ニュースなはなし

気になるニュースをとりあげます

「地球で最初の生命は、進化では誕生できない」…進化論で生じた「すこぶる当然の疑問」

2025年03月26日 23時03分49秒 | 生き物のこと
 
 



生命はRNAから始まった>RNAワールド仮説
 
圧倒的人気を誇るこのシナリオには、困った問題があります。生命が存在しない原始の地球でRNAの材料が正しくつながり「完成品」となる確率は、かぎりなくゼロに近いのです。ならば、生命はなぜできたのでしょうか?


この難題を「神の仕業」とせず合理的に考えるために、著者が提唱するのが「生命起源」のセカンド・オピニオン。そのスリリングな解釈をわかりやすくまとめたのが、アストロバイオロジーの第一人者として知られる小林憲正氏の『生命と非生命のあいだ』です。今回から数回にわたって、本書から読みどころをご紹介していきます。


今回は考察の原点となるダーウィンの進化論と、その後の「生命はどこから生まれたか」議論の変遷を見ていきます。

*本記事は、『生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。


ダーウィンのオリジナル概念ではなかった「進化」
1859年、チャールズ・ダーウィン(1809〜1882)は、ジョン・マレー出版社から『自然選択という手段、または生存闘争の中で好ましいとされる種が保存されることによる種の起原について』という長いタイトルの本を出版しました。これが、今日の生物進化学の基礎を築いた、『種の起源』という名で知られている著作の正式な書名です(「起“源”」ではなく「起“原”」と訳されました)。


実は「進化」という概念自体は、ダーウィン以前にもありました。たとえば、彼の祖父のエラズマス・ダーウィン(1731〜1802)は、生物学に進化(evolution)という言葉を持ちこんでいました。また、フランスの博物学者ジャン=バティスト・ラマルク(1744〜1829)は、キリンの首は高いところの葉を食べようとして伸びた、といった「用不用説」と呼ばれる考え方で進化を説明しようとしていました。


ダーウィンは初め、医者である父のあとを継ぐためエジンバラ大学に進学しましたが、医学学には向かずに退学し、牧師になるべくケンブリッジ大学に進みました。そして卒業後、恩師から、船で世界を一周する旅に誘われました。これが彼の人生を変える旅となりました。


1831〜1836年、ダーウィンを乗せたビーグル号は世界のさまざまな土地に立ち寄りましたが、とりわけ1835年に訪れたガラパゴス諸島での観察が、のちに彼が発表する進化論のベースになりました。


その頃のヨーロッパでは、キリスト教の教えにもとづく「デザイン論」が優勢でした。地球上のさまざまな生物たちは、創造主である神によって、うまく生きられるようにデザインされたとするものです。これは、前述したアリストテレス哲学とキリスト教の教義とが融合した結果、広まった考え方でした。


しかし、ダーウィンはビーグル号での航海で得たさまざまな標本や、観察の経験をもとにデザイン論を捨て、新たに自然選択にもとづく進化論を構築していきました。


その作業には長い年月がかかりましたが、1858年、イギリスの博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレス(1823〜1913)からの手紙で、彼が似たような考えを持っていることを知って発表を急ぎ、その年にリンネ学会において自身の論文とウォレスの論文を並べて発表し、翌1859年に、いわゆる『種の起原』の出版にこぎつけたのです。


『種の起原』は、世界は神が創造したとする創造説と進化論との間で大論争を引き起こしましたが、“ダーウィンの番犬”と呼ばれたトマス・ヘンリー・ハクスリー(1825〜1895)の援護もあり、進化論が徐々に認知されていきました。



【写真】チャールズ・ダーウィン、アルフレッド・ラッセル・ウォレス、トーマス・ヘンリー・ハクスリ

ダーウィンの進化論が生んだ「新たな問題」
すると、新たな問題が生じました。進化論では、ある生物種は別の生物種から進化することにより誕生します。これをずっと過去に遡っていくと、最初の生物にたどり着きます。では、その生物はどのようにして誕生したのでしょうか?


この問題に対して、ダーウィンは1871年に、友人の植物学者ジョセフ・ダルトン・フッカー(1817〜1911)宛ての手紙の中で、こう書いています。


「もし(ああ、何とありそうもない「もし」なのでしょう)さまざまな種類のアンモニアやリン酸塩が溶けた温かい小さな池に、光や熱や電気などが加えられたとしたら、タンパク質分子が化学的に合成され、より複雑なものへと変化したでしょう。今日ではそのような物質はすぐに食べ尽くされてしまうでしょうが、生命が誕生する前では、そうはならなかったでしょう」



今日の目から見てもなかなかいい線をいっているように見えますが、その後、ダーウィンはこの考えをさらに進めてはいないようです。ここに「生命はどのようにして誕生したのか」、つまり「生命の起源」という科学上の新たな問いが誕生したのです。


「パンスペルミア説」の登場
最初の生命は生物進化によっては誕生できないので、自然発生したと考えるしかありません。しかし、自然発生は、パストゥールの有名な「白鳥の首フラスコ」(空気は入るけれど微生物は入らないようにすに考案した実験装置)」を使った実験によって、否定されています。地球上では生命の自然発生ができないのならば、生命は地球外から持ちこまれたのではないか?


このように生命の起源を地球外に求めようと考える科学者たちが現れました。その中には大物科学者も含まれていて、熱力学第二法則で知られる英国の物理学者ウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿、1824〜1907)もその一人でした。トムソンは1871年に英国協会で「生命の種が隕石によってもたらされた」という考えを述べています。


Fullscreen button
【写真】ウィリアム・トムソンとスヴァンテ・アレニウス(

20世紀が始まってまもない1903年、スウェーデンの物理化学者スヴァンテ・アレニウス(1859〜1927)は、『Die Umschau』という雑誌に「宇宙における生命の分布」という論文を発表しました。そこで彼は、宇宙空間には生命の種(sperma)があまねく(pan)存在しており、それらが光の圧力によって移動して地球にたどり着き、地球生命のもとになったと述べて、「パンスペルミア」という言葉を用いました。


アレニウスは高校の教科書にも名前が載るほど有名な物理化学者であり、同じ年にノーベル化学賞を受賞しています。今日でもパンスペルミアというと必ずアレニウスの名前が引用されるなど、生命の地球外起源説の代表とされています。



パンスペルミア説への批判としては、まず、生命の種が過酷な宇宙空間で長時間生きつづけるのが困難と考えられることがあります。しかし現在では、生物の惑星間移動の可能性が実験などで検証されていて、この点からはパンスペルミアは一概に否定できなくなりました。


第二の批判は、その宇宙から来た「生命の種」がどのようにしてつくられたかについては、何も答えていないことです。つまり、問題を先送りしているにすぎないというわけです。こちらは「生命の起源」を議論するうえでは致命的といえますね。


*      *      *


このように「進化」という考え方が認知された結果、その原点にある「生命の起源」という問題につきあたりました。そこから、「生命の種」がどのようにしてつくられたか、そして、生命と非生命の違いとは何か、という問題も生じてきてきたのです。


続いて、近代における生命論の変遷の後半を見てみましょう。舞台は、19世紀から20世紀へと移っていきます。


生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか


生命はどこから生命なのか? 非生命と何が違うのか? 生命科学究極のテーマに、アストロバイオロジーの先駆者が迫る!

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

女より男が、なぜ暴力的な犯罪を起こすのが多いのか…進化の過程だけでは説明できない「攻撃的になる理由」

2025年03月19日 21時03分40秒 | 生き物のこと
 
 
 
 
なぜ暴力的な犯罪を起こすのは女より男が多いのか…進化の過程だけでは説明できない「攻撃的になる理由」
2/3(月) 18:17配信




109
コメント109件




プレジデントオンライン
出典=法務総合研究所「令和6年版犯罪白書」


「犯罪白書」(令和6年版)によると、傷害・暴行で逮捕される人数は男性が女性の約7〜10倍。心理学者の森口佑介さんは「13カ国が参加した国際的な調査でも全ての国で、女性より男性の方が身体的な攻撃性が高いという結果が出た」という――。


【この記事の画像を見る】


 ※本稿は、森口佑介『つくられる子どもの性差「女脳」「男脳」は存在しない』(光文社新書)の一部を再編集したものです。


■大多数のセクハラや犯罪が、男性によって行われている


 セクシャルハラスメントや犯罪に関する報道を目にしたとき、筆者は自分が男性であることを恐ろしく思うときがあります。


 もちろん、こういう言い方自体がジェンダーステレオタイプを助長する可能性があることは認識しています。セクシャルハラスメントや犯罪は、男性が加害者になるケースだけではありません。女性が加害者になることも当然あります。ただ、統計的には、大多数のセクシャルハラスメントや犯罪が、男性によって行われているという事実があります。そこで、攻撃性の入り口として、まず、犯罪について見ていきたいと思います。


 今日も殺人、暴力事件、強盗、詐欺のニュースがテレビやインターネットで報道されています。殺人犯が捕まったと聞いて、女性のイメージが浮かぶでしょうか、それとも、男性のイメージが浮かぶでしょうか。


 実際の事件であれ、小説やアニメなどの作品であれ、犯罪は男性によってなされることが多いような印象があります。特に、暴行や殺人などの攻撃性の高い犯罪において顕著なように思えます。


 犯罪には様々な種類がありますが、一部の犯罪は明らかに攻撃的な性質を持っており、暴力的な行動や他人への害を直接的に含んでいます。たとえば、強盗や殺人といった犯罪は、攻撃性の顕著な例と言えます。


■「男は攻撃的」だから、強盗や殺人を犯しがちなのか?


 多くの犯罪は男性によってなされます。強盗や殺人、強制性交や強制わいせつはほとんど男性によってなされています。男性の場合、武器を使った犯罪が多いという報告もあります。


 これは検挙された犯罪に限った話なので、検挙されていない犯罪も含めると多少の変動はあると思いますし、女性のほうが占める割合が多い犯罪もあるかもしれませんが、全般的に犯罪の多くは男性によってなされていることがわかります。


 なぜ男性のほうが犯罪を犯しやすいかについては、攻撃性の高さだけではなく、生物学的な要因、社会的要因や環境的要因が総合的に影響してくるので、攻撃性の高さを示す1つの傍証に過ぎません。実際に攻撃性は男性において高いという証拠はあるでしょうか。
 
■提供する食事に辛口のソースをかけて攻撃性を測定する方法


 攻撃性は、そもそもどのように調べられるでしょうか。一番手っ取り早い方法は、攻撃性の高さに関して色々と質問紙形式で尋ねるものです。当人に聞く方法もあれば、知人に聞く方法もあります。子どもの調査では、親や幼稚園・保育園の先生、学校の先生に尋ねることが多いです。


 質問紙は一番ポピュラーな方法ですが、自分であっても、親であっても、客観的に攻撃性の高さを評価できるかどうかわからないという問題点があります。そのため、実際の行動を調べる方法もあります。たとえば、研究者が遊びの場面などを観察して攻撃行動を評価するようなやり方です。


 筆者が面白いと思う方法に、辛口のソースを使う実験があります。皆さんが、気に入らない相手に食事を提供することになったとします。メニューはカレーで、その辛さは自分で調整できること、相手があまり辛いものを得意としていないことを知っているとします。その場合に、辛めのカレーを提供するか、甘めのカレーを提供するかで、その人の攻撃性の高さを調べるという方法です。実際の研究では、相手に提供される食事に辛口のソースをどれだけかけるかで攻撃性を測定します。


■身体的な攻撃は男性、「仲間外れ」のような関係性攻撃は女性?


 このような方法で調べる攻撃性は、いくつかに分類されることが知られています。性差の文脈で出てくるのは、直接的攻撃性と間接的攻撃性です。前者は身体的攻撃と言語的攻撃のことを指します。身体的攻撃は手が出るような攻撃性のこと、言語的攻撃は主に悪口や非難のようなもののことです。


 間接的攻撃には関係性攻撃が含まれます。これは身体的な攻撃ではなく、社会的関係性を使った攻撃性で、無視や仲間外れのような方法で心理的にダメージを与える攻撃性です。


 一般的なイメージとして、身体的な攻撃は男性、関係性攻撃は女性というイメージがあるでしょう。筆者自身は男性なので、まずもって男子が身体的な攻撃をしがちであることは否定できません。小学校でも中学校でも、自分も含めて殴り殴られ、という経験は一度や二度ではありませんでした。


 一方、筆者には女性の攻撃性の実態がよくわかっていません。ただ、中学生のころ見た光景として、女子生徒は様々なグループをつくっていて、そのグループ間に若干の序列がありました。怖いなと思ったのは、あるグループに属していた女子生徒がそのグループから徐々に締め出されていき、気づいたときには別のグループに所属していたことです。元のグループの他のメンバーは特に気にすることもない様子を見て、寒気を覚えた記憶があります。


 このようなケースは決して珍しいものではありませんが、一方で、同じような光景を男子グループの中で見たことも少なくないのです。女子も男子も仲間外れや無視をする光景に出くわすことはあります。これらの攻撃性に性差はあるのでしょうか。
 
 
■提供する食事に辛口のソースをかけて攻撃性を測定する方法


 攻撃性は、そもそもどのように調べられるでしょうか。一番手っ取り早い方法は、攻撃性の高さに関して色々と質問紙形式で尋ねるものです。当人に聞く方法もあれば、知人に聞く方法もあります。子どもの調査では、親や幼稚園・保育園の先生、学校の先生に尋ねることが多いです。


 質問紙は一番ポピュラーな方法ですが、自分であっても、親であっても、客観的に攻撃性の高さを評価できるかどうかわからないという問題点があります。そのため、実際の行動を調べる方法もあります。たとえば、研究者が遊びの場面などを観察して攻撃行動を評価するようなやり方です。


 筆者が面白いと思う方法に、辛口のソースを使う実験があります。皆さんが、気に入らない相手に食事を提供することになったとします。メニューはカレーで、その辛さは自分で調整できること、相手があまり辛いものを得意としていないことを知っているとします。その場合に、辛めのカレーを提供するか、甘めのカレーを提供するかで、その人の攻撃性の高さを調べるという方法です。実際の研究では、相手に提供される食事に辛口のソースをどれだけかけるかで攻撃性を測定します。


■身体的な攻撃は男性、「仲間外れ」のような関係性攻撃は女性?


 このような方法で調べる攻撃性は、いくつかに分類されることが知られています。性差の文脈で出てくるのは、直接的攻撃性と間接的攻撃性です。前者は身体的攻撃と言語的攻撃のことを指します。身体的攻撃は手が出るような攻撃性のこと、言語的攻撃は主に悪口や非難のようなもののことです。


 間接的攻撃には関係性攻撃が含まれます。これは身体的な攻撃ではなく、社会的関係性を使った攻撃性で、無視や仲間外れのような方法で心理的にダメージを与える攻撃性です。


 一般的なイメージとして、身体的な攻撃は男性、関係性攻撃は女性というイメージがあるでしょう。筆者自身は男性なので、まずもって男子が身体的な攻撃をしがちであることは否定できません。小学校でも中学校でも、自分も含めて殴り殴られ、という経験は一度や二度ではありませんでした。


 一方、筆者には女性の攻撃性の実態がよくわかっていません。ただ、中学生のころ見た光景として、女子生徒は様々なグループをつくっていて、そのグループ間に若干の序列がありました。怖いなと思ったのは、あるグループに属していた女子生徒がそのグループから徐々に締め出されていき、気づいたときには別のグループに所属していたことです。元のグループの他のメンバーは特に気にすることもない様子を見て、寒気を覚えた記憶があります。


 このようなケースは決して珍しいものではありませんが、一方で、同じような光景を男子グループの中で見たことも少なくないのです。女子も男子も仲間外れや無視をする光景に出くわすことはあります。これらの攻撃性に性差はあるのでしょうか。
 
 
■男性の攻撃性は進化の過程で強くなってきたか


 人間はともかく、人間以外の動物を見ると、この説明はうなずける部分もあるかもしれません。ボスのようなオスは身体も大きく、攻撃性があり、その力でグループを支配している動物もいるのです。一方で、人間にそのまま当てはまるかどうかというのは疑問があります。


 もう1つは、歴史的な性役割に関する説明です。この説明では、女性は家庭内での仕事を担い、男性は外で働くという、性別による固定的な役割分担に着目します。もちろん、このような役割分担は恣意(しい)的なものであり、歴史や社会の産物であるという点がポイントです。


 性別による固定的な役割分担がある場合、外で働く男性では、何らかの目標を達成するような役割が期待され、家庭を担う女性では、他人を気遣ったり世話したりする役割が期待されます。少し前の日本のような状況です。といっても、今でも地域によっては似たような状況があるでしょう。


■歴史的にも男性は社会で「目的達成」を課せられてきた


 以上のような性別役割分業意識により、男性は、目標を達成する手段として攻撃的な行動が適切であることを学んでいくのではないかというのが、2つ目の説明です。攻撃性を持つことが、目標を達成するうえで必要になってくるということです。確かに、目標を邪魔する勢力に対抗するには攻撃性が必要な状況もあるでしょう。


 さらに、男性の社会的地位が高いことが求められるような社会において、高い地位の獲得や維持には身体的、言語的、関係的な攻撃性が必要となるのかもしれません。結果として、男性の攻撃性が高くなるわけですが、社会がそのように方向づけているとも言えます。


 進化的な説明では、男性の攻撃性の高さは生まれつきほぼ決まっていることを想定しており、「女性脳」「男性脳」を主張する人が好む説明です。一方、歴史的な説明は、社会や文化の役割を強調するものです。現在のところ、どちらが正しいというわけではなく、どちらもそれなりの説得力があるというところです。


 子どもに目を向けると、たとえば遊びの性差が攻撃性の違いに影響を及ぼす可能性があります。それほど証拠が多いわけではないものの、女児は赤ちゃんのころから男児よりもヒトの顔を好む傾向があったり、人形を好んだりするなど社会的な傾向があるのに対して、男児身体的な遊びを好んだり、乗り物を好んだりするため、こうした好みや遊びの傾向が攻撃性の違いにつながるのではないかと考えられています。






----------
森口 佑介(もりぐち・ゆうすけ)
京都大学大学院文学研究科准教授
福岡県生まれ。京都大学大学院文学研究科准教授。京都大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。専門は、発達心理学・発達認知神経科学。主な著書に『10代の脳とうまくつきあう 非認知能力の大事な役割』(ちくまプリマー新書)、『子どもから大人が生まれるとき 発達科学が解き明かす子どもの心の世界』(日本評論社)など。
 
 
 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

犬は主人に対して忠誠心を持つ」は間違い…科学的研究でわかった本当のこと

2024年12月07日 09時03分24秒 | 生き物のこと



2022/11/26(土) 10:17:31.

犬は主人に対して忠誠心を持つ」は間違い…科学的研究でわかった本当のこと


昔から犬は主人思いの動物とされて、「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」などと言われてきました。

しかし、ここにも人間の勝手な思い込みが入っている気がします。

ただ飼えばいいわけではなく、飼い主が本能的欲求を満たしてくれる(十分な食事、安心な寝床、一緒に遊んでスキンシップをしてくれるなど)ことがなければ恩は感じてくれません。

「動物なのだから、食べ物をあげていれば懐いて恩を感じるだろう」と思うかもしれませんが、それだけなら、よそでもっとたくさんごはんをくれる人を見つければ、そっちへ行ってしまいます。

同様に「犬は主人に対して忠誠心を持つ」というのも、ほとんどの場合、人間の思い込みです。これも親和性の高い飼い方をしない限り、ただの幻想と言っていいでしょう。

幸せホルモン(オキシトシン)に満たされるような、安心と幸せを感じる関係にあれば、親愛の情や絆を感じさせる行為がみられることはあります。

実際、「飼い主に危険が及ぶのを察知して知らせてくれた」とか、「か弱い子どもを懸命に守ろうとした」といった感動的なエピソードには事欠きません。

それを忠誠心と呼ぶのは自由ですが、犬は犬社会でも、仲間に危険を警告したり、犬同士で助け合う行動は普通にみられます。それを飼い主に対しても行っているだけだ、というドライな見方もできるのです。

群れで生活する動物には、危機に瀕している仲間を助けようという行為は珍しくありません。社会性のある動物は、群れを維持していかないと自分の生存も危ぶまれるからです。

たとえばゾウの集団では、子ゾウを協力して助けたり守ったりしますが、それは群れ・集団の維持のために仲間を守る行為なのです。

そうした行動は、ときに自己犠牲をともなう“利他的”な、見返りを求めない無償の行為に見えることもあります。しかしそこには「自分の生存にも関わる」という動物の本能がはたらいているはずなのです。

 全文はソースでご確認ください。 




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クマ駆除に「お前が死ね!」と抗議 愛護団体に現役ハンターが本音「究極的には分かり合えない」

2024年12月05日 03時03分06秒 | 生き物のこと

クマ駆除に「お前が死ね!」と抗議 愛護団体に現役ハンターが本音「究極的には分かり合えない」 

12/3/2024






「ヒグマ相手の場合、通常麻酔薬は劇薬指定の薬剤と麻薬指定の薬剤の2種類を混ぜる必要があり、基本的には獣医師や薬剤師、研究者でないと入手できません。麻酔銃の有効射程は30メートル。時速40キロ以上で走るクマにすれば、2~3秒で到達する距離です。また、必要量の麻酔薬を撃ち込んでも最低10分は動き続け、捕獲時に興奮していればそれだけ時間は伸びる。さらに山へ逃がすとなると、寝ているクマに目隠しをして手足を縛り、おりなどの運搬容器の中に運ぶわけですが、その作業を行う作業員のリスクが非常に大きい。また、奥山放獣といっても、何百キロも森だけが広がっているような場所ならともかく、北海道ですらどこでも、20~30キロも移動すれば民家に出れてしまうのが現実です。


秋田市内のスーパーで従業員を襲ったクマが3日間にわたって立てこもり
全国各地でクマによる被害が相次いでいる。先月30日、秋田市内のスーパーで体長約1メートルのクマが従業員の男性を襲ってけがを負わせる事故が発生。クマはその後3日間にわたってスーパーの店内に立てこもり、今月2日になって箱わなで捕獲、駆除された。地方では住民の高齢化や過疎化によりクマの生息域拡大が懸念されているが、クマの駆除と保護とはどう折り合いをつけていくべきなのか。公益財団法人「知床財団」の職員として長年知床でヒグマの捕獲や防除対策などに従事、現在は独立し鳥獣対策コンサルタントとしてクマ問題の解決に尽力しているハンターで獣医師の石名坂豪氏に、クマと人の共存の在り方を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)



知床財団は、北海道の斜里町の出資により1988年に設立(2006年に羅臼町も共同設立者として参画)。世界遺産知床の自然を守り、よりよい形で次世代に引き継いでいくためのさまざまな活動をしており、その一方で認定鳥獣捕獲等事業者として、国内で唯一銃によるヒグマ駆除を認められてきた事業者でもある(24年9月末時点)。石名坂氏は、そんな知床財団の職員として、道内でも特にヒグマ被害の多い知床地域で長年捕殺を含む総合的なヒグマ対策活動に従事。獣医師の資格も持ち、ハンター歴は26年、ヒグマの捕獲実績は30頭を超えるというベテランだ。昨年、独立して「野生動物被害対策クリニック北海道」を設立。現在は鳥獣対策コンサルタントとしてクマスプレー使用法の講習や市街地でのヒグマ対策などの研修講師を行う傍ら、北海道庁のヒグマ専門人材バンク登録者やNPO法人「エンヴィジョン環境保全事務所」の臨時スタッフとして、道内各地のヒグマやエゾシカの問題にも関わっている。


住宅地周辺だけでも羅臼町で年間100回、斜里町で年間800回もの出没がある一方、世界遺産・知床の貴重な観光資源でもあるヒグマ。知床の自然を守る財団の職員として、石名坂氏もこれまでに電気柵による防除やゴム弾などによる追い払い、麻酔銃を使っての捕獲後の移動放獣など、さまざまな非致死的手段も試みてきた。しかし、結局のところ問題行動が進んだ個体は、駆除をしなければ解決に至ることはないという。


「散々追い払いも試しましたが、結局獲らなきゃ終わらないんです。100回以上同じ個体を追い払ったこともありますが、DNAで個体識別して経過を追うと、大半の問題個体が結局2~3年後には駆除されています。人間のことも識別していて、住民や観光客のことは意にも介さず、追い払いを行う人間が来たときだけ逃げたりする。しまいにはゴム弾の有効射程距離も覚えてしまって、『どうせまたいつものちょっと痛いやつだろ? この距離なら撃たないだろ?』という様子でいるので、『悪いけど、今回は違うんだよ』と思いながらライフル銃で実弾を撃つんです」


関連するビデオ: 北海道猟友会 ヒグマ駆除の拒否を検討 ハンター「誰も銃を発砲できない」 (テレ朝news)

北海道猟友会 ヒグマ駆除の拒否を検討 ハンター「誰も銃を発砲できない」
0

現在、北海道内で完全な野生のヒグマやシカなどに対し麻酔銃を撃った経験のある獣医師は、石名坂氏を含めてわずか3人。麻酔で眠らせて山奥に逃がす奥山放獣などの措置はできないのだろうか。


「ヒグマ相手の場合、通常麻酔薬は劇薬指定の薬剤と麻薬指定の薬剤の2種類を混ぜる必要があり、基本的には獣医師や薬剤師、研究者でないと入手できません。麻酔銃の有効射程は30メートル。時速40キロ以上で走るクマにすれば、2~3秒で到達する距離です。また、必要量の麻酔薬を撃ち込んでも最低10分は動き続け、捕獲時に興奮していればそれだけ時間は伸びる。さらに山へ逃がすとなると、寝ているクマに目隠しをして手足を縛り、おりなどの運搬容器の中に運ぶわけですが、その作業を行う作業員のリスクが非常に大きい。また、奥山放獣といっても、何百キロも森だけが広がっているような場所ならともかく、北海道ですらどこでも、20~30キロも移動すれば民家に出れてしまうのが現実です。


麻酔銃を使うべき場面とは、猟銃が使えない住宅街のど真ん中などで、クマを寝かしたり動きを鈍らせてから安全に駆除するようなときであって、最終的には殺すべきだと私は考えています。これが絶滅危機に瀕している動物園から逃げたトラであればまた事情は違いますが、残念ながら種の保存という観点では、クマの命はトラより軽い。クマが増え続けているような現状で、それだけの人身死傷リスクをかけてまで1頭のクマを助けたいかというと、少なくとも私はやりたくありません。助けたいという方が、自ら率先してやる分には否定はしませんが……」


何もしなければおよそ8年で倍増…「10年後には手がつけられなくなる」
昨年の被害状況を受け、今年4月に鳥獣保護管理法が改正。絶滅の恐れのある四国の個体群を除き、新たにクマ類(ヒグマ及びツキノワグマ)が指定管理鳥獣に追加された。指定管理鳥獣とは、集中的かつ広域的に管理を図る必要があるとして、国や都道府県による事業の対象となる動物のこと。今後は調査や捕獲などに国から交付金が支給され、問題個体だけでなく、個体数調整のための広域的な駆除も可能になる。増え続けるクマ被害に対抗するためには、妥当な措置ではないかと石名坂氏はいう。


「クマの自然増加率は10%程度とされており、1.1の8乗で2.14、何もしなければおよそ8年で倍増する計算です。シカの増加率はさらに倍の20%、およそ4年で2倍に増える。東京都だってもう危ない。うかうかしていると、10年後には手がつけられなくなります。一時はクマを絶滅寸前まで追い込んだと言われる春グマ猟は、極めて効率のいい猟法。やりすぎは禁物ですが、当時の猟を知る高齢ハンターが生きているうちに、ノウハウの継承だけでもしておかないと手遅れになる可能性があります」



近年では、動物愛護団体による駆除への抗議活動も度々問題となっている。2010年に斜里町中心街に出たヒグマの駆除では、丸3日間、町役場への抗議の電話が鳴りやまなかったという。


「『お前が死ね!』とまで言われた職員もいたそうです。また、一般猟友会員でなく知床財団職員がヒグマを駆除した場合、『結局は食べたいから殺すのか』と批判が寄せられる可能性があるため、大型のオスの成獣350キロの肉をすべて廃棄したこともあります。命を無駄にしないことは大切なはずで、自分でもこの対応はどうかしていると思う。愛護の方たちの行動原理は理屈じゃなく感情。気持ちは分かりますが、究極的には分かり合えない


自然界には、生態系のバランスを保つ仕組みが最初から備わっているとみる考え方もあり、適正な個体数を維持するために人間が介入すべきという考えには賛否両論があるのも事実だ。答えのない問いについて、どのように考えていくべきなのか。


「人間が自然に関わるべきでないというのは、それ自体が傲慢(ごうまん)な考えではないでしょうか。高度経済成長で一気に環境破壊が進んだことで、人間の影響力の大きさから自然に手を加えてはいけないという考え方が広まりましたが、化石燃料を使い始める前から燃料として大量の木を切り、野生動物を狩って食糧にしていた。さかのぼれば石器時代から、生態系のバランスは人間による一定の圧力があるなかで保たれていたはずです。過度な獲り過ぎは禁物ですが、人間も自然の一部として、自分たちの生活を守るために他の野生動物を狩ることは、生き物としてのあるべき姿だとはいえないでしょうか」


クマは犬なみに知能が高いといわれ、愛嬌のある仕草から童話の題材にも選ばれるなど、人にとっても身近な存在だ。一方で鋭い牙と爪を持ち、人を簡単にあやめてしまう猛獣でもある。2つの側面を持つ隣人とどう付き合っていくのか。感情論ではなく、冷静な議論が求められている。佐藤佑輔











コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人間の致死量の放射線にも耐えうる体の仕組みとは?>僅か1ミリの クマムシ、

2024年11月04日 00時03分58秒 | 生き物のこと



1ミリのクマムシ、人間の致死量の放射線にも耐えうる3つのシステム








地球最強の生存力を持つ動物とされるクマムシは、成体になっても1.5ミリメートルにも満たない、きわめて小さな節足動物だ。
 左右の8本の脚でゆっくり動くことから、緩歩動物(Tardigrada)と呼ばれるクマムシは、マイナス270度の極低温や150度を超える高温でも死なず、水がない環境でも数十年耐え抜く。大気圧の1000倍を超える圧力や人間の致死量の約1000倍になる3000~5000グレイ(Gy)の放射線量にもびくともしない。このような驚くべき能力のおかげで、過去5億年間に起きた5回の大絶滅でも強く生き残った。


 極限の環境で生き残る秘訣は、新陳代謝の活動を止めて体を休眠状態(Cryptobiosis)にする能力にある。このような能力は、老化と寿命延長を研究する科学者にとっての良い研究対象だ。


 これまで科学者たちは、極限環境に置かれる場合に生体物質を保護するトレハロースという糖分や、新陳代謝を遅らせるタンパク質などを発見した。しかし、1500種にのぼるクマムシが持っている生存能力の大部分は、いまだ解明できていない状況にある。


 中国の北京遺伝学研究所の研究チームが、放射線から自分の体を守るクマムシの生体分子メカニズムを解明し、国際学術誌「サイエンス」に発表した。


 研究チームは6年前、中国河南省の伏牛山で採取したコケの標本から、学界に未報告のクマムシ「ヒプシビウス・ヘナネンシス」(学名Hypsibius henanensis)を発見した。今回の研究はこのクマムシの遺伝子の分析結果だ。




クマムシはコケや川、湖の堆積物に主に棲息する=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

■放射線に耐えるための3つのシステム
 研究チームがクマムシのゲノムを解読した結果、このクマムシは1万4701個の遺伝子を持っており、このうち30%は緩歩動物にだけある遺伝子だということがわかった。


 研究チームは、クマムシに人間が耐えられるよりはるかに強力な200~2000グレイの放射線に露出させた後、クマムシの遺伝子に起きる反応を調べてみた。すると、DNAの修復、細胞分裂、免疫反応に関与する遺伝子2801個が活性化することを発見した。研究チームはこの過程で、クマムシが放射線を耐えられるようにする3つの分子システムを発見した。


 1つ目と2つ目は損傷したDNAの修復能力だ。1つ目の「TRID1」という遺伝子は、特殊なタンパク質を集め、放射線で損傷したDNAの二本鎖を修復するのに役に立つタンパク質を作る。また、2つ目の遺伝子は、ミトコンドリアのATP合成に重要だとされる2種類のタンパク質を生成する。このタンパク質もDNAの修復を助けるものとみられることを、研究チームは明らかにした。



 3つ目は抗酸化タンパク質の生成能力だ。クマムシの遺伝子の0.5~3.1%は他の有機体から得たものだと推定される。これを「水平的遺伝子移転」と呼ぶ。研究チームはこのうち、バクテリアから得たとみられる遺伝子「DODA1」が、ベタレインという4つのタイプの抗酸化色素の生産に関与することを発見した。この色素は、放射線に露出するときに細胞内で作られる有害な反応性化学物質の一部を除去する。放射線による細胞障害の60~70%は、この反応性化学物質に起因する。


 研究チームがベタレインの一種で人間の細胞を処理したところ、実際に放射線に対する生存力が大幅に高まることが確認された。




インド洋のモーリシャス島のコケから採集したクマムシの走査型顕微鏡写真=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社


■宇宙探査、がん治療などの応用に期待
 25年間緩歩動物を研究してきたノースカロライナ大学のボブ・ゴールドスタイン教授(細胞生物学)はネイチャーで、「(放射線に対するクマムシの反応は)遺伝子の発現が作動するしくみを再調整するようなものだ」として、戦時に工場を軍需品工場に全面改造することに例えた。


 研究チームは今回の発見が、宇宙で活動する宇宙飛行士を放射線から保護したり、核汚染を浄化したりすることだけでなく、がんの治療法を改善することにも役立てられると期待している。


 クマムシの生存力の特徴は、極限の環境に対する適応進化の産物ではなく、極限の環境に耐え抜く能力だということだ。クマムシは極限環境で棲息する生物(Extremophile)ではない。したがって、極限環境に露出する時間が長引くほど、死亡の可能性は高くなる。



 極限の気温や酸素の欠乏、脱水、飢餓のような異なる苛酷な環境に耐えられるようにするクマムシの分子システムを研究すれば、よりいっそう広範囲な応用分野が見いだされる可能性もある。ゴールドスタイン教授は、ワクチンのようにすぐに傷みやすい物質の有効期限を延ばすことにクマムシの生存の秘訣を活用できると述べた。


*論文情報


DOI:10.1126/science.adl0799


Multi-omics landscape and molecular basis of radiation tolerance in a tardigrade.


クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )










コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする