中国語学習者のブログ

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詞組の階層分析、及び詞組の多義性

2010年09月28日 | 中国語
 これまで、詞組の類型、構造の特徴を見てきましたが、通常の文では、複数の詞組が結合して使われます。こうしてできた、複雑な詞組を分析する手法に、階層分析があります。

                    詞組と構文分析
                 五 複雑な詞組と階層分析

 これまで述べた各種の詞組は、“的”を使った構造や、介詞構造(“結構”[注①])とつながり合って、複雑な詞組となる。複雑な詞組は、一層一層がつながり合い、したがってずっと切り分けていくことで、その中の語句の間の階層や関係を探し出すことができる。これらの階層ごとの区分は、下記のように表すことができる。

[注①] ここでの「構造」(“結構”)とは、一方を実詞、一方を虚詞から成る組合せを指す。

     ◆ 提高 分析問題 和 解決問題 的 能力
        ――――――― 動賓 ――――――――      
           ――――――  偏正  ――――――      
           ―――― 連合 ――――      
           ―動賓―     ―動賓―

     ◆ 教学経験 豊富 的 老年教師
        ――――― 偏正  ―――――
        ―― 主謂 ――     ―偏正―
        ―偏正―

     ◆ 本国生産 的 和 従外国進口 的  
        ―――――― 連合 ――――――   
        ― 的構造  ―    ― 的構造――   
        ―主謂―        ―介詞構造

 上記の分析から分かることは、語句の組合せの関係は直接的なものと、直接的ではないものがあるということである。区分する時、先ず全体からそれらの構造を理解し、直接的な成分を探し出す。一般的には二分されるのではなく、連合関係などの詞組が包含する直接成分が二項目以上ある時、多項目に分解される。このような階層的な分解方法を“層次分析法”(階層分析法)と呼び、このような分析が“句法分析”(構文分析)である。

 注意すべきは、いくつかの偏正詞組では、修飾語が比較的複雑で、修飾語と修飾語の間や、修飾語と中心語の間に別々の関係が存在することである。一つのケースとして、例えば、“偉大的、光栄的祖国”と言う時、ここで“偉大的”と“光栄的”の間の関係は並列的で、この関係は、詞組全体(“偉大的、光栄的”)が中心語を修飾していると見做すことができるし、二つの並列する成分がそれぞれ中心語を修飾していると見做すこともできる。すなわち“祖国”は“偉大的”と“光栄的”の修飾を個別に受けているという見方もできる。

 もうひとつのケースは、例えば、“一位工人的建議”と“一項工人的建議”の場合である。前者は“一位”が“工人”を修飾し、“一位工人”が“建議”を修飾している。後者は“工人”が“建議”を修飾し、“一項”は“工人的建議”を修飾している。

 私たちはA、B……を用いて修飾語と被修飾語の各項を表し、>を用いて修飾関係を表すとすると、上の詞組の構造は、符号を用いて以下のように表すことができる:

      (A+B+C)>D、 或いはA>D+B>D+C>D
      (A>B)>C
       A>(B>C)

 実際の言語中では、これらの異なった関係は、一つの文の中に入り混じって存在する。例えば:
     世界上 一切 善良的 愛好和平的 人民的 優秀 之 花       
               ――― ――――― ――   ――    ―     
           ―― ――――――――――――  
     ――― ―――――――――――――――  ――――――

 “優秀”は“花”を修飾し、“善良的”、“愛好和平的”は“人民”を修飾し、“一切”は“善良的愛好和平的人民”を修飾し、“世界上”は“一切善良的愛好和平的人民”を修飾し、その後、組み合わされて“優秀之花”を修飾する。

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 もうひとつ、詞組を分析する時に注意しないといけないのは、このような複雑な詞組では、語句の構造により、詞組が複数の意味を持つ(特に文法構造の違いという意味で)ということです。このことは、詞組の本となる詞が、通常複数の意味を持つのとよく似ています。

               六 多義と岐義(意味の紛らわしさ)

 形式上は一つの詞組であるが、実際は二つ、或いは二つ以上の異なった種類の詞組が交叉していっしょに使われる。このような詞組は多義的である。多義性は詞の特徴で、単義、つまり一つしか意味を持たない詞は、語彙の中では少数である。詞組は、その置かれた状況により、一般には単義であるものが、多義になることがある。例えば、“学習文件”、“研究計劃”、“出口商品”は偏正詞組、動賓詞組両方の場合がある。(「学習文件」という名詞であれば偏正関係、「“文件”を学習する」という使い方であれば動賓関係。)多義詞組は、多義詞と同様、実際の上下の文の中で、通常はただ一つの意味を表す。“我們下午学習文件”の中の“学習文件”は動賓詞組であり、“這是一份学習文件”の中の“学習文件”は偏正詞組である。しかし、文によってはこれら二つの何れもが考えられる場合がある。例えば、“我們要学習文件”は、「“文件”を学習しなければならない」という意味と、「“学習文件”が要る」という意味と二つのケースが考えられる。これを詞組の“岐義現象”(岐義:意味が紛らわしいこと)と言う。

 “学習文件”のような詞組は動賓関係と偏正関係の交叉であるが、これは中国語の中では比較的よく見られる多義詞組の類型である。この他にもいくつかの類型の多義詞組がある。例えば:
     几個農場  的 青年     几個 農場的青年
     ――― 偏正―――     ―――偏正―――
     ―偏正―                   ―偏正――

 前者であれば、“几個農場”(いくつかの農場)の青年ということになる。後者であれば、農場の何人かの青年ということになる。誤解を避ける為、前者の意味であれば、“几個農場的一些青年”と言い、後者であれば、“農場的几個青年”と言うことができる。

 上記のような二つの状況は、またしばしばいっしょに結合する。つまり、詞と詞の間の結合関係の違いや、詞組内部の構造の階層の違いにより、多義現象が発生する。例えば:
     熱愛 人民的領袖     熱愛人民  的 領袖
     ―――動賓―――     ―――偏正――――         
         ―偏正――     ―動賓―

 指摘しておかなければならないのは、上記の分析は、書面の材料を対象にしているが、口語を分析の対象にすると、状況はまた変わってくる。一般に“几個農場的青年”と言う時、“几個”の後ろに明確なポーズ(休符)、或いは語気の延長があるか、“青年”の前に明確なポーズがあれば、誤解が生じることはない。また、例えば“拿了五塊銭出来”で、“出来”を軽声で発音すると、意味は“拿出来了五塊銭”に相当し、動賓構造になる。もし“出来”の“出”を軽声で発音しなかった場合は、全体の構造は連動構造になる。“我想起来了”も同様である。このように、いくつかの“岐義”の例は、実際には書面に書いた場合は岐義だが、口語として話す時は普通、岐義は生じないのである。

【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年

 以上で、詞組の文法構造の説明を終わります。次回からは、文の分析をしていきたいと思います。

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