300系の新幹線「のぞみ」が登場してから、もう随分経ちました。始めはなんかごく普通の名前だなと思っていましたが、今では、しっくりとなじみ、鉄道列車の名前として十分に溶け込んでいるのではないかと思います。
「のぞみ」の名付け親は作家の阿川佐和子さんだそうです。「つばめ」「きらら」「希望」などの候補がある中で、「こだま」「ひかり」よりも速いのに「つばめ」はどうかなとか、「きらら」はお米みたいとか思ったそうです。阿川さんが悩んで、父である阿川弘之さんに相談すると、「国鉄の鉄道列車の歴代の名前は『大和言葉』であることを忘れないように」というアドバイスをくれたということでした。
さて、「大和言葉」というのは「和語」のことでして、日本固有の言葉です。それに対して、「漢語」というのは中国から伝わったときの読み方、すなわち「音読み」する語のことです。また、その他の国から来た言葉「外来語」(主にカタカナで書く)、これら3つを組み合わせた「混種語」というのがあります。これらを語種といいます。
和語・・・山(やま)、宿(やど)、星(ほし)、仕事(しごと・・することの意)
漢語・・・山脈、旅館、星雲、勉強、学校
外来語・・・マウンテン、ホテル、アンドロメダ、スクール
混種語・・・アンドロメダ星雲、海外ニュース、夏服(和語+漢語)
「外来語」は比較的わかりやすいのですが、「漢語」は日本に入ってからの歴史が長いせいか、ちょっと考えないと、「和語」との違いがわからなくなっているものも多いです。(「菊」「肉」は漢語です)
先ほどの300系新幹線の名前に話が戻りますが、JR社員の中で人気が高かった「希望」がほとんど決まりかかっていたようです。そこで、阿川さんは父親のアドバイスを思い出し、
「希望(漢語)」を「大和言葉(和語)」で言うと、「のぞみ」ですね。
と言って帰ったそうです。結果的に、それが採用されました。
和語というのは日本語の歴史の最初からあるものなので、新しく斬新な感じはしません。「宿」「旅館」「ホテル」を比べるとわかります。また、「漢語」が日本に入るまでは、少ない語数でたくさんのことを表現しないといけなかったので、示す意味範囲がかなり広いです。
「のぞみ」には決して、洗練された新しいイメージはありませんが、「こだま」「ひかり」よりも速く、人々の希望をたくさん乗せて走るという意味でいい名前なのではないかと思います。
さすが、阿川親子^^ですね。