作る時だけに表われる親密な姿で、一度交配が終わると、棒で叩かなくても、直ちに各々が別個に行動する。繁殖後期の産卵と雛を育てるのは、皆“鴦”の方がシングルマザーとして全力でやり遂げ、“鴛”の方は交尾が終わったらさっさといなくなる。それゆえ、鴛鴦を一夫一妻制の吉祥物とするのは直観的にはすばらしいが、実際はたいへん不吉で、またそれが事実である。誠に鄭板橋が言ったように、「鴛鴦の二文字は、新婚の閨房の佳話と言われているが、そうだろうか。いや、事実は違う。これまでどれだけの英雄の男女のいとなみが、災いの原因や恨みを生みだしてきたことだろう。前殿では潘妃の金蓮に譬えられるなよなよと歩く姿が見られ、后庭では陳叔宝の《玉樹后庭花》が舞われていたと思ったら、風雨が来て(王朝が滅亡し)、忽ち全てを打ち壊してしまった。」こうして見ると、香港産の“鴛鴦茶”だけが、おしどり達がこれまで行ってきたこうした“杯水主義”の愛情観をぴったりと再現していると言えそうである。


【原文】沈宏非《飲食男女》南京・江蘇文藝出版社2004年8月


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