◆光陰矢の如し、もう10年も前のことだが、埼玉県内にある全寮制受験校「秀明学園」の依頼で、英国に取材旅行に赴いた。この高校の姉妹校が英国に設けている学校の様子を一冊の本「今こそ英国で学ぼう 真剣に留学を考えているあなたへ」にまとめるため、現地では、英国人の教師らにインタビューした。
このなかで印象的だったのは、当然のことながら英国流の教育だった。少人数のクラスで、教師がテーマを学生に与える。学生は、テーマの核心をつかみ、現状を分析し、問題点を摘出し、それに対応する解決策を考えるという思考方法に従い、まず図書館に篭り、必要な関係図書を調べて、「エッセー」(小論文)にまとめて教師に提出する。学生の自主的な学習態度を養うことに重点が置かれているようであった。
そこで1人の女性教師が、当時の英国における教育の問題点を教えてくれた。教師が一方的に知識を教え、叩き込むいわゆる「詰め込み教育」に対する反省から、学生の自主性を重んずる教育に転換したところ、今度は、こうした教育方法の欠陥が指摘されるようになり、基礎学力の低下が深刻な問題になってきた。このため、もう一度、「詰め込み教育」を行わざるを得なくなったというのである。自主性を重んじる教育には、それに耐え得る基礎学力が不可欠であると痛切に感じられてきたらしい。
◆このころ、日本では「詰め込み教育」が、子供たちに過重な負担を課しているとの批判が高まっていた。やがてそれは、「詰め込み教育」に対する反省に立ち、「自ら学ぶ態度」と「ゆとり教育」が提唱されてくる。この結果、文部省は、「自ら学ぶ態度」から「総合学習」を生み出し、「ゆとり教育」のために、「教科内容」を減らし、「週休2日制度」を推進させて行った。つまり、英国とは、逆の方向に改定して行ったのである。
◆ところが、日本では、児童生徒、さらに大学生の基礎学力の低下が大問題となってきた。その元凶として「ゆとり教育」が、槍玉に上げられ、再び、「詰め込み教育」の必要性が叫ばれるようになったのである。
今回、安倍首相の肝いりで出来た政府の教育再生会議(野依良治座長)が1月19日、「ゆとり教育見直し」「教育委員会改革の実施」などを柱とする第1次報告の最終案を大筋で了承したという。再び、「詰め込み教育」に戻そうという趣旨らしい。第1次報告案の骨子は、以下のようになっている。
【当面の取り組み】
▽ゆとり教育見直し▽授業時間の10%増加▽いじめや暴力行為を繰り返す子供に出席停止措置▽高校で奉仕活動必須化▽大学9月入学の普及▽教員免許更新制度▽教育委員会の抜本改革
【今後の検討課題】
▽学校週5日制見直し▽小学校の英語教育▽教育バウチャー制度
◆このように、日本の教育は、大きく左右に揺れ動いてきた。迷惑しているのは、児童生徒、学生たちである。自民党文教族をはじめ、文部科学省、あるいは、教育専門家たちの一貫性のなさが、根本的な原因である。しかも、政府の教育再生会議が、いくら活発に議論して報告書をまとめようとしても、ムダである。文部官僚が描くもの以上のアイデアは生まれてこない。また、中央教育審議会の審議を無視していろいろ案を出したとしても、ただ単に参考資料にされるのが、オチである。要するに、時間のムダということである。
本当にヤル気があるのであれば、「官立大学の民営化」「6334制度の見直しと複線化」「英才教育」「国防教育」「職業教育の強化」「育英制度の充実」「師範学校の復活」などである、と思うのである。

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このなかで印象的だったのは、当然のことながら英国流の教育だった。少人数のクラスで、教師がテーマを学生に与える。学生は、テーマの核心をつかみ、現状を分析し、問題点を摘出し、それに対応する解決策を考えるという思考方法に従い、まず図書館に篭り、必要な関係図書を調べて、「エッセー」(小論文)にまとめて教師に提出する。学生の自主的な学習態度を養うことに重点が置かれているようであった。
そこで1人の女性教師が、当時の英国における教育の問題点を教えてくれた。教師が一方的に知識を教え、叩き込むいわゆる「詰め込み教育」に対する反省から、学生の自主性を重んずる教育に転換したところ、今度は、こうした教育方法の欠陥が指摘されるようになり、基礎学力の低下が深刻な問題になってきた。このため、もう一度、「詰め込み教育」を行わざるを得なくなったというのである。自主性を重んじる教育には、それに耐え得る基礎学力が不可欠であると痛切に感じられてきたらしい。
◆このころ、日本では「詰め込み教育」が、子供たちに過重な負担を課しているとの批判が高まっていた。やがてそれは、「詰め込み教育」に対する反省に立ち、「自ら学ぶ態度」と「ゆとり教育」が提唱されてくる。この結果、文部省は、「自ら学ぶ態度」から「総合学習」を生み出し、「ゆとり教育」のために、「教科内容」を減らし、「週休2日制度」を推進させて行った。つまり、英国とは、逆の方向に改定して行ったのである。
◆ところが、日本では、児童生徒、さらに大学生の基礎学力の低下が大問題となってきた。その元凶として「ゆとり教育」が、槍玉に上げられ、再び、「詰め込み教育」の必要性が叫ばれるようになったのである。
今回、安倍首相の肝いりで出来た政府の教育再生会議(野依良治座長)が1月19日、「ゆとり教育見直し」「教育委員会改革の実施」などを柱とする第1次報告の最終案を大筋で了承したという。再び、「詰め込み教育」に戻そうという趣旨らしい。第1次報告案の骨子は、以下のようになっている。
【当面の取り組み】
▽ゆとり教育見直し▽授業時間の10%増加▽いじめや暴力行為を繰り返す子供に出席停止措置▽高校で奉仕活動必須化▽大学9月入学の普及▽教員免許更新制度▽教育委員会の抜本改革
【今後の検討課題】
▽学校週5日制見直し▽小学校の英語教育▽教育バウチャー制度
◆このように、日本の教育は、大きく左右に揺れ動いてきた。迷惑しているのは、児童生徒、学生たちである。自民党文教族をはじめ、文部科学省、あるいは、教育専門家たちの一貫性のなさが、根本的な原因である。しかも、政府の教育再生会議が、いくら活発に議論して報告書をまとめようとしても、ムダである。文部官僚が描くもの以上のアイデアは生まれてこない。また、中央教育審議会の審議を無視していろいろ案を出したとしても、ただ単に参考資料にされるのが、オチである。要するに、時間のムダということである。
本当にヤル気があるのであれば、「官立大学の民営化」「6334制度の見直しと複線化」「英才教育」「国防教育」「職業教育の強化」「育英制度の充実」「師範学校の復活」などである、と思うのである。

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