魚名に遊ぶ・狂言袴
ある日南紀の波止で手のひら大の「カゴカキダイ」を釣りました。横の老釣り師が「それ、
ここらでキョウゲンバカマ、いうんよ、食べたらあんがいウマイで」と。
な~るほど、狂言袴、とは、言い得て妙。
この魚の縞模様から狂言師の身につける「袴」のストライプ模様を連想したもので古典芸能が、
紀州の漁村にも根強く浸透していた時代の名残でしょうか。
一方標準和名のカゴカキダイの名は、職業病から来ています。
えっ職業病?と思わず声を上げた方もおられるのでは…。
そう、昔の交通手段に欠かせないのが「籠(カゴ)」です。
このカゴを前後2人で担ぐわけですが、この担ぎ手を「籠舁(かごかき)」と呼びました。
れっきとした職業です。籠の重い「心棒」を肩に乗せるため、かごかきさんの肩は筋肉が発達して盛り上がります。
この魚も肩から、グイッと肉が盛り上がるのでカゴカキダイの名が付いたのです。
「狂言袴」にしても「籠舁鯛」にしても、魚名に庶民の生活や文化の歴史が刻まれている、ということですね。