先日、テレビでこんなやりとりを見ました。あるリポーターが芸人のマチャマチャに次のようにインタビューをしました。
「女性で唯一の怖い芸人に選ばれてしまいましたが・・・・」
すると、マチャマチャはちょっとムッとしたようにこう答えました。
「『・・・てしまいましたが』ってそれは、あんたの取り方じゃないか。逆に私はうれしいよ!」
マチャマチャは言語感覚に優れた人ですね。『みんなの日本語初級Ⅱ 教え方の手引き』には、「~てしまう」の用法として次の二つを説明しています。
①動作動詞について、ある行為を完全に終了する。
*おいしかったので、ごはんを全部食べてしまいました。
②不都合な事態に対する遺憾の気持ちを表す。
*間違えて、私は彼のごはんを食べてしまいました。
つまり、マチャマチャは「選ばれてしまう」というのを②の意味で素早く理解したのです。リポーターが、女で怖い芸人に選ばれるということは、女性にとって不都合な事態だと思っていることを、マチャマチャは快く思わなかったのでしょう。だから、「『逆に』私はうれしい」と言ったのだと思います。もちろん、マチャマチャは芸人ですから、これも冗談かもしれませんが・・・。
なんてことはない、「~てしまう」ですが、場面によっては、このように相手に不快感を与えることもあります。日本語ネイティブでもこのようなことがあるのですから、外国語として勉強しているときは気を付けなければなりません。
せっかく、ご馳走になっているのに、とても辛い、多いということが伝えたくて、自分の知っている文法知識だけで
「この料理は辛すぎます」「多すぎます」
というと、相手に対して失礼です。「~すぎる」はマイナスのニュアンスを含むということも知っておかなければなりません。外国語を勉強するときは、このような場面性、ニュアンスも同時に学ばなければならないので大変です。