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映画『東京家族』について

写経 38.  『万葉集』 (続き)

2013年09月20日 | 写経(笑)


        “ ああ 君の声を… ”  「楓」 スピッツ




 (485) (長歌次回)

 近江路(あふみぢ)の鳥籠(とこ)の山なる不知哉川(いさやがは)日(け)のころごろは恋ひつつもあらむ (487)

 君待つと我(あ)が恋ひをれば我(わ)がやどの簾(すだれ)動かし秋の風吹く (488)

 風をだに恋ふるはともし風をだに来(こ)むとし待たば何か嘆かむ (489)

 置きて行(ゆ)かば妹(いも)恋ひむかもしきたへの黒髪敷(し)きて長きこの夜(よ)を (493)

 我妹子(わぎもこ)を相(あひ)知らしめし人をこそ恋のまされば恨(うら)めしみ思へ (494)

 古(いにしへ)にありけむ人も我(わ)がごとか妹(いも)に恋ひつつ寝(い)ねかてずけむ (497)

 しきたへの枕ゆくくる涙(なみた)にそ浮(う)き寝(ね)をしける恋の繁(しげ)きに (507)

 衣手(ころもで)の別(わか)る今夜(こよひ)ゆ妹(いも)も我(あれ)もいたく恋ひむな逢(あ)ふよしをなみ (508)

 (509) (長歌次回)

 よく渡る人は年にもありといふを何時(いつ)の間(ま)にそも我(あ)が恋ひにける (523)

 千鳥(ちどり)鳴く佐保(さほ)の川瀬(かはせ)のさざれ波やむ時もなし我(あ)が恋ふらくは (526)

 飫宇(おう)の海の潮干(しほひ)の潟(かた)の方思(かたもひ)に思(おも)ひや行(ゆ)かむ道の長手(ながて)を (536)

 後(おく)れ居(ゐ)て恋ひつつあらずは紀伊(き)の国の妹背(いもせ)の山にあらましものを (544)

 大船(おほぶね)の思ひ頼みし君が去(い)なば我(あれ)は恋ひむな直(ただ)逢(あ)ふまでに (550)

 大和道(やまとぢ)の島の浦廻(うらみ)に寄(よ)する波間(あひだ)もなけむ我(あ)が恋ひまくは (551)

 天雲(あまくも)のそくへの極(きは)み遠(とほ)けども心し行(ゆ)けば恋ふるものかも (563)

 事(こと)もなく生(い)き来(こ)しものを老(お)いなみにかかる恋にも我(あれ)はあへるかも (559)

 恋ひ死なむ後(のち)は何(なに)せむ生(い)ける日のためこそ妹(いも)を見まく欲(ほ)りすれ (560)

 黒髪に白髪(しろかみ)交じり老(お)ゆるまでかかる恋にはいまだあはなくに (563)

 ぬばたまの黒髪(くろかみ)変はり白(しら)けても痛(いた)き恋には会ふ時ありけり (573)

 ますらをもかく恋ひけるをたわやめの恋ふる心にたぐひあらめやも (582)

 出(い)でて去(い)なむ時しはあらむをことさらに妻恋(つまごひ)しつつ立ちて去(い)ぬべしや (585)

 白鳥(しらとり)の鳥羽(とば)山松の待ちつつそ我(あ)が恋ひわたるこの月ごろを (588)

 君に恋ひいたもすべなみ奈良山(ならやま)の小松(こまつ)が下(もと)に立ち嘆くかも (593)

 八百日(やほか)行く浜の沙(まなご)も我(あ)が恋(こひ)にあにまさらじか沖つ島守(しまもり) (596)

 うつせみの人目を繁(しげ)み石橋(いしばし)の間近(まちか)き君に恋ひわたるかも (597)

 恋にもそ人は死にする水瀬川(みなせがは)下(した)ゆ我(あれ)痩(や)す月に日に異(け)に (598)

 朝霧(あさぎり)のおほに相見し人ゆゑに命(いのち)死ぬべく恋ひわたるかも (599)

 伊勢(いせ)の海の磯(いそ)もとどろに寄する波畏(かしこ)き人に恋ひわたるかも (600)

 心ゆも我(あれ)は思はずき山川(やまかは)も隔(へだ)たらなくにかく恋ひむとは (601)




   (巻第四 続く…)

 





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